47都道府県事業所開設の先へ~介護職として望む未来~
桑原実
2023年1月1日、ホームケア土屋は全国47都道府県での事業所開設という1つの目標を達成しました。
2020年10月の事業立ち上げから約2年半の出来事です。
私は、その中の一つ、かながわ事業所で、重度訪問介護を県全域に広めようと、日々活動を行っています。
活動をしていく中で、病院、特別支援学校、相談支援事業所、各施設、地域包括など、様々な場所で多職種の人にお会いして、情報の交換を行っていますが、その中で強く感じていることがあります。
それは、「重度訪問介護の認知度の低さ」です。
クライアントの在宅介護について、計画を提供する側の方々でも、「何となく名称は知っているけど、どういったサービスなのかは知らない」と仰る方が、「まだまだ多い」という印象を受けます。
これでは本当に必要としている方にサービスが届くのは難しいなと感じています。
こうした背景には、自治体が抱える「優先順位」の問題があるからだと言われています。
医療費や社会保障費、少子化対策・・・山積みの課題がある政策の中で、どうしてもマイノリティな障害当事者の声は届きにくくなってしまっています。
神奈川県は全国の他自治体と比べれば、財政面にも余裕があり、社会資源にも恵まれているほうかと思いますが、その神奈川県ですら、いざ自治体と重度訪問介護の話をすると、驚くほどの温度差を感じます。特に前例がないことや、一度認められなかった事例などがあると、「申請すらさせてもらえない」などといった”壁”が、いまだ多くあります。
重度訪問介護を必要としている人たちの訴えは、緊急性の高い課題であることは間違いありませんし、たとえ、必要としている人が少数であっても、そこに命がかかっていたり、困難の度合が高ければ、最優先に支援されるべきであり、それが本来あるべき福祉の姿ではないかと思います。
今後の福祉サービスの方向性は「地域移行に向かう」と言われています。
「地域移行」とは、住まいを施設や病院から単に元の家庭に戻すことではなく、障害者個人が、自ら選んだ住まいで安心して、自分らしい暮らしを実現することを意味します。
重度訪問介護はそれを可能とするサービスです。
今、私がするべきことは、47都道府県事業所開設の「先の道」を作ることだと思っています。
この場所に腰を据えて事例を積み重ねることで、自分らしい暮らしを実現していく方を増やし、多様な前例を作ることで、重度訪問介護という素晴らしいサービスを、当たり前に、皆が使える環境を作る。
重度訪問介護をより、もっと先へ。
その一助になれればと思います。