重度訪問介護(障害福祉制度)や介護保険制度の利用の始め方「どうやって使い始めるの? 使い方すごく違うの?」
今回のテーマは、「重度訪問介護(障害福祉制度)」や「介護保険制度」等の、いわゆる公的支援サービスの利用のはじめ方、どのようにしたら、使えるようになるのか。そういったことをテーマとして、話を進めていきたいと思います。
(序)はじめに(第8回目と第7回目の振り返り)
直前の回数の第8回については、当該回の中でも最初に書いた通り、予定していたテーマ(すなわち今回)の振り返りなどや、挨拶文などを書き進め、本来のテーマについて書き始めた時に、振り返った時に、連載させて頂いている、この【 障害福祉サービスの基礎知識シリーズ 】についての「連載スタンス」のようなものや、読む際の「かんどころ」のようなものについて触れたことがないことに気づき、特別に「補う回その一」として、回を立てて、掲載させて戴きました。
今後も、何かしらのテーマで、テーマに直接関わることや大所高所からみて、「補う」こともあろうかと思い、直前の回を別分けして「補う回」として、立てさせて頂いたわけです。
そこでは、最も大切な事柄として、
★興味をもって学ぶことの大切さ(学んだことについての考え方や思考法の大切さ)
★学ぶこと(学んだこと)について身についていく「経験知」の大切さ
★学んだ「知識や経験など」について「なぜそのようになるんだろう」というような、様々な観点から「自らの頭で考える=思考する」の大切さ
について、恥ずかしながら、自分自身の実体験を交えながら、「徒然なるままに」書かせて戴きました。
と同時に、
★今まで“つれ”てこなかった基礎知識シリーズについての「連載スタンス」や「読み方」などについても、書かせて戴きました。
読み方次第によっては、直接的には、各種の福祉に関する試験について直接的には記載されていないものの、情報としては、制度分野に限定されますが、試験に使えたり、「試験を受けるに当たっての知識の理解のために必要な情報を備えている」ということについても、書かせて戴きました。
読者の皆様におかれましては、以上のような★印の要点を踏まえながら、前回までの分も、今後の分も、この連載を通じて、心の隅において戴きながら、お読み頂ければ、筆者としては、とても有り難く存じ上げます。
さて、更に前の第7回についてのまとめとなりますが、
★「重度訪問介護と介護保険制度の緊密さ」をテーマとして、双方の制度についてのそれぞれの制度の運用あるいは制度自体の特徴の違い
について記載させて戴きました。
加えて、どのような状況になったら(どのようにしたら)、双方の制度について、利用できるのかについて、記載させて戴きました。
障害福祉サービスとしての重度訪問介護制度だけでも必要な状況になれば利用できますし、介護保険制度による支援サービスについても同様に必要な状況になっているのであれば、介護保険による支援サービスを利用できることも記載させて戴きました。
そして何より双方の制度についての大前提となっている。
★介護保険優先制度=身体障害者手帳を保有するなど障害福祉制度を利用できる状況にありながら、介護保険制度も利用できる状況にある場合、まずは介護保険制度を優先して利用すること
こういったことについても、私の母親の事例を加えながらですが掲載させて戴きました。
第7回の記事の中でも触れましたが、
「障害福祉制度としての重度訪問介護によるサービス、そして介護保険制度としての公的支援サービス、必要な状況に応じて、きちんとした手続きを踏みながら、同時に併用できる」
ことについても、明確にさせて戴きました。
読み返すに当たっては、第7回の記事の中だけでも良いので、「重度訪問介護(障害福祉制度)」と「介護保険制度」を、それぞれ比較しながら、「なぜそうなるのだろう。どのような状況だと、使えるようになるのだろう」というように、理由づけなどについて考えながら、お読み頂ければ、よりよく理解できるんではないかと、存じ上げます。
ここまでが、第8回目と第7回目の、ざっくりとした「まとめ」となります。
以降については、今回の本来のテーマである、
「重度訪問介護(障害福祉制度)や介護保険制度の利用の始め方」について、記載していきたいと思います。どのように行動したら、それぞれの公的支援サービスを受けることができるのかという話です。
ちなみに、なぜ「重度訪問介護(障害福祉制度)」と「介護保険制度」の両方について、双方の利用の開始について、テーマとして取り上げた理由を述べたいと思います。
前々回の第7回目のところで、両方の制度が深く緊密な関係にある事を説明しました。
と同時に、双方の制度の利用の開始の部分についてであろうと、「利用開始」という同じ部分についてではありますが、「制度による違い」の有無について、読者の皆様が、意識しながらお読み頂けることが大事と考えました。
よって「なぜ違うか。なぜ同じか」を比較検討しながら、考えながら、読むことができると筆者としては考えております。
