視覚障害者が公共交通機関を利用した時について / 水島恵

視覚障害者が公共交通機関を利用した時について
水島恵

今回は私が25年くらい前に岡山でバスに乗車した時の経験を話してみます。知人の所に、月1でアルバイトに行っていて、帰りのバスに乗った時に不快な思いをした話です。

ある日、帰りのバスに乗車したら、ほとんど人は乗っていないように思いました。私は整理券を取り、前方へ進み、左側の列に座ろうと決めました。それは、右側に西日がさしていたからです。この選択をする方も多いのではないでしょうか?

「ここに座ろう」と決めて、背もたれの一部を触って誰も座っていないようだったので、椅子の前に立ち、膝を曲げ、腰を下ろそうとしたその瞬間「あれ!?誰かが座ってる?!えっ、背もたれ確認したのにな」と、それまで人の息遣いすら感じなかったからおどろきました。

でも間違いなく誰か座っている、でも反応が全く無いのです。

疑問と同時に恥かしさで、全身から火が出そうでした。

「やっちゃった!」誰かの膝に座る寸前。その次の瞬間、信じられないことが起きました。

運転席から大爆笑が。

はぁ?!どういうこと?

恥ずかしさに加えて怒りが沸きました。

白杖を持った視覚障害者が乗車してきた段階で、空席の案内(私が歩いている時「左手が空いています」や「そこから2列前が空いています」などと教える)してくれれば良いものを、まして人が座っている席に座ろうとしている時、「そこは人がいます」と声掛けしてくれれば良いだけなのに、大爆笑する運転手ってどういうことですか?!(怒り)

視覚障害者の対応も、障害者のことも知らないのでしょうか。まぁ障害者の対応うんぬんという以前の問題だと思いますが。

座ろうとした席の前の席が空いていたので、取りあえず座ったものの恥ずかしさも怒りも冷めず落ち着かない時間が続きました。その時間は3停留所分でした。そこでまた信じられないことが。

また運転席から笑い声が。思い出し笑いしたのでしょう。私は恥ずかしさも怒りも頂点に。心中穏やかでない状況の中、「あなた名前は?会社に報告するわよ」と言おうと思ったりしていました。

でも下車する時、会話するのも気分悪かったのと勇気が出なかったこともあり、いつもなら「ありがとうございました!」と下車するところ、不機嫌そうな顔して下車するのが精一杯でした。

さらにバスを乗り継いで帰宅するのですが、その間もバス会社にどんな言い方で通報しようかと考えていました。そんな中もう1つの疑問が。

座ろうとした座席にどんな人が座っていたのかしら?

私の推測は、お客さんは眠っていて自分の膝に座ろうとしている者に気付かなかったのかも?とか、子どもだったのかな?とか色々と巡らせました。

でも無反応というのは不思議でなりません。あまりのおどろきに声が出ないとかはありそうだけど、無反応とは?固まっちゃったのかな?

そんなことをぐるぐる巡らせているうちに無事帰宅しました。

外出から帰宅すると緊張感が緩み、ホッとしてドッと疲れを感じますが、家事などすべきことで時間に追われます。この日も当然バタバタしました。その間忘れているわけではありませんが、バス会社に通報するのは優先順位が下がりました。

翌日も目先の用事に追われて時間が過ぎていきました。恥ずかしさも怒りも冷めたところで冷静にバス会社に通報すればよかったのに・・・。

結局、怒りは頂点から冷めていき、心の傷はかさぶたとなって残りました。

今なら、バス会社に通報しないとか運転手に注意すらしないなんて考えられません。それは、誰のためにもならないことがハッキリわかるからです。

視覚障害者が、私のような恥ずかしい、腹立たしい不快な思いをせず、安心安全にバスに乗車できるために。心ない運転手が配慮ある運転手になるために、バス会社の意識向上のために、私の体験からも今出来ることをやっていきたいと思っています。

◆プロフィール
水島恵

水島 恵(59歳)
岡山市在住
視覚障害(先天性緑内障)
岡山県UD推進アンバサダー
指圧・あん摩・マッサージ師
着付け1級(認定)
趣味は編み物、料理(特にスイーツ)、カラオケ、旅行、和装、講演・講座巡り

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