重度訪問介護にも2時間ルールはある?ルールの内容と例外を紹介!
重度障がい者を対象として支援する重度訪問介護。
支援内容やそのルールが通常の訪問介護と異なる部分も多くあります。
そのひとつに「2時間ルール」があります。
この2時間ルールは、支援提供時間の法則や介護報酬の算定にも関わる重要な規定です。
今回は、この2時間ルールの内容とその例外についてご紹介します。
訪問介護の2時間ルールとは
訪問介護では、1日に同様の支援を複数回を受けるケースが多くあります。
2時間ルールとは、「それぞれの支援の間に2時間の空白時間を設けて提供しなければならない」というルールです。
もし2時間の空白時間が設けられていない場合、それは1回のサービスとして扱われます。
例えば、下記の様なイメージです。
①10:00と14:00 にそれぞれ訪問→2回のサービスとしてカウント
②10:00と11:00 にそれぞれ訪問→1回のサービスとしてカウント
では、このカウントの違いによってどのような影響があるのでしょうか。
この2時間ルールは、主に「介護報酬」のために存在しています。
介護報酬の考え方
介護報酬とは、クライアント(利用者)が支払う料金に直結するものです。
これは、サービスにかかる所要時間の「単位」によって算定されています。
なお、介護報酬で言う「単位」とは、サービスの種類や介護度・地域によって決められる点数のことです。
「単位×単価=介護報酬」ということになります。
■身体介護中心型
・20分未満:167単位
・20分以上30分未満:250単位
・30分以上1時間未満:396単位
・1時間以上1時間30分未満:579単位
・以降30分を増すごとに算定:84単位
■生活援助加算:67単位
■生活援助中心型
・20分以上45分未満:183単位
・45分以上:225単位
など
上記の単位に基づいて、先程の①②の例で「20分の身体援助」の提供だとして考えてみましょう。
①10:00と14:00 にそれぞれ訪問→2回のサービスとしてカウント
20分の身体援助:250単位を2回提供しているため、500単位が加算。
②10:00と11:00 にそれぞれ訪問→1回のサービスとしてカウント
40分の身体援助:396単位が加算
このように、2時間の空白を設けなければ、同じ40分の支援であったとしても報酬単位が減ってしまいます。
2時間ルールによって、事業所ごとの介護報酬の不正が減り、不平等性を無くすことができます。
このように、実際に提供されたサービスと報酬を正しく整合し、適切な単位が算定されるように設けられた規定が「2時間ルール」であるということです。
重度訪問介護では2時間ルールは扱われない
重度訪問介護は、通常の訪問介護と比較すると支援内容が柔軟で長期間にわたるサービスです。
通常の訪問介護では、事前に作成する「介護計画」通りにしかサービスを提供することができません。
一方、重度訪問介護では、この介護計画の内容を超えて、日常生活によって生じる様々な介護支援を柔軟に提供することができます。
この柔軟な支援サービスが、重度訪問介護で求められる重要な部分です。
この柔軟なサービスにおいては、空白時間についても明確な規定は存在しません。
つまり、重度訪問介護では2時間ルールは対象外となります。
重度訪問介護は、「空白時間の有無も含めて柔軟な支援である」ということです。
その他2時間ルールが適用にならないケース
重度訪問介護以外にも、2時間ルールが適用にならないケースがあります。
看取り期の訪問介護
人生の最期の時間を自宅で過ごし、家族と一緒に過ごしたいという方も多くいらっしゃいます。この場合、訪問介護によって看取り期を過ごすという選択をされることもあるでしょう。
看取り期では水分補給や体位変換などの対応頻度が高く、訪問回数も多く求められます。
その結果、令和3年の介護報酬改定で、看取り期の訪問介護について下記のように明記されました。
看取り期のクライアントに訪問介護を提供する場合に、訪問介護に係る2時間ルールを弾力化し、合算せずにそれぞれの所定単位数の算定を可能とする。
引用:令和3年度介護報酬改定における改定事項について(厚生労働省)
この改定によって、看取り期のクライアントに対しては、2時間ルールは適用されなくなりました。
サービス間の空白時間が2時間未満であっても所要時間は合計せず、提供したサービスそれぞれの単位数で算定することができます。
急訪問の場合
クライアントやその家族から緊急に依頼があり、介護計画外の訪問介護を行なうケースもあります。
この場合、1回あたり100単位の「緊急時訪問介護加算」が算定されます。
緊急時の訪問介護の場合は、その前の訪問からの空白時間が2時間未満であっても、所要時間は合算されません。
よって2時間ルールは適用外です。
指定訪問介護事業所の20分未満の身体介護
頻繁な訪問介護が可能な「指定訪問介護事業所」として認可されている事業所があります。
この場合、「20分未満の身体介護」のみ、空白時間が2時間未満であっても、所要時間を合算せずに単位数を算定することができます。
よって2時間ルールは適用外です。
介護従事者にとって2時間ルールはしっかりと理解しておきたいポイント
訪問介護における2時間ルールは、実際に訪問介護を行う介護従事者に必ず理解していただきたい規定です。
介護報酬の算定が変わってしまうと、事業所の収入や自分自身のお給料はもちろん、クライアントの負担額にも影響を与えてしまいます。
介護の現場では様々な状況が考えられますので、状況に応じて適切に対応できるようにしっかりと内容を理解しておきましょう。