特に制度に関して、理解しようとするときは、そこは私の専門なのですが、「似ている制度がある場合は、比較しながら考える」ことや、同じ制度が、例えば海外などに存在するときなどは、自分の国の制度と海外の制度を「比較検討」してみるということが、理解に繋がったり、理解を深めることに資することはあります。そのように考えてみるようにと、教えられる時もあります。
あるいは、同じ制度であったとしても、「今の制度のあり方」と「(多少を昔からある場合)昔の制度のあり方」を、比較してみるという学び方もおこなったりします。
読者の皆様は、「制度の専門家」ではないと存じます。だからこそ、その理解について、学び方について、さっくりだとしても、触れてみることは、良いことであっても、悪くない事であると、筆者は考えます。
誰しも、「学び始め」という時代があるものです。私もそういう時代がありました。というか、今もって、「学び続けることが必要」であると常々、自分の知識の足りなさを自覚する時はあります。
だからこそ、「初めて学んだときの、教えられたこと」を、大切にしながら、今でも学び続けております。
読者の皆様におかれましても、「比べてみるということ」を、おこなってみることを、ここで試してみて頂ければと存じます。堅苦しくなく、単純に、同じような部分を、読み比べてみるという感じで良いです。それだけです。
同じことを2回あるいは3回と繰り返し行うことは、何気に苦痛です。私もです。ですがそれが、「学ぶ」の語源といわれる「真似る」という事だと、私は理解しております。何度も練習して、真似る練習をして、技術なり知識を学んでいくのだと存じます。
そのような理由で、二つの制度についてのテーマの取り上げ方をおこなった次第です
では始ましょう!
(Ⅰ)重度訪問介護(障害福祉制度)や介護保険制度の利用したいのだけれど、どうする?
(1)重度訪問介護(障害福祉制度)や介護保険制度の利用の「法律上の『窓口』」
そもそも論ですが、重度訪問介護(障害福祉制度)や介護保険制度は、「障害者総合支援法」や「介護保険法」などの法律で、実施されるものであります。
そこで、それぞれの法律を改めて、確認してみます。すると・・・
●障害者総合支援法
第二条 (市町村等の責務)
1 市町村(特別区を含む。以下同じ。)は、この法律の実施に関し、次に掲げる責務を有する。
2 都道府県は、この法律の実施に関し、次に掲げる責務を有する。
3 国は、市町村及び都道府県が行う自立支援給付、地域生活支援事業その他この法律に基づく業務が適正かつ円滑に行われるよう、市町村及び都道府県に対する必要な助言、情報の提供その他の援助を行わなければならない。
4 国及び地方公共団体は、障害者等が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービス、相談支援及び地域生活支援事業の提供体制の確保に努めなければならない。
●介護保険法
第三条 (保険者)
1 市町村及び特別区は、この法律の定めるところにより、介護保険を行うものとする。
2 市町村及び特別区は、介護保険に関する収入及び支出について、政令で定めるところにより、特別会計を設けなければならない。
以上のように、障害者総合支援法の第二条の第1項において「市町村は(略)この法律の実施に関し(略)責務」を有するとして規定し、第一号から第三号にかけて「障害者が(略)必要な自立支援給付及び地域生活支援事業を総合的にかつ計画的に(略)必要な情報の提供を行い、並びに相談に応じ(略)その他障害者等の権利の擁護のために必要な援助を行うこと」と定めています(各号をまとめての表現)。
続けて同法第2項において「都道府県は(略)この法律の実施に関し(略)責務」を有するとして規定し、第一号から第四号にかけて「市町村が行う(略)事業が適正かつ円滑に行われるよう(略)市町村と連携を図りつつ(略)、専門的な知識及び技術を必要とするもの(略)市町村に対する必要な助言、情報の提供その他の援助を行う(略)」と定めています(各号をまとめての表現)。
更に同法第3項及び第4項において「国は、市町村及び都道府県が行う(略)この法律に基づく業務が適正かつ円滑に行われ(略)必要な障害福祉サービス、相談支援及び地域生活支援事業の提供体制の確保に努めなければならない」と定めています(第3項及び第4項をまとめての表現)。
このように、障害者総合支援法第2条によって、第1項により「市町村のなすべき事」、第2項により「都道府県がなすべき事」、第3項及び第4項により「国がなすべき事」が明確に定められております。
その中でも、「市町村のなすべき事」が直接の事業などを行うことを定めているので、今回のテーマにあるような「窓口」は市町村の担当部局という事になります。
読者の皆様も、市役所や町役場、村役場など様々なお役所に赴いたことがあると存じますが、例えば、「障がい福祉課(係)」などの名称の担当窓口が存在すると思います。そこが、重度訪問介護等の制度を利用するための「最初の相談窓口」のような形と言えます。
とはいえ、障害福祉のための担当窓口の名称は、それぞれの役所で、若干違う名称を使うことはままあります。名称が似通っているからといって、担当業務などが、必ずここで記載したような形に、それぞれの自治体の組織構成上で、違いがあるかもしれません。
