重度訪問介護と訪問介護と居宅介護の違いは?サービスの違いを解説します
近年、在宅(自宅)で医療介護サービスを受ける方が増加しています。
数年前(数十年前)までは、医療サービスといえば病院で受ける、介護サービスといえば介護施設で受けることが一般的でしたが、技術の進歩やテクノロジーの発展により、自宅でも高品質なサービスを提供できるようになりました。
しかし、自宅で行われる介護支援に対しては様々な制度や法律があり、それぞれの制度に則ってサービスを提供していく必要があります。
そこで今回は、「重度訪問介護」、「訪問介護」、「居宅介護」といった、非常に似通った名前の3つのサービスについて、その違いをわかりやすく解説していきます。
訪問介護と居宅介護ってなにが違うの?
「住み慣れた自宅で過ごす」ということの重要性が認知されるにつれて、年々訪問介護や居宅介護のニーズが高まっています。
訪問介護も居宅介護も「クライアント宅(自宅)で介護サービスを受ける」という部分は同じなのですが、制度や枠組みが異なるため、提供可能なサービスの詳細は別物となります。
まずは、訪問介護と居宅介護というふたつの介護サービスについて詳しく解説します。
訪問介護とは?
厚生労働省によると、訪問介護とは、「訪問介護員等が、クライアント(要介護者等)の居宅を訪問し、入浴・排せつ・食事等の介護、調理・洗濯・掃除等の家事等を提供するものをいう」というように定義されています。
また、訪問介護は「介護保険法」で規定されており、「病気や加齢などによって介護が必要」となった方が介護サービスの対象となります。
訪問介護の対象者
訪問介護は介護保険法で規定されているように、「介護保険」の適応となります。
そのため、「介護保険の対象者」が訪問介護の対象者となり、具体的には下記に示すような方が訪問介護の対象となります。
- 65歳以上の第1号被保険者で要介護状態にある方
- 40~64歳の第2号被保険者で、特定疾病が原因で要介護状態にある方
居宅介護とは?
厚生労働省によると、居宅介護とは、「居宅において、入浴、排せつ及び食事等の介護、調理、洗濯及び掃除等の家事並びに生活等に関する相談及び助言その他の生活全般にわたる援助を行う」とされているため、訪問介護と同じようなイメージをもつ方も少なくありません。
しかし、居宅介護は、「障害者総合支援法」によって規定されている介護サービスであり、介護保険法の下で行われる訪問介護とは異なるサービスとなります。
居宅介護の対象者
訪問介護と居宅介護の大きな違いが対象者です。
主に「高齢者」が対象となる訪問介護とは異なり、居宅介護では「18歳以上の身体障害・精神障害・知的障害で障害支援区分1以上と認定された方及び18歳未満のこれに相当する障害児」が対象となります。
居宅介護では、条件を満たすことで18歳未満でもサービスの対象となるため、主に高齢者を対象としている訪問介護とは、クライアント像が全く異なるものとなります。
居宅介護のより詳しい対象者を以下にお示しします。
【居宅介護の対象者】
障害支援区分が区分1以上(障害児にあってはこれに相当する支援の度合)である者。
ただし、通院等介助(身体介護を伴う場合)を算定する場合にあっては、次のいずれにも該当する支援の度合(障害児にあっては、これに相当する支援の度合)であること。
(1) 障害支援区分が区分2以上に該当していること
(2) 障害支援区分の認定調査項目のうち、次に掲げる状態のいずれか一つ以上に認定されていること
・「歩行」全面的な支援が必要
・「移乗」「見守り等の支援が必要」「部分的な支援が必要」又は全面的な支援が必要
・「移動」「見守り等の支援が必要」「部分的な支援が必要」又は全面的な支援が必要
・「排尿」「部分的な支援が必要」又は全面的な支援が必要
・「排便」「部分的な支援が必要」又は全面的な支援が必要
重度訪問介護とは?
次に「重度訪問介護とは何か?」を解説していきます。
重度訪問介護は、訪問介護や居宅介護と似た名前なのですが、対象者や支援内容が異なります。
そもそも重度訪問介護とは、「重度の障害で常に介護を必要とする障害児・者に、比較的長時間にわたり、日常生活に生じる様々な介護の事態に対応するための見守り等の支援とともに、食事や排せつ等の身体介護、調理や洗濯等の家事援助、コミュニケーション支援や家電製品等の操作等の援助及び外出時における移動中の介護を、総合的かつ断続的に提供されるような支援を提供する」サービスです。
居宅介護との違いが分かりにくい部分ではありますが、居宅介護と重度訪問介護には以下のような様々な違いがあります。
- 1回あたりの支援時間の違い
- 支援の空白時間の違い
- 支援を受ける対象者の違い
- 支援内容の違い
【重度訪問介護と居宅介護の違い】
重度訪問介護と居宅介護の違いをまとめた詳細はこちらの記事をご確認ください。
重度訪問介護の対象者は?
重度訪問介護の対象者は、「障害支援区分4以上で、二肢以上に麻痺があり、歩行、移乗、移動、排尿、排便、のいずれも支援が不要以外となっている方」です。
居宅介護の対象者が「障害支援区分1以上」と規定されていることを考えると、その名の通り、重度訪問介護の方がより障害の程度が重度の方を対象としていると言えます。(必ずという訳ではありません)
重度訪問介護の対象となるような重度障害を抱えている方であったとしても、居宅介護の支援を受けることもできますので、クライアントに応じて最適なサービスを提供していることが重要です。
重度の障害であれば必ず重度訪問介護を受けなければならないというわけではありません。
様々な福祉サービスの中から最適な支援方法を見つけ出し、より良い形で提案・提供していくことも、介護福祉サービスの提供者に必要なスキルといえます。
【在宅医療】訪問系の医療サービス
介護の分野からは少し離れますが、訪問系の「医療サービス」にも様々なものがあります。
介護だけではなく、医療の分野であっても、できるだけ自宅でサービスの提供を行うという考え方が浸透しており、「在宅医療」が日々進歩しています。
介護と医療の密な連携は高品質な医療福祉サービスの提供には欠かせません。
ご自身が担当しているクライアントやご家族、その支援者の方によって必要としているサービスは異なります。
一人ひとりに対してオーダーメイドな支援を提供できるように、介護福祉系のサービスだけではなく、医療サービスに関する情報を把握しておくことも重要です。
参考までに、在宅医療系サービスの一覧をお示しします。
クライアントのQOLを上げるための知識のひとつとして、しっかりとインプットしておきましょう。
- 往診(訪問診療)
- 訪問看護
- 訪問歯科診療
- 訪問歯科衛生指導
- 訪問リハビリテーション
- 在宅訪問薬剤管理指導(訪問服薬指導)
- 訪問栄養指導
重度訪問介護と訪問介護と居宅介護の違いを理解しましょう
今回は、訪問介護と居宅介護の違い、重度訪問介護とは何か、といった内容を解説しました。
どのサービスも「クライアント宅」で行われる、いわゆる「在宅系」 の介護福祉サービスなのですが、対象者や支援内容が異なります。
クライアントお一人おひとりにとって最適な支援を提供していくためにも、それぞれの制度を正しく理解し、より良いサービスにつなげていきましょう。