ぷくぷく姫のさえずり No.5「視覚障がい者の前での行為」前編 / 水島恵
「ヤンキー君と白杖ガール」は、昨年晩秋から冬にテレビ放映されたばかりで、みなさんの記憶に新しいところかと思います。
「最終回を見て、ほっこり、しみじみした」、「あっちもこっちもハッピーな展開でよかったー」、「泣けました。もう 終わっちゃったかと寂しいです。
いろんなことを伝えてくれた本当にいいドラマでした」と感想が聞こえてきました。
視覚障がい者や関係者からは、「視覚障害者のイメージを変えるような描き方でよかった。全盲でなく弱視者にスポットを当てたのは良かった」という評価もたくさん聞こえてきて、私も同様に感じています。
視覚障がい者への理解の幅が広がったのではと期待できました。
一方、私が最終回で感じたもやっと感と同様の感想も聞こえてきました。
最終回の前半、ゆきことヤンキー君が同じ結婚式場に出席しているのに、ヤンキー君はみんなに頼んで自分がここにきていることをゆきこさんに黙っていてくれと言いました。
ゆきこだけがヤンキー君が同じ会場にいることを知りませんでした。
「これって目が見えないことを利用した行為ではないでしょうか?ヤンキー君に悪意がないからそのまますぎていきましたが、わざわざみんなの口を封じて、自分がいないことにしてもらうなんて、ゆきこに失礼だと思うのですが。」と、知人で全盲の男性が感想を伝えてくれました。
私もこのシーンは不愉快でした。
このようなことを知ったとき、ゆきこは傷つき、悲しくなると思います。
私がゆきこだったら悲しくて傷つき、不愉快ですね。
私も色んな集まりに出ることがありますが、誰が来ているのか分からないままに終わることは多々あります。
これは見えないのだからしかたがない部分もあると思い割り切ったりしますが、わざわざ「彼女には私が来ていることを隠しておいてください」と参加者に頼む人がいたとしたら不愉快に感じます。
このようなシーンを見た時、何かを感じたり引っ掛かりを感じる人がどれだけいるでしょう?
悪意がない行為でも視覚障がい当事者だけが気づかない、わからない、知らされないという出来事を知人を通じて知った時、障がい者がかやの外に置かれた間隔を感じて悲しくなります。
私の経験や友人・知人の経験から例えば、
・知人が通勤のため朝、職場に向かって歩いていたら、誰かとすれ違ったそうです。その誰かは、知人より10メートルほど後から歩いてくる職場の方に挨拶をしたそうです。挨拶をした誰かは、知人もよく知る職場の人だったそうです。見えない知人には黙ってやり過ごしていたのに、目が見えている職場の方には挨拶をしたということです。
・知人が女性2人と話をしている時、2人の女性だけで何やらゼスチャーを入れながら合図しあっていたそうです。
・全盲同士数人で話し合っている場に誰か入ってきて、黙って出ていったそうです。
・教師をされていた知人が授業をしている教室を廊下側から運動場へ黙って通り抜ける人(おそらく同僚)がいたそうです。
・知人が本を読んでいる時、黙って知人の机の上に書類を置いていく人がいたそうです。忙しいのならそれを告げて行けばいいのにと知人は言っておられました。
私は本を読んでいる知人に気を遣ったのかもしれないと思いましたが、やはり黙って行かれると誰が何を置いていったのかわかりませんから不安とともに不便でもあります。
知人はこういったことは他の目の見える人がちゃんと見ていて、そっと知人に、それが誰だったか教えてくださるそうです。
視覚障がい者の前で汗をふいたり、頬を掻いたからと全て一々そんなことまで知らせてと言っている訳ではありません。
でも、その場にいる人には分かっていることを視覚障がい者だけが知らない状態というのは寂しく悔しいものです。
私は講演会や研修などの時、可能であれば司会者や隣席者に「何人くらいの参加者か?」「男女の比率は?」や年齢層を訊いてみたりしています。
視覚障がい者女性が一人で歩いていると、黙って触られたり蹴られたりすることもあるようです。
そんな事件や事故に巻き込まれたり、防犯のためにも、歩行者用のドライブレコーダーのようなビデオが欲しいです。これがあれば犯罪抑止につながると思いますし。
東京での事件ですが、知人の知人で視覚障がい者の方が駅の販売機で乗車券を買おうとして財布を出したところ、財布を盗まれたそうです。一瞬の出来事で、声も出せなかったようです。
視覚障がい者でなければ犯人の体型や顔や髪型・年齢層・服装など情報があるのに、見えないために情報が得られないことを分かってか狙われやすいのだと思います。
私は、地元でバスや電車に乗る時も県外へ行くのに沢山荷物を持っている時も乗り物の中で網棚などに置くことは絶対しません。
荷物は、膝の上とか肩や腕にかけたままにして、足下に置いた物は足ではさんだり壁に押しつけ足で押さえるようにしています。
新幹線などでは隣の席の方が親切に「網棚に上げましょうか?」と声を掛けてくださる方もいらっしゃるのですが、自分の荷物に責任が持てなくなるので絶対荷物を触れているようにしています。
そうしてないと誰かに触られたりしてもわかりませんからね。
話がズレそうなので、元に戻して、あと2つ視覚障がい者の前での行為について話があるのですが、次回へ続きます。