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【障害福祉サービスの基礎知識(在宅編)第7回】

~重度訪問介護と介護保険制度の緊密さ「あなたなしでは、いられない」~

◇ご挨拶

年も明けました!皆さま御無沙汰しております。冬本番となり、年も明けました。もう2月です。時間が経つのは、早いものですね。

今年も、この「障害福祉サービスの基礎知識(在宅編)」シリーズに、お付き合いくだされば、幸いと存じます。今年も宜しくお願い申し上げます。

さて今回からは、最初の部分で、前回のおさらいを行いつつ、その後に、事例ケースも交えながら、「重度訪問介護と介護保険制度の緊密さ」について、お話していく事が出来ればと考えております。

◇(序)はじめに(前回の振り返り)

前回は、重度訪問介護制度を中心に、「障害福祉サービスの基礎知識」の5回分について、要点を掲げつつ、おさらいをしました。

その上で、「障害福祉サービス」としての重度訪問介護制度と、一般的には高齢者向けになりがちな「公的保険制度」たる「介護保険法およびその制度」の関係性の概略について、両方ともに存在する理由や関係性について、大まかに、説明させて頂きました。

「同じく在宅支援を目的とする部分がありながらも、障害福祉制度と介護保険制度の違い」
これらの存在の意味の根拠の部分が、大きく違っている箇所や理由についても、書かせて頂きました。つまり、

「社会福祉に関する分野」と「社会保険に関する分野」で、法律の分野が違うこと。

これらについても、書かせて頂きました。

それでいて、「障害福祉サービス」とりわけ「重度訪問介護制度」と、「介護保険制度」との関係性は、密接性が極めて高いことも、その理由や根拠とともに、説明させて頂きました。

今回からは、より具体的に、事例や、具体的な手続きなども、折り込みながら、説明を進めて行くようにしたいと、考えております。

より具体的な話になっていきますが、扱う部分については、基礎的な部分でもあるので、お付き合い頂きたく存じ上げます。 

(Ⅰ)「障害福祉サービス」と「介護保険制度」の具体的な関係性について(具体的な話を織り交ぜながら)

(1)重度訪問介護制度の利用が先?それとも介護保険制度が先?

筆者の私は、生まれついての「脳性まひ」による重度障害者で、通常いうところの「四肢麻痺」でありました。生活の全てについて、支援を必要とし、生まれついてからは主に、母親が私の介助をしてくださっておりました。 

そもそも論として、半世紀近く前の、私が生まれた頃の時代の障害児者の支援制度は、「措置制度」というもので、いわゆる行政機関による命令によって、保護されるような形で行われる、限られた場合にのみ、支援される制度でありました。

「子育ては親がする。親が主に行う。」という考えが大前提にあり、公的な支援を受けようという考え自体が、ほぼ存在しない時代でありました。少なくとも、私の境遇および周辺での地域での考え方は、そのような考え方に基づいているものと、私は感じておりました。

もちろんその「支援」というのは、あくまでも「公的な支援」という意味であって、インフォーマルな「地域や親戚や友人知人そういった皆様からの善意の支援」を否定するものではありませんでした。

障害者差別は横行している時代ではありましたが、「全員が全員、障害者を差別する。」という方ばかりではない。少数でも、「障害者を理解する。障害者を理解しよう」という方は、必ず存在しておりました。

そういう方は、障害者差別の横行する社会にあって、あえて別な考え方を有する方なので、ある意味、現在、障害者に対して理解のある方以上に、「強く熱い障害者への思いやりや理解のある方」という場合が、多いかなと、感じたりもします。

それはあくまでも、私個人の主観的な考え方であり感じ方なので、証明しようがない事ではありますが、私にはそのように感じたものでした。

そのような中で、子供時代を過ごし、成長する中で、ぼんやりながらも、

「いつかは、お母さんからの介助は受けられなくなるんだろうなぁ。」

と、考えたりしていたのも、事実であります。なぜなら、親が、年齢順に行けば、先に他界するからです。また「そのように親はなっていく」と、比較的小さな頃から、母親から教えられていたのも、事実であります。そういうことになっても、私に生き抜いていく力を身につけるようにと、教えられておりました。 

話題が、私の生活上における公的な支援の方が先になりますが、前述の通り、母親による介助が、少しずつ困難になってゆく事態になってきました。いよいよ私も、公的な障害福祉の支援を必要とする状態に、環境になってきたというわけです。

つまり、私自身が、「在宅向けの障害福祉サービスを利用する」ということになってきたということです。
 
私の介助を一手に引き受けていた母親が、脳梗塞等によって倒れたのは母親が58歳を目前にした時でした。同時期、私は、骨折により私自身も入院しておりました。

脳梗塞等による後遺症を抱えるに至りながらも、母親が先に退院し、その後、私が退院しました。その時に、私個人として、人生で初めて、いわゆる公的な介助=つまりは、今で言うところの公的な介護支援を受けることになったのです。当時は、ギリギリのところで、まだ「行政措置命令」が残存している時でした。

その後、転居し、当時の支援費制度による、居宅介護(身体介助)としての「入浴介助」を中心として、受けることになったわけであります。この時、私は、およそ31歳になろうかという時でありました。

さらにそののちに、生活環境の変化を経て、私が40歳の晩秋の頃に、制度も新たに、障害者総合支援法に基づく「重度訪問介護」による支援を受けるようになったわけでありました。

