医療的ケア児と重症心身障害児の違いって?ポイントは医療的ケアの必要性

医療的ケア児と重症心身障害児の違いって?ポイントは医療的ケアの必要性

「医療的ケア児」、そして「重症心身障害児」について、皆さんはご存じでしょうか。

児童発達支援や障害福祉サービスを提供していくなかで、医療的ケア児と重症心身障害児はどちらも支援の対象ではありますが、大きな違いがいくつかあります。

またこの両者を混同して理解していると、サービスの提供体制や人員配置に大きなズレが生じてしまいます。

そこで今回は、アテンダントとして理解しておきたい医療的ケア児と重症心身障害児の違いについて分かりやすく解説していきます。

今後、障害福祉のサービスや児童発達支援に関わりたいと思っている方はもちろんのこと、介護業界や訪問看護に携わるアテンダントにとっても納得の内容になっていますので、最後までご覧くださいね。

目次

医療的ケア児とは

医療的ケア児は、人工呼吸器や胃ろうなどに代表される医療機器や、経管栄養やたんの吸引といった医療処置などを日常的に必要としている児童のことです。

特に近年の日本では周産期医療を中心とした医療技術が飛躍的に発展を遂げており、妊娠中や出産直後に疾患やトラブルを抱え、本来であれば助かることのなかった小さな命をつなぐことができる時代にあります。

発展した医療技術によりこの世に生を受けた新生児の多くは、NICUや小児科への入院を経て、自宅で生活をスタートさせますが、疾患や持病によっては医療機器の使用や医療処置のサポートを、24時間365日欠かすことができません。

知的な遅れは必ずしも併発するわけではなく、医療的ケアを必要としている以外は他の児童と同様に、話したり授業を聞くことができたりする児童も珍しくありません。

重症心身障害児とは

重症心身障害児は、重度の肢体不自由と重度の知的障害とが重複した状態の児童です。

医療的ケア児と同様に医学的な診断名ではなく、児童福祉上の定義名称となっています。

症状は一人ひとりのクライアントごとに個人差がありますが、ほとんど寝たきりで自力での移動が難しい状態、また自力での排泄や固形の食事を取ることが難しいというケースが多くなっています。

重症心身障害児に認定される症状の発症原因はクライアントによって様々ではありますが、生理的要因・病理的要因・心理社会的要因のいずれかが関係しているのではないかと考えられています。一例は以下の通りです。

  • 妊娠中のトラブル……胎内感染症の発症・脳奇形・染色体異常など
  • 出生児のトラブル……分娩異常・低酸素・極小未熟児・重症仮死産など
  • 周生期以降のトラブル……日本脳炎などの中枢神経感染症の発症や、てんかんなどの症候性障害の発症など
  • 事故の後遺症……幼児期の溺水事故や、交通事故の後遺症など

医療的ケア児と重症心身障害児の違い

医療的ケア児と重症心身障害児の最も大きな違いが、医療的処置が必要か否かの点になってきます。

医療的ケア児は先ほどご紹介した通り、医療的ケアを欠かすことのできないクライアントです。

具体的には以下のような項目にに該当する医療行為を必要としています。

  • 気管切開の管理
  • 喀痰吸引の実施
  • 経管栄養の管理
  • 人工呼吸器の管理
  • 咽頭エアウェイの管理
  • ネブライザーの管理
  • 酸素療法の実施
  • 中心静脈カテーテルの管理
  • 皮下注射
  • 血糖測定
  • 継続的な透析
  • 導尿
  • 排便管理
  • けいれんがおこった場合の座薬挿入や吸引、酸素投与、迷走神経刺激装置の作動等の諸処置

またこれらの医療的ケアを必要としていながらも、集団生活を送ることのできる体力や学力を有しているクライアントも少なくありません。

医療的ケア児の場合は自宅での医療的ケアに加えて、社会生活においても十分な支援体制を必要としているケースが多くなっています。

対して重症心身障害児は、寝たきりや肢体不自由などの症状があるものの、人工呼吸器などの医療機器もしくは医療的ケアを必要としていません。

重症心身障害児にとって必要なサポートは、主に自宅での排泄・入浴の介助や体位変換など、身体介助が中心になります。

また外出時や通院時などの医療支援も欠かせません。

重症心身障害医療的ケア児の存在

重度心身障害児の症状が進行し、経管栄養や胃ろうなどの医療的ケアが必要になってくると「重症心身障害医療的ケア児」に該当する可能性があります。

重度の心身障害が進行し、経管栄養や人工呼吸器などの必要が生じた段階の児童を意味しています。

そのため重症心身障害医療的ケア児に対しては、身体介助や医療的ケアに関わらず、複合的なサービスの提供が必要です。

医療的ケア児と重症心身障害児の受け入れ

児童発達支援サービスに基づいて医療的ケア児と重症心身障害児を受け入れる場合、看護師の配置体制が鍵となってきます。

医療的ケア児は医療デバイスや医療処置を必要としており、先ほどご紹介した医療的ケアを欠かすことができません。

そのため児童発達支援において医療的ケア児を受け入れるためには、看護師の加配を欠かすことができないのです。

そのため2021年度からは、医療的ケア児に対する基本報酬が引き上げられています。

医療的ケア児の基本報酬

看護師の加配が必要となる医療的ケア児は、児童福祉法によって定められた医療的ケアスコアを参考に区分分けされます。

医療的スコアが0の場合は重症心身障害児などと同様の基本報酬になりますが、例えば3時間以上の放課後等デイサービス(定員10人)の場合は、以下のような基本報酬になります。

医療的ケアスコア医療的ケア区分報酬配置割合
なしなし604単位規定なし
3点以上11,271単位医療的ケア児3:看護職員1
16点以上21,604単位医療的ケア児2:看護職員1
32点以上32,604単位医療的ケア児1:看護職員1

医療的ケア児と重症心身障害児の違いは医療的ケアの有無。必要なサービス提供体制が違うので、要チェック

医療的ケア児と重症心身障害児の定義と違い、そしてサービスの提供体制に生じる違いを中心にご紹介いたしました。

児童福祉支援や障害福祉サービスのなかで混同されやすい医療的ケア児と重症心身障害児ですが、それぞれが必要としている支援の内容は大きく異なります。

またサービスを提供する上でも必要な体制などに違いが生じますので、しっかりと確認しておきましょう。

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