医療的ケア児が増え続けているって本当?医療的ケア児の現状をわかりやすく解説します
皆さんは「医療的ケア児」というワードを耳にしたことがありますか?
医療的ケア児はその名の通り、医療的なケアを日常的に必要としている0歳から18歳未満の児童の総称です。
法律上は「人工呼吸器を装着している障害児、その他の日常生活を営むために医療を要する状態にある障害児」と記されています。
厚生労働省の調査によると、在宅での医療的ケアを必要としている医療的ケア児は2005年時点で約1万人と推計されていましたが、2022年には約2万人にまで増加しています。
総務省の統計によると15歳未満の子供の数が40年以上減少を続けており、そのような状況下での医療的ケア児が増加傾向にあるということは、医療的ケア児を支える社会システムや制度の充実が今後より一層必要になってくると考えられます。
今回の記事では、医療的ケア児を取り巻く環境について分かりやすく説明していきます。
【参照】
医療的ケア児について(厚生労働省)
統計トピックスNo.128 我が国のこどもの数 -「こどもの日」にちなんで(総務省統計局)
医療的ケアとは
そもそも医療的ケア児が必要としている「医療的ケア」とは、一体なんなのでしょうか。
医療的ケアは、生きていくために必要な医療的なサポートを意味します。
特に医療的ケア児に対して行われる医療的ケアは、本来であれば医師免許や看護師免許の保持者が行うべき医療行為を、指導を受けた家族がクライアントの自宅にて行うことを意味します。
法律上では、以下の医療的ケアが認められています。
- 気管切開の管理
- 喀痰吸引の実施
- 経管栄養の管理
- 人工呼吸器の管理
- 咽頭エアウェイの管理
- ネブライザーの管理
- 酸素療法の実施
- 中心静脈カテーテルの管理
- 皮下注射
- 血糖測定
- 継続的な透析
- 導尿
- 排便管理
- けいれんがおこった場合の座薬挿入や吸引、酸素投与、迷走神経刺激装置の作動等の諸処置
医療的ケア児を抱える家族の不安
先ほどご紹介した医療的ケアは、医療従事者以外の方はほとんど経験のない行為ばかりですよね。
しかしながら我が子が医療的ケア児となると、24時間体制で医療的ケアを行う生活が始まり、助けのない中で、退院前に指導を受けた方法で正しい処置を行うことになります。
ご家族のなかには自分の行う医療行為に対する不安はもちろんのこと、医療的ケアが必要ない子供に比べてより一層の責任感を感じてしまい、精神的に追いつめられてしまう方や、昼夜を問わない見守りによって肉体的に追いつめされてしまう方も少なくありません。
医療的ケア児の家族に対する支援の拡充が、医療的ケア児のなかでも最も大きな課題の一つです。
医療的ケア児が増加傾向にある要因
そもそもなぜ子供の人口が減少するなかで、医療的ケア児は増加し続けているのでしょうか。
医療的ケア児が増加傾向にある最大の理由は、新生児医療の充実であると考えられています。
以前の医療技術であれば妊娠中や出産時のトラブルによって命を落としてしまっていた赤ちゃんを助けることができる現代では、NICUに数カ月入院した後、自宅での医療的ケアを受ける傾向にあります。
今後も医療技術の発展に伴って、現状以上の未熟児や新生児を助けることができる世の中になるのではないかと考えられています。
医療的ケア児向けのサービス
実際に医療的ケア児を抱えるご家族は、どのようなサービスを利用しているのでしょうか。
わかりやすく説明していきますので、確認していきましょう。
- 障害児通所支援……自宅から日中の数時間を使ってクライアント自身が施設に通い、日常生活の基本的な動作や生活能力の向上を目的としたプログラムを受講します。未就学の児童は児童発達支援、就学児は放課後等デイサービス、そして肢体不自由などが認められた児童は医療型児童発達支援を利用します。
- 訪問支援……医療的ケア児が生活する自宅をアテンダントが訪問する形で提供されるサービスです。日常生活の困りごとを介助する居宅介護、訪問看護師による医療的ケアやサポートを行う訪問看護、医師による訪問診療や往診などが該当します。
- 相談支援……上記のようなサービスの利用計画を作成したり、利用申請をサポートしたりするのが、相談支援の役割です。計画相談支援と障害児相談支援の2種類のサポートがあります。
医療的ケア児向けサービスの課題点
現在の日本では、「医療的ケア児支援法」という法律が2021年に成立・施行となり、主に自治体が主導して社会全体で医療的ケア児の受け入れ体制を拡充していくことが定められました。
医療的ケア児と共生する社会を目指す上での明確な目標が設定されたことになりますが、現実的には学校や保育所に配置すべきアテンダントの人員が不足していたり、地域によって制度整備の進捗には格差が生じているのが実情です。
また地域格差という点では、先ほどご紹介した医療的ケア児向けのサービスを提供する事業所数も、都心部と地方では大きな差があります。
どの地域に暮す医療的ケア児であっても一人ひとりが必要としているサービスを適切に利用できる環境が整うこと、医療的ケア児に対してサービスを行うアテンダントの人員数が充足すること、そして地域全体で医療的ケア児に対する支援の意識をもった社会の実現こそが、今後の医療的ケア児に対する課題解決には必要です。
株式会社土屋グループは、今後も医療的ケア児に対する社会課題に向き合い続けます。
医療的ケア児をとりまく現状について、分かりやすく説明いたしました。
現在の日本は医療技術の発達により、多くの新生児や未熟児の命が助かる奇跡的な状況にあります。
医学の進歩で救うことのできた命を社会全体で支えていこうとする考え方こそが、医療的ケア児支援法の基本となっています。
株式会社土屋グループは介護業界のパイオニアとして、今後も医療的ケア児にとってのよりよい環境が実現するよう、問題をわかりやすく提起し、大きな声をあげてまいります。
医療的ケア児に関わらず、介護を必要とする全ての方の意思が尊重され、地域全体が一丸となって全ての方が過ごしやすい社会が実現するよう、日本各地での介護サービス展開をより充実させていきますので、医療的ケア児に対するサポートや重度訪問介護に興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。