私の場合は、「重度訪問介護」の支援スタートの時も、その前の支援費時代も、「身体障害者手帳」を保持していたので、ストレートに、「障害福祉サービス」を、とりわけ在宅支援の分野を中心に、利用させて頂いておりました。

今私は、満49歳の齢にありますが、変わりなく、重度訪問介護等の、在宅向けの「障害福祉サービス」の制度による支援を受けながら、生活をさせて頂いております。 

なぜ私が、自分自身の支援について、このように記載しているかというと、今現在において、「介護保険制度」による支援サービスを、受けていないからです。

先程申し述べましたとおり、私は今、49歳です。介護保険制度でいうと、介護保険法第9条により、私は「第二号被保険者」には該当しますが、同法の第27条第4項第2号で言うところの「『第二号被保険者』としての要介護認定の対象者」には、私は当たらないからです。つまり、私は、

  • 65歳未満
  • 特定疾病による支援を必要とする状態

ではないからであります。よって、介護保険制度による公的支援対象者にはならないので、ストレートで、「身体障害者手帳」保有者としての「障害者」として、障害者総合支援法の支援対象者となり、その中のサービスの一つである「重度訪問介護」による支援を、受けることになったわけであります。

●障害者総合支援法
第4条(定義)

第1項
この法律において「障害者」とは、身体障害者福祉法第四条に規定する身体障害者、(略)のうち十八歳以上である者並びに治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって政令で定めるものによる障害の程度が厚生労働大臣が定める程度である者であって十八歳以上であるものをいう。

第5条(定義)

第3項
この法律において「重度訪問介護」とは、重度の肢体不自由者その他の障害者であって常時介護を要するものとして厚生労働省令で定めるものにつき、居宅又はこれに相当する場所として厚生労働省令で定める場所における入浴、排せつ又は食事の介護その他の厚生労働省令で定める便宜及び外出時における移動中の介護を総合的に供与することをいう。

第20条(申請)

第1項
支給決定を受けようとする障害者又は障害児の保護者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村に申請をしなければならない。

第2項
市町村は、前項の申請があったときは、次条第一項及び第二十二条第一項の規定により障害支援区分の認定及び同項に規定する支給要否決定を行うため、厚生労働省令で定めるところにより、当該職員をして、当該申請に係る障害者等又は障害児の保護者に面接をさせ、その心身の状況、その置かれている環境その他厚生労働省令で定める事項について調査をさせるものとする。(以下、略)

第21条(障害支援区分の認定)

第1項
市町村は、前条第一項の申請があったときは、政令で定めるところにより、市町村審査会が行う当該申請に係る障害者等の障害支援区分に関する審査及び判定の結果に基づき、障害支援区分の認定を行うものとする。

重度訪問介護については、この『 障害福祉サービスの基礎知識(在宅編) 』の第2回目に重度訪問介護制度の詳細について、同じく第3回目については、重度訪問介護制度が出来るまでの歴史と制度の本質について、詳しく説明していますので、そちらの方を、お読み頂ければ幸いです。

他の回についても、重度訪問介護制度について書いていますので、参考にして頂けるとありがたいです。

いずれにしても、私の場合は、この「重度訪問介護制度」を活用させて頂くことにより、母親による介助が困難になった後でも、「総合的な支援」を受けることによって、円滑な生活が、現在進行形で送ることが出来るようになっているというわけであります。

もちろんそのためには、障害者総合支援法の第20条や第21条に基づく、居住地の「市町村への申請」を行い、通常いうところの「認定調査」を受けて、障害支援区分(私の場合、区分6など)の認定の決定を受けて、重度訪問介護による支援を受けるようになったわけであります。

(2)母親も「身体障害者手帳」を持ってるのに、「障害福祉サービス」よりも「介護保険制度」が先?

先程、「母親が、脳梗塞等によって倒れたのは母親が58歳を目前にした時(以下、略)」と、母親が、脳梗塞の後遺症を背負うことになってしまったことを、書いたはずでございます。 

母親は、脳梗塞を発症した後、すぐに救急車で、急性期病院に搬送されたとのことでした。その後、生死の境をさまよい、おおよそ1ヶ月弱、意識不明というか意識混濁のような状況にあったとのことでした。

ですが、奇跡的にも、おおよそ1ヶ月を超えようとしたあたりに、意識が戻り、「右半身麻痺」という後遺症が残ったものの、本人の懸命な、リハビリの努力の結果、環境の影響は多大に受けますが、例えば「室内に段差がない」等の、様々な環境が整えば、一定程度の自立歩行も問題なく出来るまでに回復しました。

失語症なども残りながらも、これもまた、懸命なリハビリの結果、「脳梗塞発症の前の母親を知っている人」以外の方であれば、「失語症について、脳梗塞を患っての失語症があるの?」というところまで、改善して行きました。

それはそれは、「血も涙もない、淡々としたリハビリの結果」によるところが多いと、私個人は感じております。普通であるならば、「血のにじむようなリハビリの結果」のような言語表現で、その努力を表現するところであると思うのですが、それを超えての、

「血も涙も考える暇などない。」

というような、母親の本人の努力があったればこそだと、思います。

もちろんのことながら、母親の「リハビリをしようという努力」を支える、急性期病院の皆々様の看護やリハビリ支援、そしてリハビリ転院後の、「リハビリ入院」を担当してくださった病院の職員の皆様や、多くの皆様による支えがあったからこそ、「完全に専念したリハビリを行う努力」の方に、母親は集中できたものと、深く感じます。

