自分らしく生き続けたい。ALSをサポートする介護の現実と課題とは
ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、年間において10万人に1人程度の発症率という稀有な難病です。
令和3年度時点では、9,968人のALSのクライアントが確認されています。
国民の大多数が罹患する病気ではありませんが、病気の進行によって全身の自由が奪われる疾患であること、また根本的な原因と治療法が見つかっていないことから、ALSを発症したクラインアントの多くは介護を必要としている現実にあります。
しかしながら医療的ケアも必要としており、常時の見守りと身体介護を要するALSのクライアントに対する介護サービスの提供が充実しているとは言い難いのが現状です。
今回の記事では、自分らしく自宅で自立した生活を継続したいと考えるALSクライアントを取り巻く介護の現実と、課題についてご紹介していきます。
【参照】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)について(公立学校共済組合 関東中央病院)
特定医療費(指定難病)受給者証所持者数(難病情報センター)
ALSと向き合うということ
ALSは運動を司る神経の異常によって、全身にしびれが生じ、体を動かすことができなくなることによって、徐々に筋肉が萎縮してしまい、呼吸や食事といった生命維持活動にも影響を与える病気です。
ALS と向き合いながら生きるためには、排泄・歩行・入浴といった身の回りの世話をサポートしてもらうことと、人工呼吸器の利用やそれに伴う喀痰吸引の処置、また経管栄養の管理が欠かせません。
これらの身体介護と医療的ケアは24時間体制で行う必要があり、家族だけで対応することは不可能に近いです。
そこで自宅での生活を継続したいと希望するALSのクライアントの意思を尊重し、在宅介護を実現させるためには、様々な社会保障制度の適用と地域全体の協力にというサポートが欠かせません。
ALSを取り巻く介護の現実
ALSを発症したクライアントは、自宅で家族による在宅介護を受けながら生活しているケースが大半です。
これは24時間体制で看護師が対応可能でALSのクライアントを受け入れ可能な介護施設が充足していないという現実と、ALSを発症していても自宅での生活を継続したいと希望するクライアントの希望が影響しています。
ALSに対応した介護施設
ALSは症状が進行するのに伴って、喉や口の周りの筋肉、そして腹筋や背筋などに萎縮が出現することによって、嚥下機能の低下に伴う食事の経口摂取や、自発的な呼吸ができなくなります。
そのためALSの発症から2年が経過したあたりから、気管を切開して人工呼吸器を利用したり、胃ろうを造設して経管栄養を始めるというクライアントが多くなります。
特に人工呼吸器を使用するなかでは、溜まる痰を処理するための喀痰吸引という医療的ケアも大切になってきます。
このように24時間体制での介護と医療のサポートが必要なALSを受け入れることができる可能性のある施設は、介護医療院もしくは医療機関と連携した介護付き有料老人ホームです。
現実では介護医療院の空きもほとんどなく、ALSに対処可能な介護付き有料老人ホームはそもそもの絶対数が少ないうえに諸費用が高額になるという問題があります。
ALSと在宅介護
特にALSのクライアントは肢体の自由を失い、呼吸や食事も自発的に行うことは難しくなりますが、進行しても視力や聴力、体の感覚に異常はなく、多くは認知機能に異常が出現しません。
つまり、ALSのクライアントは徐々に身体が不自由になっていく自分自身の状況をはっきりと自覚できるにも関わらず、身体が思うように動かせず、自分の言葉で意思を伝えられない状況にあるということです。しかし、近年ではパソコンと連動した意思伝達装置(重度障害者用意思伝達装置)を使って自身の言葉で意思を明らかにできる時代になってきています。
ALSクライアントの大半は、自宅での生活を継続すると同時に家族の負担が軽減されることを望んでいます。
現実では家族が生活のほとんどをサポートしているという状況からの変化を望まれる方が多い印象です。
ALSの在宅介護を叶える重度訪問介護の現実
ALSを発症したクライアントの強い味方となるのが、障害福祉に基づく重度訪問介護です。
医療的ケアにも対応したサービスを24時間体制で提供することができる重度訪問介護は、ALSの在宅介護と家族の負担軽減を可能にするサービスといえます。
しかしながら現実には、重度訪問介護を必要としている全てのクライアントに届けきることができていないという状況があります。
重度訪問介護事業所の不足
重度訪問介護が広く普及しないことの理由の一つが、重度訪問介護に対する介護報酬の低さです。
重度訪問介護は居宅介護と比較して、低単価に設定されています。
居宅介護と比較しても長時間のサービス提供が必要であるにも関わらず、サービスの内容を考慮しない介護報酬の設定がなされていることにより、事業者による重度訪問介護参入の壁となっている現実があります。
自治体における認識の低さ
重度訪問介護は訪問型介護に含まれる介護サービスとして、介護報酬のうち国による負担分が50%、都道府県と市区町村の負担分がそれぞれ25%の負担率となっています。
しかしながら重度訪問介護の場合は1日あたり8時間を超えた支給に関しては、原則として市区町村が負担することになっていて、重度訪問介護の利用者が増えることは市区町村にとって財政上の負担になるという現実があります。
そのため介護サービスの支給量を決定する際に重度訪問介護の利用が積極的に認められないという課題があると指摘されています。
ALSの介護の現実を変えるため、ホームケア土屋は挑戦を続けます
ALSの介護における現実をご紹介させていただきました。
現実においてALSの介護はクライアントファーストの考え方で推進されているとはいえず、まだまだ課題が山積みとなっています。 ホームケア土屋では47都道府県の全てに重度訪問介護の事業所を展開し、ALSのクライアントを含めて本当に重度訪問介護を必要としている方の意思に寄り添い、必要なサービスを提供させていただきます。