エレベーター / 雪下岳彦

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エレベーター
雪下岳彦

アメリカにいたときの話です。

エレベーターを待っていたら、着いたエレベーターは混んでいて、車いすの私が乗れるスペースはありませんでした。

私が“Go ahead!”(日本語で「お先にどうぞ」)と言おうと思うよりも早く、中に乗っていた数名が「階段で行くから、乗ってきなよ!」(著者日本語訳)と、それはもう爽やかに立ち去っていきました。

あまりにも自然かつスムーズで、ビックリしました!

私が「ありがとう!」という頃には、すでに姿も見えません。

おかげさまで、そのエレベーターに乗ることができました。

こういうパターンは、かつて経験したことがありませんでした。

あらためて思い返すと、あのタイミングであれだけ自然にこの行動ができるというのは、過去にも何度かやっていて、あの人の中ではごく当たり前のことだったんだと思います。

しかし、仮に私が反対の立場だったとしても、同じような行動がとれるかというと、絶対に無理だと思います。

まず、そういうパターンが頭にないので、行動もできないはずです。

今だったら、私も同じような行動がとれるかもしれません。

なぜならば、そういうパターンが頭に入ったからです。

私がエレベーターを自ら降りて階段に行くことは無理だと思いますが、似たようなシチュエーションで、このパターンを応用した行動がとれる気がします。

もし、自分がいいなと思う行動や、されてうれしかった行動に出会ったら、ぜひ自分の中に取り込んでみてください。

頭の中にそのパターンが入ったら、いつかきっと自分も同じように行動できますよ!

そして、それが次の人、その次の人と広がっていけば、より良い世の中になっていきますね!

プロフィール
雪下 岳彦(ゆきした たけひこ)

1996年、順天堂大学医学部在学時にラグビー試合中の事故で脊髄損傷となり、以後車いすの生活となる。

1998年、医師免許取得。順天堂医院精神科にて研修医修了後、ハワイ大学(心理学)、サンディエゴ州立大学大学院(スポーツ心理学)に留学。

2011年、順天堂大学大学院医学研究科にて自律神経の研究を行い、医学博士号取得。

2012年より、順天堂大学 医学部 非常勤講師。

2016年から18年まで、スポーツ庁 参与。

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