これもまた、皆様に、深く感謝すべきところだと、私は考えております。

そのような劇的な回復を見せた母親であります。50代や60代前半は、環境整備だけで、何とか出来る部分もありましたが、加齢とともに、「介護による支援」が、母親にも必要になってきたわけでありました。

ところで、話は、母親が脳梗塞を発症し、懸命なリハビリを行っているときの時代に戻ります。58歳くらいだったので、「リハビリ後の状況を見てから、状況が落ち着いた後に、公的支援制度の大元となる、『身体障害者手帳』の交付申請を行う」方向で、話は少しずつ進んでおりました。

そもそも「身体障害者手帳」というものは、「手帳が交付されない7級」という一番軽い等級から、「手帳が交付される6級」そして最重度の「身体障害者手帳1級」まで存在します。

その上で、身体障害者手帳の交付を受けるためには、後遺症など(=要は心身に関する障害状況)の症状の安定あるいは固定化してからでないと、身体障害者手帳の交付を受けることが、原則できません。それは、次の条文によります。

●身体障害者福祉法
第4条(身体障害者)

この法律において、「身体障害者」とは、別表に掲げる身体上の障害がある十八歳以上の者であって、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいう。

別表(第四条、(略)関係)

第4項 次に掲げる肢体不自由
第1号 一上肢、一下肢又は体幹の機能の著しい障害で、永続するもの
第2号 一上肢のおや指を指骨間関節以上で欠くもの又はひとさし指を含めて一上肢の二指以上をそれぞれ第一指骨間関節以上で欠くもの
第3号 一下肢をリスフラン関節以上で欠くもの
第4号 両下肢のすべての指を欠くもの
第5号 一上肢のおや指の機能の著しい障害又はひとさし指を含めて一上肢の三指以上の機能の著しい障害で、永続するもの
第6号 1から5までに掲げるもののほか、その程度が1から5までに掲げる障害の程度以上であると認められる障害(以下、略)

そのようなことから、私が先掲したように、筆者たる私自身が「身体障害者手帳」を保有しているがゆえに、障害者総合支援法の第4条、第20条および第21条等に基づいて、障害福祉サービスを私のように利用出来るはずだったわけです。

しかしながら、母親の場合は65歳になる前に、障害者総合支援法の第7条の規定に基づき、介護保険法による支援になったわけであります。関連法令を、次に掲げておきたいと思います。

●障害者総合支援法
第7条(他の法令による給付等との調整)

自立支援給付は、当該障害の状態につき、介護保険法(平成九年法律第百二十三号)の規定による介護給付、健康保険法(大正十一年法律第七十号)の規定による療養の給付その他の法令に基づく給付又は事業であって政令で定めるもののうち自立支援給付に相当するものを受け、又は利用することができるときは政令で定める限度において、当該政令で定める給付又は事業以外の給付であって国又は地方公共団体の負担において自立支援給付に相当するものが行われたときはその限度において、行わない。

●介護保険法
第7条(定義)

第1項
この法律において「要介護状態」とは、身体上又は精神上の障害があるために、入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部又は一部について、厚生労働省令で定める期間にわたり継続して、常時介護を要すると見込まれる状態であって、その介護の必要の程度に応じて厚生労働省令で定める区分(以下「要介護状態区分」という。)のいずれかに該当するもの(要支援状態に該当するものを除く。)をいう。

第2項
この法律において「要支援状態」とは、身体上若しくは精神上の障害があるために入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部若しくは一部について厚生労働省令で定める期間にわたり継続して常時介護を要する状態の軽減若しくは悪化の防止に特に資する支援を要すると見込まれ、又は身体上若しくは精神上の障害があるために厚生労働省令で定める期間にわたり継続して日常生活を営むのに支障があると見込まれる状態であって、支援の必要の程度に応じて厚生労働省令で定める区分(以下「要支援状態区分」という。)のいずれかに該当するものをいう。

第3項
この法律において「要介護者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。

第一号 要介護状態にある六十五歳以上の者
第二号 要介護状態にある四十歳以上六十五歳未満の者であって、その要介護状態の原因である身体上又は精神上の障害が加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病であって政令で定めるもの(以下「特定疾病」という。)によって生じたものであるもの

第4項
この法律において「要支援者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。

第一号 要支援状態にある六十五歳以上の者
第二号 要支援状態にある四十歳以上六十五歳未満の者であって、その要支援状態の原因である身体上又は精神上の障害が特定疾病によって生じたものであるもの

第9条(被保険者)

次の各号のいずれかに該当する者は、市町村又は特別区(以下単に「市町村」という。)が行う介護保険の被保険者とする。

第一号 市町村の区域内に住所を有する六十五歳以上の者(以下「第一号被保険者」という。)
第二号 市町村の区域内に住所を有する四十歳以上六十五歳未満の医療保険加入者(以下「第二号被保険者」という。)
(以下、略)

●介護保険施行令
第2条(特定疾病)

法第七条第三項第二号に規定する政令で定める疾病は、次のとおりとする。

第一号 がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)
第二号 関節リウマチ
第三号 筋萎縮性側索硬化症
第四号 後縦靱帯骨化症
第五号 骨折を伴う骨粗鬆症
第六号 初老期における認知症(法第五条の二第一項に規定する認知症をいう。以下同じ。)
第七号 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
第Ⅷ号 脊髄小脳変性症
第九号 脊柱管狭窄症
第十号 早老症
第十一号 多系統萎縮症
第十二号 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
第十三号 脳血管疾患
第十四号 閉塞性動脈硬化症
第十五号 慢性閉塞性肺疾患
第十六号 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
(以下、略)

