『前に進む瞬間』
野村義稀(ホームケア土屋 営業推進室)
『重度訪問介護は、あまり知られてない業界です。』
「重度訪問」を説明するお相手や、場合によっては、この言い方を使うことはありますが、この言葉に少しばかり違和感を感じています。
そんな私も、実際にこの業界に入るまで、こんな制度があること自体、知りませんでした。
障害福祉の分野が「知られていない」ことと「目を背けられる」ことはイコールではありません。
働くまでは、私自身も「知らない」というよりは、「目を背けるひとり」だったと感じています。
道端で段差に苦しむ車椅子ユーザーを見たとき。
白杖を持って、点滅する横断歩道を渡る人を見たとき。
『大変そうだな(心配だな)』と思う気持ちは充分にありましたが、気の利いたお手伝いは出来ませんでした。
助けが必要な場面であるのを見て、感じていましたが、目を背けてしまっていました。
もし、あの時
『手伝いましょうか?』
と声をかけていたら……
手伝うことに悪いイメージはありません。しかし、声をかけることは出来ませんでした。
実際には“出来なかった”より、“やり方がわからなかった”という言葉の方が正しいです。
私の過去のコラムで、この業界に入った理由は既に書いてありますが、その時に、「あの時感じたジレンマを、これから仕事にするんだな」という、不思議な感覚も覚えていました。
当然ながら、私にとって、仕事に慣れるまでは「突き当たる壁」も多かったと思います。
無資格未経験、とはいえ、ご利用者さん(弊社ではクライアント)にとっては、「研修を受けたヘルパー」のひとり。
オムツ交換、入浴介助、当時の私にとっては、全部が新しいことで、頭が追いつきませんでした。
先輩ヘルパーが同行した時にはできたことも、ひとりになると焦って上手くいきません。
物売りの営業マンだった自分にとって、重度訪問介護は未知の世界でした。
実際に支援に入って、私自身が気づいたことは、一定のケアの質は必要ですが、何より重要なのは「コミュニケーション量」です。
8時間以上という長時間を一緒に過ごす重度訪問介護では、関係性が非常に重要です。
人と話すことが好き、新しいことが好き、という方にはうってつけのお仕事だと思います!
ALS、脳性麻痺、脊髄損傷…皆さんが抱えている困りごとは、人それぞれに大きく異なります。
私はその困りごとを解決していくときに『ごめんなさい』ではなく『ありがとう』と言われるように心がけています。
もちろん『ありがとう』を言わせるようなケアではなく、信頼関係の下で成立させていかなくてはいけません。
誰かに本気で親身になって、最大級に、「喜怒哀楽」を一緒に感じられる仕事は「この仕事以外に絶対ない!」と、思っています。
私自身は、営業推進部という、新規のご相談に対して事業所、相談員、クライアントを繋ぐ活動、土屋の知名度向上、障害福祉サービスを知っていただく活動を主とした部署に所属しています。
関わる角度は違えど、ひとりでも多くの方の支援が出来るように、今後も尽力していきます。
プロフィール
野村義稀 本社 営業推進室
大学4年生の12月に脳挫傷、外傷性くも膜下出血、急性硬膜下血腫を受傷し入院。
意識不明の状態から回復し、約2ヵ月間の車椅子生活をする。
大学卒業後は、小学生から高校生まで対象の学習塾の営業や管理運営、家庭教師など全く別の分野で働いてきた。
2020年6月に重度訪問介護に出会い介護未経験の中、業界に飛び込む。
趣味はソフトテニスとアウトドア全般。
特にソフトテニスは16年間続けており、今でも大会に出場している。