そういった時は必ず、「総合窓口(担当部署を教えてくださる窓口)」がありますので、そういったところに、ご相談することもあり得るでしょう。
その上で、現実的には、ほとんどありえませんが、都道府県についても、相談すれば、担当部署について、誘導してくださると存じます。
打って変わって、介護保険法についてですが、第3条において、「市町村は、この法律の定めるところにより、介護保険を行う(略)介護保険に関する収入及び支出について(略)特別会計を設けなければならない」と定めており、市町村主体で、行うことが明記されており、そこから見ても、「市町村」のお役所が、一番最初の「窓口」となり得ることが、わかると思います。(第1項及び第2項をまとめての表現)。
介護保険法においても、都道府県についての定めも存在しつつ、国としても厚生労働省が関わるわけなので、障害福祉と同じように、現実的にはほとんどありえないと言えど、介護保険制度を利用したい時に、「全く教えない」と言うことは、ないと思います。
とはいえ、市町村が、最初の窓口であり、先程の障害福祉と同じように担当部署がわからないときは、「総合窓口(担当部署を教えてくださる窓口)」があるわけなので、そこに相談して誘導してもらうことが大切だと思います。
なお、障害者総合支援法においても、介護保険法においても、他の条文が沢山存在し、福祉に関する他の法律などでも、「相談」という言葉が、様々なところで出てきていると思います。ここでいう「相談」の先も窓口と言えますので、「役所等」ばかりが「窓口」ではないということは、明記しておきたいと思います。
(2)他の相談「窓口」として、どのようなものがあるのだろう
まず障害福祉制度に関しては、例えば、身体障害の場合、「身体障害者福祉法」というものがあり、その法律の中で、「身体障害者更生相談所」というものを都道府県で設置することが義務づけられています。
「身体障害者更生相談所」というものは、どちらかというと、より専門的で「福祉学的側面(生活)」という側面だけではなく、「医学的側面」や「心理学的側面」等の、より専門的な知見から、様々な相談に対して、アドバイスや援助を行うことを業務としております。
私の場合、電動車椅子ユーザーですが、電動車椅子の給付を受ける際には、原則として、「身体障害者更生相談所」の方に相談に行ってから、そのアドバイスを受け、その書面とともに、市町村等の担当部局に「電動車椅子の給付(補装具)の申請」を行います。
「身体障害者更生相談所」は、何も、電動車椅子の給付の時だけ、そういったことだけの相談を受ける場所ではないので、相談内容についての日程調整などは、各々の都道府県の「身体障害者更生相談所」によっての違いはあるかもしれませんが、多様な課題について、相談をすることができ、適切なアドバイスや援助を受けるように、支援して下さいます。
そういう意味でも、上の方で、先述した形のような「相談窓口」となり得るのです。別の法律によりますが、「知的障害者更生相談所」などというものも存在します。これは、知的障害者福祉法の第12条に基づいて設置されているものです。
他方で、介護保険制度の場合は、「地域包括支援センター」というものが、市町村内の各々の地区などに設置されることになっております。これは、介護保険法の第8条の2で定義づけられております。この「地域包括支援センター」というものは、
「それぞれの地域で連携して、高齢者の支援について包括的に支援する」
ということを趣旨とする目的で存在するものです。ですので、当然のことながら、今まで述べできたところの「相談窓口」にもなり得ます。
加えて、社会福祉法という法律が制定されてあり、その第一条で、目的として、
「この法律は、社会福祉を目的とする事業の全分野における共通的基本事項を定め、社会福祉を目的とする他の法律と相まつて、福祉サービスの利用者の利益の保護及び地域における社会福祉(以下「地域福祉」という。)の推進を図るとともに、社会福祉事業の公明かつ適正な実施の確保及び社会福祉を目的とする事業の健全な発達を図り、もつて社会福祉の増進に資することを目的とする。」
と規定しており、更に加えて、109条以下で、
- 市町村社会福祉協議会及び地区社会福祉協議会
- 都道府県社会福祉協議会
- 社会福祉協議会連合会
これらを設置することを定めております。これらを通称して、「社協」と通称することが多くありますが、これらの社会福祉協議会の方でも、相談することが可能です。よって、今までで言うところの「相談窓口」となり得ます。
一番大切なのは、それぞれの地域の、障害福祉あるいは介護保険制度に関わる公的機関あるいは民間機関と思われるところに、ご相談すること自体が、一番大切だと存じます。そういう意味では、この土屋の各事業所様にも相談することも、意味のある、大切な「相談の第一歩」だと考えます。
という事で結論、「法律上で(直接の)窓口の第一歩は、市町村である」ともいえます。
(Ⅱ)重度訪問介護(障害福祉制度)や介護保険制度の利用開始の手続きとは?