以上のように、障害者総合支援法第7条により、通常言われるところの「介護保険優先」が定められているため、母親が、「障害福祉サービス」を使うか「介護保険が優先」されるか、というところが、まず考えなければならないということになったわけです。

なぜなら、母親の場合は、支援給付を受けるための障害等の状態の原因は、58歳直前に患った「脳梗塞や脳出血など」を原因とするものであったからであります。

よって、介護保険法第7条第3項第二号に定められている「特定疾病」の中に、介護保険施行令第2条第十三号に「脳血管疾患」と明記されているところから、「脳梗塞等」は、この介護保険施行令第2条第十三号に於ける「脳血管疾患」に該当するので、介護保険法第7条が適用されることにより、その流れから、障害者総合支援法第7条の規定も適用されて、

※「介護保険優先」の制度が適用される

ということになるわけであります。

これは、「身体障害者手帳」による等級には関わらない事柄であるので、前述のことから、法の流れに沿って、介護保険法による支援が、母親への支援については、適用されるということになるというわけであります。

(Ⅱ)難病の方にとっての「障害福祉サービス」と「介護保険制度」の具体的な関係性について(制度論を中心に)

(1)「難病」って何? 難病の方は、「障害者」なの? 「障害者手帳」などの交付を受けられるの?


ちなみに、「パーキンソン病」という難病がございますが、これは、「難病の患者に対する医療等に関する法律(いわゆる『難病法』)」の第5条で定められた『指定難病6』とされた難病の一つです。

私の縁戚も含め、私が知っている人で、複数名、パーキンソン病を患っている方がございます。

そもそも難病とは「難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)」第1条によれば、

●難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)
第1条(目的)

この法律は、難病(発病の機構が明らかでなく、かつ、治療方法が確立していない希少な疾病であって、当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすることとなるものをいう。以下同じ。)の患者に対する医療その他難病に関する施策(以下「難病の患者に対する医療等」という。)に関し必要な事項を定めることにより、難病の患者に対する良質かつ適切な医療の確保及び難病の患者の療養生活の質の維持向上を図り、もって国民保健の向上を図ることを目的とする。

と定められており、この法律上で言う「難病」の定義になり得ると言えます。その第1条を踏まえると、

「(前、略)発病の機構が明らかでなく、かつ、治療方法が確立していない希少な疾病であって、当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすることとなるもの(以下、略)」

と定義づけられます。すなわち、法律上における難病には、四つの要件が必要であると言えます。

  • 発病の機構(発病に至るまでの原因や流れの話の趣旨)が明らかでない事
  • 当該疾病についての治療方法が確立していない事
  • 当該疾病が希少な疾病である事(当該疾病にに罹っている方が極めて少ないという意味)
  • 当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすることとなる事

以上の四つの要件が満たされた上で、五つ目の要件のような形になりますが、「きちんと客観的な、エビデンスに基づく診断が出来ること」という医学的な側面も、この法律上の「難病」として認められるためには必要になってくると考えられます。「どのような疾病であるか」という医学的な知見が明確でなければ、そもそも始まらないとも言えるからです。

「パーキンソン病」というのは、いわゆる神経難病と言われています。医学的な部分の詳細は、私よりも、医師などの医学の専門家の方のお話の方が「より正確に、より詳細に」的確な情報が得られると思うので、読者の皆様におかれましては、再度、様々な文献だったり、医学の専門家の方に聞いて欲しいと存じます。

ですが、医学の専門家ではない私ではありますが、「パーキンソン病」の症状の一つとして、自分の意思で止められない「体の震え(手指の震えなど)」や「足がすくんで動かない」や「上手く文字が書けなくなる」などの、運動障害が生じてくると、聞いております。

分かりやすく表現するために、語弊を恐れずに、前述のような症状について書きましたが、当事者の方から直接聞いたような表現です。

その上で、当事者の方から聞いた話ですが、「『パーキンソン病』の場合、『身体障害者手帳』を取得しにくい現状にある。だから、難病としての部分と、障害福祉としての部分のサービスで、特に障害福祉の各種サービスが、利用できない場合が多くて困る。」というような趣旨の悩みというか相談を受けたことがあります。

「なぜ身体障害者手帳を取得しにくいのか」

と…。ではなぜ、パーキンソン病の方が、身体障害者手帳を取得しにくい状況にあるということには、それなりの理由があるからです。

改めて、「パーキンソン病」の方が、「身体障害者手帳」を取得しにくい理由を、考え直してみます。

まず身体障害者手帳を取得するためには、身体障害者福祉法第4条やそれに基づく「別表」などに該当しないと、身体障害者手帳の交付を受けることはできません(現実的には、別表を解釈するためのより詳細な規定も踏まえて検討されます)。

例えば、身体障害者福祉法の別表第4項の第1号と、第2号を見直してみましょう。

●身体障害者福祉法
第4条(身体障害者)

この法律において、「身体障害者」とは、別表に掲げる身体上の障害がある十八歳以上の者であつて、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいう。
別表(第四条、(略)関係)

第4項 次に掲げる肢体不自由
第1号 一上肢、一下肢又は体幹の機能の著しい障害で、永続するもの
第2号 一上肢のおや指を指骨間関節以上で欠くもの又はひとさし指を含めて一上肢の二指以上をそれぞれ第一指骨間関節以上で欠くもの

このように規定されております。

まず「別表」第1号を詳しくみていきますと、これは、「上肢、下肢、体幹」つまり「上半身、下半身、体の胴体」についての障害で、「(それらの身体部分の)機能の著しい障害で永続するもの」と書かれております。

