いまの介護の仕事で、収入が頭打ちに感じている。夜勤も身体的な負担もあるのに、昇給の見通しが立たない。そんなとき、求人で「重度訪問介護」という言葉を見かけて気になっている方は少なくありません。でも、必要な資格がよく分からず、応募の一歩手前で止まっている——そんな状況かもしれません。
初任者研修やヘルパー2級は聞いたことがあっても、「重度訪問介護従業者養成研修」と言われると、何のことかピンとこないですよね。「“重度”って自分に務まるのか」「医療的ケアとか難しそう」という不安もあると思います。
この記事では、重度訪問介護で働くために必要な資格は何か、どの研修をどう受ければいいのか、費用はいくらかかるのかを、はじめての方にも分かるように整理します。読み終えるころには、「未経験の自分でも始められそう」「次はここで受ければいい」という見当がつくはずです。
この記事の要点
- 必要なのは養成研修の修了だけ。未経験・無資格からでも始められます
- 初任者研修などの介護の資格とは別系統。これまでの経験は免除で活かせます
- 基礎・追加で現場に立ち、統合課程で医療的ケアまで広げられます
重度訪問介護のヘルパー(従業者)ってどんな仕事?
高齢者介護のヘルパーと似ているようで、支える相手も働き方も違います。まずは、どんな仕事で、誰を支えるのかを見ていきます。
仕事内容は身体介護・家事・見守り・外出の付き添いまで幅広い
重度訪問介護従業者の仕事は、利用者(クライアント)の自宅を訪問し、生活全般を支えることです。食事・入浴・排せつなどの身体介護、調理・洗濯・掃除などの家事援助、買い物や通院といった外出の移動介助まで含まれます。
高齢者介護との大きな違いは、短い介助を細切れに行うのではなく、長時間にわたって一人の暮らしに寄り添う点です。同じ従業者が朝から夜まで切れ目なく関わることもあり、信頼関係を築きながら、その人らしい生活を支えていきます(出典:厚生労働省「障害福祉サービスの内容」)。
支えるのは障害支援区分4〜6の重い障がいがある方
重度訪問介護を利用するのは、障害支援区分が4〜6と認定された、重度の障がいがある方です。具体的には、ALS(筋萎縮性側索硬化症)などの神経難病、脊髄損傷、重い脳性麻痺、重度の知的障がいや精神障がいなどにより、常に介護を必要としている方が中心です。
「重度」と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、必要な知識と技術は研修で学べます。だからこそ、未経験からでも段階的に力をつけていける仕組みが整えられています(出典:厚生労働省「障害福祉サービスの内容」)。
必要な資格は?|「介護の資格」とは別系統
ここが、はじめての方がいちばん混乱するところです。順番にほぐしていきます。

「介護の資格」と「障がい福祉の資格」は別物|あなたの初任者研修はどう関係する?
介護の資格というと、初任者研修(旧ヘルパー2級)や実務者研修、介護福祉士を思い浮かべる方が多いと思います。ですが、これらは主に「高齢者介護(介護保険)」の世界の資格です。重度訪問介護は「障がい福祉サービス」に分類されるため、資格の系統そのものが異なります。
高齢者介護(介護保険)の系統
初任者研修(旧ヘルパー2級)→ 実務者研修 → 介護福祉士
障がい福祉サービスの系統
重度訪問介護従業者養成研修(ほかに同行援護・行動援護などの従業者養成研修)
重度訪問介護従業者養成研修は、この障がい福祉の系統のなかで、重度訪問介護の現場に特化した研修です。短期間で修了でき、受講に資格や経験の条件がないため、未経験からでも入っていけます。「初任者研修を持っているからそのまま働ける」わけではありません。ただし、両者はまったく無関係でもなく、介護の資格を持っていると養成研修の科目免除など扱いが変わることもあります(出典:厚生労働省告示第538号/大阪府「重度訪問介護従業者養成研修 指定要綱」)。
必要なのは「養成研修」の修了だけ|未経験・無資格でもOK
重度訪問介護で働くために必要なのは、都道府県知事が指定する「重度訪問介護従業者養成研修」を修了することです。国家試験のような難しい資格は必要ありません。
受講にあたって、保有資格・実務経験・年齢・学歴などの条件は設けられていません。つまり、介護がまったくの未経験でも、無資格でも受講できます。「自分には無理かも」と感じていた方にとって、ここは大きな安心材料になるはずです(出典:厚生労働省告示第538号/大阪府「重度訪問介護従業者養成研修 指定要綱」)。
介護福祉士などを持っていると扱いが変わる
すでに介護福祉士や初任者研修などの資格をお持ちの場合は、養成研修の科目が免除されたり、受講要件の扱いが変わったりすることがあります。これまで積んできた介護のキャリアが、無駄になるどころか活きてくるということです。
免除の対象や条件は受講先によって異なります。申し込み前に確認しておくと安心です。
4つの課程、どこまで受けると何ができる?
「どれを受ければいいの?」と迷いやすいところです。課程ごとに、できることがどう広がるかで見ていくと分かりやすくなります。

