医療的ケア児を取り巻く「不都合な」現実を見てください / 中村昌美

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医療的ケア児を取り巻く「不都合な」現実を見てください
中村昌美

近年の周産期医療の発達により、日本における出産や、新生児を取り巻く環境は世界的に見ても、トップクラスの水準と言われています。以前では助けられなかった多くの命が救えるようになった一方で、医療的ケア児は国内で約18,000人と、ここ10年で2倍に増えています。

私が医療的ケア児といわれている子ども達と初めて密に関わったのは今から8年前、2015年のことでした。

  • 日常的に痰の吸引が必要なお子さん。
  • 心臓疾患などから在宅酸素療法が必要なお子さん。
  • 食事を口から食べられないため、鼻からチューブを通したり、お腹に穴をあけて、胃に直接食事や栄養剤等を入れているお子さん。

上記のように医療的ケアが必要だったり、何らかの障害のあるお子さん達でした。医療的ケア児という呼ばれ方をされていますが、関わり続けて今思うことは、医療的ケア児は「日常的な医療的ケアが必要な子ども」なだけであり、それ以外は障害の有無に関係なくみんな同じ「子ども」だということです。

滑り台を滑るのが好きな子、絵本が好きな子、人の笑い声につられて笑っちゃう子、砂遊びが苦手な子、みんな当たり前に「好き」「嫌い」「得意」「苦手」があって、ノリにのってる日もあれば、なんだかイマイチ気分や体調が優れない日もある。

こんな風に可愛く愛おしい我が子だからこそ、ママやパパは24時間365日の育児に加えて医療的ケアも介護も何でもやってのけます。

お子さんによっては、夜間も医療的ケアが必要で、お子さんと一緒にママやパパも、ケアでほとんど睡眠がとれないまま翌日の朝を迎えることもあります。そして、翌日も通常通り兄弟児も含めた子育て、家事、仕事などの日常を過ごします。

このように、多くのご家庭のママやパパは「自分の子どもだから」と、当たり前にワンオペ育児や家族だけで子育てをしています。

子ども達の健康を願うのはもちろんですが、まずはママとパパが心身共に健康であることや、子育てや介護について気軽に相談できる環境が必要です。

ですが、保育園や児童発達支援事業の施設のうち、医療的ケア児が通える場所は限りなく少ないのが現状です。

理由としては、医療的ケアに対応できるスタッフを充分に配置することができず、安全性を確保できないからだそうです。そのため、24時間365日家族が一緒に過ごすこととなり、結果的にママとパパの睡眠も断続的になることで、身体的にも精神的にも健康を害してしまうことは十分に予想できます。

このように医療的ケア児が増加しているにも関わらず、受け入れることができる社会の仕組みになっていないのが、今の日本社会の姿です。医療的ケア児だけでなく、その親を支える仕組みも整っていないのが現実です。

親子が、住み慣れた地域や環境で生活し続けていかれるように。保護者が自分自身をも大切にできるような仕組みが整っていくように。そして、ひとりひとりが思い描く、「当たり前の社会生活」を送れるようになることを、私自身も思い描きながら福祉の仕事に携わり続けたいと思います。

プロフィール
中村昌美 ホームケア土屋 大宮

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