要は、「身体的などこかの体の部位で、その機能が低下等の状態で、永続=永遠に機能回復しない状態」ということを意味します。

次に、「別表」第2号を詳しく見ていくと、同じように「上肢、下肢」等の文言が出た上で、「おや指」、「ひとさし指」などの文言は、並んできた上で、最終的に、「第1指骨間関節以上で欠くもの」と文言表現がされております。

これは、「ひとさし指等、手指の一部分が欠く=なくなっているもしくは存在しない」という状態を意味しております。欠損しているので、その指などを復活することは永遠に元に戻るということはないわけですね。

もう少し単純に表現します。要は、

「第1号の『永遠に機能回復しない状態』という状態を前提として、それと同等のような意味合いを踏まえて『機能するための体の部位が欠損してしまっている事』」

ということを、「別表」第2号では、その文言として表現しているということになります。

その上でこれら「身体障害者福祉法の別表」の各号に掲げられている状態をもって、この法律の第4条に戻って、「身体障害者」と定義づけられた上で、「身体障害者手帳の交付」までたどり着くわけであります。要は、

「動かないということが確定している事。機能回復の可能性がない事。そして、それと同じような形で、機能するための体の部位が欠損してしまったこと」

そのような「身体機能が回復しない状態が確定している」ことを、「身体障害」と解釈している、と言えるわけであります。

このような障害についての永続性の部分を、※「障害の固定化」などと表現することが、多々あります。一口に「障害」と表現していますが、「障害」と表現出来るようになるためには、先程の「障害の固定化」が必要になってきます。

換言すると、「機能の低下の進行」という状態の方は、もちろんのこと、「身体機能の回復中、改善が進行中」という、ともすれば、良い方向での変化も含めて、「障害の固定化」には該当しないわけであります。

ゆえに、そのような状態の時は、その部分に限ってとはいえ、「『障害の固定化』は成り立っていない」ということになって、その部分の状態のみだとしても「障害を背負った、とは言えない」と、身体障害者福祉法上は、解釈されるというわけであります。なので、身体障害者手帳の交付は、なされないということになります。

以上の話を踏まえた上で、「パーキンソン病」について考えてみると、その症状は、

「自分の意思で止められない『体の震え(手指の震えなど)』や『足がすくんで動かない』や『上手く文字が書けなくなる』などの、運動障害が生じてくる」

ということであります。すなわちそれは、「身体の機能が動かない、機能が失われた、無くなった」ではなくて、

「(自分の意思通りに、自分の目的とする動作として)適切的確な身体機能というか運動ができなくなった。上手く動かせなくなった」

という症状であります。

裏を返せば、例えば、指は動きますし、手も腕も動かせるわけです。当然指自体も存在します。その上、難病の場合は、「進行性」という部分もあるので、「固定化」というような症状の状態でもありません。

私も身体障害者として、様々な検査を受けたことがありますが、手帳に絡むような検査の場合は、どちらかというと、「指の可動域は何度あるか。肩関節の硬さはあるか。麻痺がどの程度強いか」そのような検査が多かったと記憶しております。

母親が身体障害者手帳の交付のための検査をする時も同じでした。「足の関節がどの程度、角度として曲がるか。曲げることが出来るか。」という事柄が中心でした。

私も母親も、身体の部位で、「欠損」というものはなかったので、「無くなった」という意味での「障害」というものは、検査されませんでした。しかしながら項目としては、「身体の部位が『有るか無いか」という趣旨の検査項目は、存在していたはずです。

ここまでお読み頂ければ、何とか理解して頂けるとは思うのですが、「身体障害者手帳」の方は、「身体機能の有無」そして、「症状の確定しているか否か」を中心に見ることになります。

他方で、難病としての「パーキンソン病」としての診断は、医学的な神経系統のエビデンスに基づき、「その症状の有無」などを見ていきます。

「身体障害者手帳」=身体障害者福祉法における「障害者」と「難病の方」というのは、その身体状況について重きを置く観点が全く違うわけなのであります。ですので、「身体障害者手帳が交付されにくい」という結果になるのです。

従って、「パーキンソン病」の場合は、いわゆる「障害の固定化」などが、身体障害者福祉法に該当するところまでにならないと、

「身体障害者手帳の交付を受けにくい。
→身体障害者福祉法上の『障害者』となりにくい。」


ということになります。

そして上述と同じような症状下あるいは状態であれば、他の難病である、例えば、「筋萎縮側索硬化症( ALS )」や「多系統萎縮症」等の難病を患っている方にも、同じようなことが、言えます。

ここに掲げた以外の難病であったとしても、症状や状態像が同じであれば、同様な結果になるわけであります。つまり、身体障害者手帳の交付は受けにくくなり、その結果、身体障害者福祉法上の「障害者」には当てはまらなくなると言うことです。

(2)「身体障害者手帳」等の交付を受けることができなかった場合、どうなってしまうの?(難病の場合の制度解釈を通じて考える)

本回の(Ⅰ)(1)の項目で、私自身の事例で掲げさせて頂きましたように、私の場合は、40歳未満で、介護保険法の対象外でありました。と同時に、身体障害者手帳を保有していたので、障害者総合支援法第4条、第20条および第21条に基づいて、市町村への申請をし、障害支援区分の認定を受け、障害福祉サービスを利用するに至っております。