(1)重度訪問介護(障害福祉制度)の利用の手続き(流れ)
まず最初に、重度訪問介護等の障害福祉サービスの利用に至るまでの流れを、掲載したいと思います。
とても分かりやすく、まとめられているので、厚生労働省サイト内の
⇒【 障害福祉サービスの利用について 】
と題する PDF 書面の12ページから13ページにかけての引用となります。下の図の通りとなります。
それぞれ行うことについての説明を加えると、
1. サービスの利用を希望する方は、市町村の窓口に「障害福祉サービス」の利用についての申請を行い、受け付けをして頂くことになります。
2. 「障害福祉サービス」の利用の申請の受付が済んだら、市町村から来訪される「認定調査員」による「認定調査」を受けた上で、障害支援区分の認定を受けます。(通常同時並行で、主治医からの意見書も提出されることになります。)
3. 市町村は、「障害福祉サービス」の利用を申請した方(=利用者)に「指定特定相談支援事業者」が作成する「サービス等利用計画案」の提出を求めることになります。
※よって、利用者としては、「指定特定相談支援事業者」という事業所と契約し、その事業所に「サービス等利用計画案」という書面を作成してもらうことになり、その書面を市町村に提出することになります。
4. 市町村は、提出された計画案や、考慮すべき事項を踏まえつつ、障害支援区分の認定の結果を踏まえ、利用者の申請に対しての「支給決定」を行います。
5. 「指定特定相談支援事業者」は、支給決定された後に、サービス担当者会議を開催します。
6. 5 を行うための、障害福祉サービス事業者等との連絡調整行い、実際に利用する「サービス等利用計画」を「指定特定相談支援事業者」は作成します。
6. 7に基づき、障害福祉サービスの利用が、開始されます。
このような流れになります。
(2)介護保険制度の利用の手続き(流れ)
さて今度は、介護保険制度の利用に至るまでの流れを、掲載したいと思います。
とても分かりやすく、まとめられているので、厚生労働省サイト内の
⇒【 介護保険制度の概要 】
と題する PDF 書面の8ページからの引用となります。下の図の通りとなります。
なお、私が担当させて頂いている、「障害福祉サービスの基礎知識」のサイトは第1回目からのサイトは、ホームケア土屋のサイトの中にございます。以下の URL となります。
加えて、ホームケア土屋のサイトの中に「介護の知識」というサイトがあり、「重度訪問介護について」として、私とは違った視点での「重度訪問介護」についての解説が掲載されております。以下の URL です。
別の観点から、分かりやすく書いてあるので、こちらも読んで頂くと、理解が深まると存じます。重なる部分があったり、違った部分があったり、そのような差異について注意しながら、読み込んでみると、理解が進むと思います。
私自身も、拝読させて頂いておりますので、皆様も、ご一読を。
当HP【 土づくりレポート9月号 】にて、齋藤直希さんをご紹介しております。
行政書士有資格者、社会福祉主事任用資格者
筆者プロフィール
1973年7月上山市生まれ。県立上山養護学校、県立ゆきわり養護学校を経て、肢体不自由者でありながら、県立山形中央高校に入学。同校卒業後、山形大学人文学部に進学し、法学を専攻し、在学中に行政書士の資格を取得。現在は、「一般社団法人 障害者・難病者自律支援研究会」代表。