基礎課程・追加課程|まずはこの2つで現場に立てる
基礎課程は、介護技術の実習や職業倫理など、重度訪問介護の土台となる内容を学ぶ課程です。修了すると、障害支援区分4・5の方を担当できるようになります。
追加課程では、リスク管理や緊急時の対応など、より実践的な内容を学びます。修了すると、障害支援区分6(最も支援を必要とする区分)の方も担当できるようになります。この基礎課程と追加課程の2つを修了すれば、重度訪問介護の現場で働き始められます(出典:東京都福祉局「実施要綱」ほか)。
統合課程|喀痰吸引などの医療的ケアまで学べる
統合課程は、基礎課程と追加課程の内容に加えて、喀痰吸引(たんの吸引)や経管栄養(チューブによる栄養注入)といった医療的ケアの講義・演習まで学べる課程です。重度訪問介護の利用者には医療的ケアを必要とする方も多いため、活躍できる場面が広がります。
ただし、研修を修了しただけでは医療的ケアはできません。修了後にもう一段階の手続きが必要です。その流れは次の章でくわしく説明します(出典:独立行政法人福祉医療機構(WAM)資料)。
行動障害支援課程|強度行動障害のある方への支援
行動障害支援課程は、知的障がいや精神障がいがあり、強度行動障害のある方を支援するための専門的な知識・技術を学ぶ課程です。この課程を修了すると、相当する強度行動障害支援者養成研修も修了したものとされます。
どの課程まで受けるかによって、担当できる利用者の範囲や、対応できるケアの幅が変わります。言いかえれば、「どこまで学ぶか」が、仕事の広がりや手当の対象になるかどうかにもつながっていきます(出典:厚生労働省/障害者総合支援法)。
資格を取るまでの流れと、医療的ケアができるようになるまで
「研修を受ければすぐ何でもできる」と誤解しやすいところなので、流れを正確に押さえておきましょう。

受講から現場デビューまでの流れ
基本的な流れは、受講の申し込み → 講義・実習 → 修了、です。基礎課程と追加課程を修了すれば、重度訪問介護従業者として現場で働き始められます。
研修そのものは比較的短期間です。受講先によっては最短で数日ほどで修了できる場合もありますが、日程や課程数によって変わるため、受講先により異なります。どのくらいの期間・難しさなのかは、別の記事でくわしく整理しています。
医療的ケアは段階を踏んで「できる」ようになる
統合課程を修了しても、その時点ですぐに喀痰吸引などの医療的ケアを行えるわけではありません。実際には、次の段階を踏みます。
- 統合課程(喀痰吸引等の基本研修を含む)を修了する
- 看護師などの指導のもとで実地研修を受ける
- 都道府県から「認定特定行為業務従事者」の認定を受ける
- 勤務先の事業者が「登録特定行為事業者」として登録する
この段階を経て、はじめて認定を受けた特定の利用者に対して医療的ケアを行えるようになります。「統合課程を修了すれば誰にでも医療的ケアができる」わけではない点に注意してください。段階を踏むぶん安全が守られている、と考えると分かりやすいはずです(出典:厚生労働省「喀痰吸引等制度」/社会福祉士及び介護福祉士法第48条の3)。
費用はいくら?無料で受けられることもある
「資格取得にお金がかかるのは不安」という方のために、費用の目安と、負担を軽くする方法を見ていきます。
費用の目安は課程ごとに数万円
研修費用は、都道府県が指定する受講先ごとに異なります。一般的な目安は次のとおりです。
| 課程 | 費用の目安 |
|---|---|
| 基礎課程・追加課程 | 各 1〜2万円程度 |
| 統合課程(医療的ケアを含む) | 3万円程度 |
就労を条件に無料・割引になる仕組みもある
受講先によっては、研修修了後にその事業所で働くことを条件に、研修費の割引や費用負担が大きく軽くなる場合があります。自治体が研修費を補助している場合もあります。費用面が不安な方は、こうした制度がないかを事前に調べておくと、選択肢が広がります。
資格を取ると何が変わる?仕事の幅・手当・キャリア
研修を受けることで、働き方やキャリアがどう変わるのかを整理します。