逆に、「難病」の方に、少なからず発生すると言われる、生の声や伝聞などで耳にしている、「身体障害者手帳」等を保有できていないために、身体障害者福祉法などにおける「障害者」と該当せずに、障害者総合支援法第4条、第20条および第21条等の適用を受けることができず、障害者総合支援法で定められている「重度訪問介護」等をはじめとする障害福祉サービスについて、

「市町村に申請」することが出来ず、よって申請に基づく「障害支援区分の認定」のための判定を市町村から受けること(=一般的に『認定調査』とその判定結果としての『障害支援区分』といいます)すらが、できない。

という結果になってしまいます。つまり、重度訪問介護などの支援サービスを利用できないということになるわけであります。

他方で、介護保険制度の方を見てみると、身体障害者手帳の保有の有無に関わらず、介護保険法第7条第3項および第4項および第9条により、

「『65歳以上(第一号被保険者)』として或いは、『40歳以上65歳未満の特定疾病』による要支援あるいは要介護状態になった者(第2号被保険者)」

として、介護保険法による支援を受けることは出来るようになります。それらを踏まえて、「特定疾病」とは何なのかを改めて見てみると、介護保険施行令第2条の中の各号に、16種類の「特定疾病」の種類が定められております。そこに第七号として「パーキンソン病」が入っているわけであります。

つまり、介護保険法においては、身体障害者手帳を保有していなくても、「パーキンソン病」は、介護保険法に基づく支援サービスを申請の上、利用出来るということになると言うわけになります。

当然のことながら、介護保険法に基づく、申請や様々な手続きを踏むことは、大前提であり、支援サービス利用者としての対象者として認定が決定されてからの話にはなります。

しかしながら、「身体障害者手帳がなくても、支援サービスを利用出来る可能性があると言うこと、その申請が出来ると言うこと」そのものが、当事者等については、とても大切だと言うことは出来ると考えられます。

そういった側面も、のちのち考慮されて、障害者総合支援法も、平成25年の改正で、第4条における、「障害者の定義」に、

「治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって政令で定めるものによる障害の程度が厚生労働大臣の定める程度である者(=難病等)」

という文言が追加されることにより、身体障害者手帳などを保有しない、一般的に呼ばれる「難病の方」についても、障害者総合支援法がストレートに適用され、障害福祉サービスの利用のためのスタート地点に立つ「市町村への申請」を行うことが出来るようになったわけです。

この改正が行われるまでは、先述したように、「障害福祉サービスを受けることはできない」という状態を受け入れるか、その裏返しのように、「何とかサービスを利用出来るようにするために、まず、真っ先に、『身体障害者手帳などの交付』を受ける」という努力(?)をしなければいけませんでした。

40歳未満であると、介護保険法による支援サービスの対象にすらなれないので、そのような努力(?)をするしかないということになります。

ですが、本来ならば、たとえ困っているとはいえ、全く別な観点から評価する制度としての「身体障害者手帳」であるにも関わらず、「身体障害者手帳」がなければ、「身体障害者手帳」制度とは別の「障害者総合支援法における障害福祉サービスを受けるがため」に、「身体障害者手帳を『取得するために努力』する」と言うことは、全くもって、本末転倒のような話になるわけであります。

なぜなら重ねて書きますが、「身体障害者手帳」制度と「障害福祉サービス」制度の双方は、全く別の観点から評価されて、それぞれの制度目的の上での支援を行うものだからであります。

関連性が近いもので、重要な連携性が存在しているとしても、「別な制度である」以上は、別な制度として考えていかなければならないはずだと考えます。その故か、かのような状態が、平成25年の障害者総合支援法の改正によって、改善されたと言えます。

そしてそれは、他の難病である、例えば、筋萎縮側索硬化症( ALS )や多系統萎縮症を患っている方にも、同じようなことが、言えます。

ちなみに、ALSや多系統萎縮症は、介護保険法の特定疾病に入っている難病なので、40歳以上で、支援が必要であると認定された場合は、介護保険法の支援を受けることができます。そして平成25年以降は改正によって、40歳未満であれば、障害者総合支援法による支援サービスを利用出来るということになったと言うわけです。

介護保険法で特定疾病として認められているのは難病の一部を含めて、介護保険法施行令第2条により、16種類だけになっています。他方で、いわゆる「難病法」として指定されている難病は338種類(令和3年11月現在)となっており、さらに障害者総合支援法の第4条に基づく「難病等」は366種類(令和3年11月現在)となっており、それぞれに差異があります。

「難病」と言っても、それぞれの法制度で、カバーされている疾病としての難病には違いがあるということです。

上述のように、制度改正などの紆余曲折はあったものの、現在では、「身体障害者手帳」等の保有がなくても、障害者総合支援法上は、「難病の方」も、同法第4条の規定により、「障害者」として定義されることにより、円滑に、障害福祉サービスを受けることが出来るようになったというわけであります。と同時に、同法7条により、「介護保険優先制度」が適用されるので、介護保険法の存在の重要性も理解しておく必要があると考えられるというわけです。

加えて、一言で、「難病」と言っても、「法制度の違いや、観点の違いから、様々な違いが生じる」と言うことを、頭の片隅に残しておく必要があると考えられます。

(3)「障害福祉サービス」と「介護保険サービス」の併用について(私の母親の事例を通じて考える

話を、母親の話に戻します。

母親は、様々な制度の関係性による「介護保険優先制度(障害者総合支援法第7条)」に基づき、加えて、介護保険法の特定疾病に基づき、介護保険による支援サービスからスタートしました。一番最初は、「要介護1」からスタートしたと記憶しております。

