重度訪問介護サービスは同居家族がいても利用できる?利用条件や注意点を解説
重度訪問介護は、1日24時間365日の利用を認められている福祉サービスです。吸引などの医療的処置が必要な場合も利用でき、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や筋ジストロフィーなどの難病の方でも、ご家族の介助を必要とせずに一人暮らしが可能です。
一般的に重度訪問介護についてはあまり認知されていないため「重度障害者が自宅で生活する」というと“同居家族が介護をすることが前提”と考える方も少なくありません。そして、家族が昼夜付きっきりで介護をするために仕事を辞めたり、介護負担が大きくなり精神的に追い詰められてしまったりして介護うつを発症するケースがあります。
そういった事態を防止するため、福祉サービスとして重度訪問介護の支援が国から認められています。重度訪問介護を活用することで、ご家族に介護負担を掛けることなく、重度障害者が自宅で生活することができるのです。
今回は同居家族がいる場合の重度訪問介護サービスについて、利用条件や注意点などを解説します。
重度訪問介護とは
重度訪問介護は、障害者総合支援法で定められている障害福祉サービスの中で「介護給付」に分類されているサービスです。
難病や脊髄損傷などによる重度の肢体不自由者、または重度の知的障害や精神障害により常時見守りや援助が必要になる方が対象です。障害支援区分については、以下のような条件をクリアする必要があります。
- 障害支援区分が4以上
- 二肢以上に麻痺等がある
- “支援が不要”以外の認定もしくは12項目の行動関連項目の合計点数が10点以上 など
サービス内容としては、直接クライアント(利用者)の自宅に訪問し「食事や入浴、排泄などの身体的介護」や「掃除・洗濯・炊事などの家事援助」「生活におけるさまざまな相談やアドバイス」などを行います。そのほかにも外出支援や見守りなども支援内容に含まれており、時間の制約なく24時間365日長時間の利用が可能です。
重度訪問介護を利用するにあたって同居家族がいる場合
同居家族がいるクライアントが重度訪問介護の支援を受ける場合、サービスの提供に関して家族の状態が重要です。
家庭ごとの事情に応じて提供可能なサービス範囲が異なるためです。
ここでは主に「身体介助」と「生活援助」に分けて掘り下げていきます。
身体介護
重度訪問介護のクライアントは、同居家族の有無に関係なく「身体介護」のサービスが利用可能です。
排泄処理や入浴、食事など日常生活に欠かせない様々なADLに関する介助サービスをクライアントに対して直接的に行います。
生活援助
「生活援助」に関しては、原則として同居家族がいる場合、その家族での対応が可能と判断されるため、サービスの提供が認められていません。
しかし、同居する家族が“障害・疾病その他やむを得ない理由”があり、家事動作を行えない事情があると判断された場合は、市区町村からサービスの提供を認められることがあります。各市区町村に判断がゆだねられており、基準が明確に設けられているわけではありません。
よって、一概に“障害・疾病その他やむを得ない理由”について明記することはできませんが、下記のような事例が具体例として挙げられます。
- 同居家族が仕事などの理由で不在時間が長く、事実上独居に近い状態になっている
- 同居家族が「要支援・要介護」もしくは重度の障害や持病があり家事動作困難
- 同居家族が明らかに介護疲れを抱えており、精神的に追い詰められている
- 同居家族との間に溝があり、介護放棄や虐待などが予測される
※「同居家族に頼みにくい」「同居家族が家事未経験」などの理由だけでは“やむを得ない理由”として認められません。
また、複数の同居家族がいる場合、上記理由に該当する人がいても「家事分担すれば日常生活を賄うことができる」と判断される可能性があります。もしそのように判断された場合は「生活援助」サービスの対象から除外されます。
「生活援助」を依頼する際、同居家族がいる場合の注意点
一人暮らしの方が重度訪問介護を利用する場合は制限なく「生活援助」を受けられます。
しかし、同居家族がいる場合、どこまで「生活援助」を受けられるか、についてはその家庭ごとに異なります。家庭の事情を踏まえて、事前に担当の介護支援専門員(ケアマネージャー)と情報共有することが大切です。
サービス提供が不可となる一例
重度訪問介護が適応されるクライアント本人以外、同居家族と共用する箇所の清掃はサービス提供が認められていません。また、同居家族との共用部分に関しては、家族での清掃・管理が可能と判断されるため「生活援助」の対象になりません。
市区町村の判断により、下記のような事例では「生活援助」のサービス提供が可能になる場合があります。
- 同居家族の不在中にクライアントが失禁した箇所の清掃
- 同居家族が仕事で不在時間が長く、衛生環境を維持することが難しい
市区町村が個々の事情に応じて臨機応変に判断するため、同居家族の生活実態を含めてなるべく詳細に現状を伝えるようにしましょう。
住まいの市町村によって最終的な利用可否が決定する
「生活援助」に関しては、同居家族がいる場合、居住地の市区町村で“どこまでのサービス提供が可能か”判定されます。つまり、市区町村で認められない限り、生活援助の支援を受けられません。
ちなみに、介護保険でも訪問介護サービスはありますが、こちらも介護保険の適応の有無について市区町村の許可を得る必要があります。重度訪問介護とは異なり時間の制限もあるため、“どの程度の生活援助が受けられるのか”事前に確認しておきましょう。
同居家族がいることで生じる重度訪問介護の制限
重度訪問介護にてクライアントの自宅を訪問して介護サービスを提供する支援は、クライアントの身体に直接触れる「身体介護」と日常生活に必要な家事を行う「生活援助」に分けられます。このうち、クライアントに直に提供される「身体介護」は、同居家族がいてもサービスの利用が可能です。しかし「生活援助」に関しては、特別な事情がない限りサービスの提供が認められていません。
市区町村に判断がゆだねられているため、重度訪問介護を利用する際には、事前に家庭の事情についての情報を詳細に提示するようにしましょう。