他の地域でも働けて、需要も高まっている
重度訪問介護従業者として必要な研修を修了すれば、研修を受けた都道府県以外でも働けます。引っ越しや復職があっても、これまでの研修修了が活きるのは心強いところです。
重度訪問介護を必要とする方は増える傾向にあり、支える担い手のニーズも高まっています。働く場所を見つけやすいのも、この分野の特徴のひとつです(出典:各種公的統計・事業者情報)。
課程を進めるほど担当範囲が広がり、手当につながることも
基礎・追加課程で現場に立ち、統合課程まで進めば医療的ケアにも対応できるようになります。担当できる利用者やケアの幅が広がるほど、できる仕事も増えていきます。医療的ケアは、事業所によっては加算の対象となり、手当につながる場合もあります。
高齢者介護とは異なる専門性が身につくため、介護職としてのスキルアップにもなります。これまでの介護経験や資格が、免除や実務の場面で活きてくるのもうれしいポイントです。
養成研修はどこで受ける?
最後に、実際にどこで研修を受ければいいのかを見ていきます。

受講先の探し方と、選ぶときの視点
研修を実施しているのは、自治体のほか、NPO法人や社会福祉法人、民間のスクールなどさまざまです。お住まいの都道府県のサイトに、指定された研修事業者の一覧が掲載されています。
選ぶときは、受けられる課程(統合課程まであるか)、費用、就労との両立のしやすさ、修了後のサポートといった視点で比べてみてください。自分に合った受講先を見つけやすくなります(出典:各都道府県の指定研修事業者一覧)。
土屋ケアカレッジや、地域ごとの受講先
ホームケア土屋が連携する土屋ケアカレッジでは、喀痰吸引などの医療的ケアまで学べる統合課程を開講しています。未経験から入社して研修を受ける方も多く、統合課程を通じて医療的ケアにも対応できる体制が整っています。受講費用の負担を軽くする制度や、研修期間についての条件は、受講先に確認するのが確実です。
東京や大阪など、地域ごとの受講先については、それぞれの記事でくわしく紹介しています。
よくある質問
働きながらでも、重度訪問介護の研修は受けられますか?
はい。受講に年齢や実務経験の条件はなく、介護や別の仕事を続けながら受講する方も多くいます。研修の日程や曜日は受講先によって異なるため、勤務と両立しやすいスケジュールかどうかを申し込み前に確認するとよいでしょう。
介護福祉士の資格があれば、養成研修は受けなくてもよいですか?
介護福祉士などの有資格者は、養成研修の科目が免除されたり、従事できる範囲の扱いが変わったりする場合があります。ただし喀痰吸引などの医療的ケアを行うには、別途研修が必要です。免除の対象や条件は受講先によって異なるため、事前の確認をおすすめします。
研修はオンライン(通信)だけで修了できますか?
重度訪問介護従業者養成研修には実技の演習や実習が含まれるため、対面・通学での受講が基本です。一部の講義をオンラインで実施する受講先もありますが、すべてを通信だけで修了することは一般的ではありません。受講形式は申し込み先にご確認ください。
まず押さえる3つのポイント
ここまでの内容を、3つの要点に絞って振り返ります。
- 必要なのは「重度訪問介護従業者養成研修」の修了だけ。初任者研修などの介護の資格とは別系統だが、未経験・無資格からでも始められる
- 基礎課程と追加課程で現場に立て、統合課程まで進めば喀痰吸引などの医療的ケアにも段階的に対応できるようになる
- 費用は課程ごとに数万円が目安だが、就労を条件にした割引や費用の軽減など、負担を抑える道もある
「重度は自分には無理かも」と感じていた方も、こうして整理してみると、未経験からの一歩は決して遠くないと感じられたのではないでしょうか。もっと具体的に進めたい方は、研修の内容や受講先について、オンライン説明会などで相談してみるのがおすすめです。
未経験から、重度訪問介護の一歩を
必要な研修の内容や受講先、働き方について、土屋ケアカレッジ・ホームケア土屋がご案内します。未経験からの相談も歓迎です。オンライン説明会もあります。
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