加齢や転倒による骨折などもあって、身体機能の低下も見られ、直近のところで、「要介護4」になっております。在宅での最後の要介護度数でもあります。

そのような状況下にあって、環境の変化や、様々な通知を前提として、都道府県による制度運用の違いもあるので、全ての人に当てはまるとは断言できませんが、在宅における直近段階で、障害福祉サービス=重度訪問介護制度の併用利用にまで至りました。

母親の事例とは違ってきますが、介護保険法には、例えば、障害福祉サービスで言うところの「同行援護(視覚障害者向け支援制度)」に対応する支援サービスがありません

このように介護保険制度の支援制度に存在しない支援サービスであって、障害福祉サービスに存在する支援サービスの場合は、「支援を必要とするものが、障害者総合支援法の該当者」となる場合は、障害者総合支援法に基づく申請や手続きを経て、障害福祉サービスの支援サービスを利用することはできます。

なお、「同行援護」の支援内容については、このシリーズ『 障害福祉サービスの基礎知識 第1回目 』のところで、書かせて頂いております。すなわち、

■同行援護
視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者等につき、外出時において、当該障害者等に同行し、移動に必要な情報を提供するとともに、移動の介護などを提供します。)

このような場合、介護保険法を利用しながら、障害者総合支援法に該当する状態にあれば障害福祉サービスを利用することができます。その二つの制度を調整するのが、障害者総合支援法第7条に絡む条文あるいは法令と言うことです。

このように、特に40歳以上に対する支援になってくると、介護保険制度と障害福祉サービス制度は、「車の両輪」と表現するには、大げさかもしれませんが、とても深い関係性があると言えるわけであります。

この深い関係性、二つの制度を、制度を利用するに当たっては、理解する必要が大切だと思われます。

特に、特定疾病に該当する場合、よくよく理解していく必要があると考えられます。なぜならば、何回も触れているように、「介護保険優先制度」が存在するからです。

例えば、40歳以降になれば、「特定疾病」に該当する難病の方への支援については、まずは介護保険制度から支援開始となります。そのために介護保険法に基づく申請や要介護度を決定するための「認定調査」を受けることになります。これによって一定程度の心身状況を把握されると考えられます。

だとすると、介護保険の要介護度の限度額だけでは、「足りるか足りないか」のおおよその将来像が見えてくるはずです。そのようになると、介護保険サービス開始の手続きと同時並行で、障害者総合支援法の「障害福祉サービス(例えば、重度訪問介護など)」を利用出来るように、「介護支援専門員」や「相談支援専門員」の方々が、動く必要が発生します。

ゆえに、社会福祉法としての障害者総合支援法を重視して制度理解するということは、法律の分野は違ってくるとはいえ、社会保険法としての介護保険法についても、詳しく制度理解を深めていく必要があると考えます。特に、二つの支援に関する法律の違いについて、より深く理解するためにも…。

◇まとめ

今回は、「重度訪問介護と介護保険制度の緊密さ」と題して、二つの支援制度についての関係性について、具体例を掲げながら、綴ってきました。

具体例とは、末筆のタネ明かしではないですが、「私自身」と「私の母親」という身近な事例でした。事例を考えるに当たっては、やはり、事例となる場合の、「リアルさ」というものは、とても大切だと、私自身が考えました。

他方で、「リアルさ」を求めると、その事例となった人のプライバシーに触れかねません。そのように考えると、一定程度、「リアルさ」を追求出来るのは、私自身、あるいは、私の最大の支援者で、最大の理解者である私の母親しか存在しないなあと、このような選定になったわけであります。

とはいえ、制度利用については、私自身が、色々と、壁にぶつかりながら、あるいは私の周囲の皆様に多大なるアドバイスを頂きながら、現在進行形で、支援を受けながら、在宅生活を、継続させて頂いていると言う、厳然たる事実と、感謝が、私の中に存在しております。私自身の今の存在が、「私だけのものではない」という思いが、駆られてくる感覚からの、今回の綴りでした。

そのような思いをのせながら、今回の話のまとめ、要点とすべき知識を、最後に、箇条書き的に、まとめることで、このたびの一段落としたいと思います。

●居住地の市町村に申請の上で、障害福祉サービスの利用が始まる。

●(申請先の市町村からの)「認定調査」を受けて、申請者たる障害者の「障害支援区分」が決定してから利用が始まる。

●障害者総合支援法に基づく「障害福祉サービス」による支援を受けるものは、同法で言うところの「障害者」でなければならない。一つの例として「身体障害者手帳」保有者である。

●障害者総合支援法で言うところの「障害者」の定義に該当しない場合は、障害者総合支援法における「障害福祉サービス」による支援を受けることはできない。

●障害者総合支援法で言うところの「障害者」の定義に該当しない場合であっても、介護保険法でいうところの「第一号被保険者(65歳以上の者)」あるいは、「第二号被保険者(40歳以上65歳未満の者で、心身上の障害が特定疾病によって生じた者)」に該当する方は、介護保険法上の支援が必要な状態にあるという認定の調査など手続きを経た後に、支援サービスを利用することが出来る。

●障害者総合支援法上の「障害福祉サービス」と介護保険法上の支援サービスを、どちらも受けられるような状態の方については、障害者総合支援法第7条により、「介護保険優先制度」が適用され、まず介護保険法による支援を受けるようになる。

