ALSを理由に24時間介護を利用したい。重度訪問介護の内容と費用は?
ALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症すると、運動神経の異常によって特定の部位を動かすことができなくなり、徐々に筋肉が萎縮します。
肢体を自由に動かすことができなくなり、呼吸や嚥下に関わる筋肉も萎縮することによって医療デバイスの使用が始まると、常時の介護が必要な状態になります。
ALSを発症したクライアントが同居する家族の負担を鑑みて、また独居という環境において24時間介護を必要とすることは可能なのでしょうか。
今回の記事ではALSのクライアントが24時間介護を利用する、つまり重度訪問介護を利用する際の内容と費用についてご紹介していきます。
重度訪問介護の条件
重度訪問介護は、障害福祉サービスの一種です。
重度訪問介護を利用できるクライアントは、常時の介護を必要としている方、具体的には以下の要件に当てはまる方に限定されています。
1.重度の肢体不自由者
①障がい支援区分が区分4以上、かつ二肢以上(両手足4ヶ所のうち2ヶ所以上)に麻痺等があること。
②障がい支援区分の認定調査項目のうち歩行・移乗・排尿・排便の全てが支援不要以外に認定されていること。
2.知的障害者・精神障害者
①障害支援区分4以上であること。
②障害支援区分の認定調査項目のなかで、行動関連項目12項目の合計点が10点以上であること。
ALSのクライアントは重度の肢体不自由者の条件に該当しますので、重度訪問介護の利用が可能になります。
重度訪問介護は24時間連続介護を受けることが可能な仕組みとなっていますが、実際にどの程度の支給量が認められるかは、居住する市区町村によって決定されます。
ALSのクライアント:24時間介護の内容
ALSのクライアントは24時間介護に該当する重度訪問介護を利用して、どのようなサービスの内容を受給しているのでしょうか。
具体的に重度訪問介護で肢体不自由のクライアントに提供される介護サービスは、以下の通りです。
- 身体介護……食事・排泄・入浴・更衣の介助、体位変換など、クライアントの身体に直接触れて提供するサービス
- 生活援助……調理・洗濯・掃除・ゴミ出しの代行、生活必需品の買い物代行、薬の受け取りの代行など、生命維持に必要な家事の援助を行う
- 移動介護……病院や役所など、生活に必要な外出の際に、移動の支援や移動中の介護を行う
- その他……生活等に関する相談や助言を行う
- 見守り……就寝中や日常生活のなかで、急変やイレギュラーの事態に備えて様子を見守る
ALSのクライアントに対する介護の特徴
ALSは進行性の病気で、運動神経に異常が生じる原因と根本的な治療法は見つかっていません。
そのため初期の段階ではリハビリや、なるべく自身でできることは自身で行っていただく介護サービスの提供によって、筋力の維持をサポートできるような内容の介護が中心となります。
症状が進行して気管切開に伴う人工呼吸器の使用がはじまったり、胃ろうの造設による経管栄養が始まると、医療的ケアも含めた介護サービスの提供が必要となります。
ただしALSという病気の特性上、特定の部位の筋萎縮は確認されていますが、肌の感覚や排泄の感覚とコントロール、また認知機能や意識・思考などは影響を受けない傾向にあります。
近年ではALSをはじめとする神経性難病のクライアント向けに開発された意思伝達装置が普及しつつあり、パソコンなどを介してALSクライアントの意思が確認できますので、意思疎通を行いながらの介護体制も広まりつつあります。
ALSのクライアント:24時間介護の費用
障害福祉サービスに該当する重度訪問介護は、基本的に公費によって24時間介護が利用できる仕組みとなっています。
そのため自治体によって支給が認められた限度以内の重度訪問介護利用であれば、自己負担は発生しません。
ただし所得が一定以上ある場合には、最大で37,200円までの自己負担が請求されます。
また障害福祉制度に含まれる24時間介護である重度訪問介護と並行して、介護保険制度で訪問介護や訪問入浴のサービスを利用する場合、介護保険サービス分は原則1割(所得が一定以上の場合は最大3割)の負担で利用することになります。
そして指定難病であるALSに認定されると、医療保険制度の自己負担は2割(特定の条件下では1割)となり、医療保険を利用して訪問看護や医療機関の受診を行っていくことになります。
ALSの24時間介護:内容や費用はどこに相談?
ALSを理由に24時間介護である重度訪問介護を利用したいと考えたときは、どこに相談すればよいのでしょうか。
ALSのクライアントの場合、最も身近な相談相手としてはかかりつけの病院に在籍している医療ソーシャルワーカーになります。
特に保険制度の利用などに関しては、費用に関する相談等も含めて対応してくれます。
また都道府県や指定都市には、難病相談支援センターが設置されています。
療養生活に関する相談医療相談・就労相談・公的手続きの相談支援などを、電話や面談などで対応してくれる機関になっていますので、ALSを理由に24時間介護を利用したい場合は難病相談支援センターに相談しましょう。
クライアントと家族を支える仕組み
また難病相談センターでは、ピア相談という同じ病気をもつクライアントや家族による相談の場を設けたり、クライアントと家族の交流会などを定期的に開催しています。
地域社会のなかでクライアントと家族が孤立することなく、社会の一員であるという肯定感を認識しながら生活ができるよう、サポートしています。
ALSの24時間介護。内容と費用を確認して、本人も家族も負担の少ない介護生活を
ALSを発症した際の24時間介護について、内容と費用を中心にご紹介させていただきました。
ALSは大衆的な病気ではありませんが、24時間介護を必要とする疾患であり、様々な社会制度の利用が不可欠です。
実際の重度訪問介護利用に関しては、47都道府県で事業所を展開するホームケア土屋でも相談を承っておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。