●「パーキンソン病」「筋萎縮側索硬化症( ALS )「多系統萎縮症」等の難病の方は、その症状の進行性がゆえに、「症状(障害)の固定化」されていないと言う解釈なので、特に軽い場合は、「症状(障害)の固定化」されている部分もないので、「身体障害者手帳」の交付を受けにくい現実があった。それが故に、身体障害者福祉法における「障害者」に該当しないために、障害者総合支援法について平成25年の改正前までは、「障害福祉サービス」を利用できなかった。

症状が進行して、「症状(障害)の固定化」が見られた部分については、身体障害者福祉法における「症状(障害)の固定化」となったと解釈され、その部分の範囲内において、「身体障害者手帳」の認定対象となり、認められた場合、身体障害者手帳の交付を受けることによって、法律上における「障害者」となり、改正前でも、障害者総合支援法による「障害福祉サービス」を利用出来るという形であった。

●「パーキンソン病」「筋萎縮側索硬化症( ALS )等の難病の方について、介護保険法における「特定疾病」の16種類に入っている難病であれば、「第一号被保険者」あるいは「第二号被保険者」として、介護保険上の支援が必要な状態であれば、身体障害者手帳の固有の有無に関わらず、介護保険サービスを利用出来る。

●障害者総合支援法の平成25年度改正により、法律の文言を追加することによって、「難病」の方も、ストレートに、同法における支援が必要だと認定された場合、「障害福祉サービス」を利用出来るようになった。特に40歳未満の介護保険対象外の方にとっては朗報だった。当然のことながら、40歳以上については、障害者総合支援法第七条の適用を受け、「介護保険優先制度」の適用を受け、先に介護保険法の支援サービスを利用することになる。

●介護保険法で特定疾病として認められているのは難病の一部を含めて、16種類だけになっている。
「難病法」の場合、指定されている難病は338種類(令和3年11月現在)となっている。
障害者総合支援法の第4条に基づく「難病等」は366種類(令和3年11月現在)となっている。
このように一口に「難病」と言っても、根拠法令が違ってくると、それぞれの制度で認められている「難病」というのは、皆違っているということである。

●40歳以上の方であっても、介護保険優先制度に該当して、介護保険法の支援サービスを利用している方であっても、介護保険法でカバーしていない内容の支援である場合であって、障害者総合支援法で支援出来る場合は、障害者総合支援法の適用を受けられる方は、「障害福祉サービス」を利用出来る。

例えば、障害者総合支援法にある、視覚障害者向けの「同行援護」や就労支援などの「就労支援 B型」などは、介護保険法に存在しないものなので、障害者総合支援法第7条に関わらず制度利用出来る。さらに、サービスを受ける対象者の状態によっては、障害者総合支援法と介護保険法の双方の制度を利用出来る場合がある。これを、「(両制度の)併用利用」という表現することが多い。実際に、介護保険サービスだけで支給限度が足りない最重度の支援を必要としている方に、障害者総合支援法が適用されて「障害福祉サービス」の「重度訪問介護」を利用されている方が、少なからず存在している。

今回は、この辺で筆を置きたいと思います。

これからも、私や私の母親などの、プライバシー的に、ほとんど問題ないか、お許しを頂けるような方の事例が中心となりますが、少しばかりの「私の体験記」のような要素も含まれるかもしれませんが、「現実のリアルさ」を追求しながら、「障害福祉サービスの知識」について、基本的な部分を大切にしながら、書き続けていくことができれば良いと思います。

事例を含めながら、一定のテーマについて論じてゆくことは、とても難しいことなのだと、改めて感じました。これからも精進していきたいと思います。

なお、私が担当させて頂いている、「障害福祉サービスの基礎知識」のサイトは第1回目からのサイトは、ホームケア土屋のサイトの中にございます。以下の URL となります。

加えて、ホームケア土屋のサイトの中に「介護の知識」というサイトがあり、「重度訪問介護について」として、私とは違った視点での「重度訪問介護」についての解説が掲載されております。以下の URL です。

別の観点から、分かりやすく書いてあるので、こちらも読んで頂くと、理解が深まると存じます。重なる部分があったり、違った部分があったり、そのような差異について注意しながら、読み込んでみると、理解が進むと思います。

私自身も、拝読させて頂いておりますので、皆様も、ご一読を。

今回は、「障害福祉サービス」「重度訪問介護」はたまた「介護保険制度」に絡んで、「市町村への申請」や「認定(調査)」や「障害支援区分」の言葉が、ちらりほらりと、出てきました。それを受けて、次回は、これらの出てきた言葉を切り口に、それぞれの支援制度の入口について、書き綴ることができればと存じます。

もちろん、「事例や具体例その他」などを織り交ぜながら…。
今後とも宜しくお願い申し上げます。

長文、お読みくださって、ありがとうございました。

今シーズンの冬も厳しいですが、今や2月。3月の年度末、そして春が近づいてきております。
様々な事柄は起きますが、新しい年に入って、新たなことが、起きると思います。
そのような希望に胸を馳せつつ、健康に気をつけながら、お過ごし下さいますように…。

それでは、次の第8回目の時に会いましょう!
今後とも宜しくお願い申し上げます! 

行政書士有資格者、社会福祉主事任用資格者
筆者プロフィール
1973年7月上山市生まれ。県立上山養護学校、県立ゆきわり養護学校を経て、肢体不自由者でありながら、県立山形中央高校に入学。同校卒業後、山形大学人文学部に進学し、法学を専攻し、在学中に行政書士の資格を取得。現在は、「一般社団法人 障害者・難病者自律支援研究会」代表。

当HP「土づくりレポート9月号」にて、齋藤直希さんをご紹介しております。

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