医療的ケア児が当たり前に地域で暮らせる世の中に
奥永孔太郎
私が医療的ケア児と関わりを持ってまだ5、6年ほどですが、この数年間だけでも医療的ケア児を取り巻く環境は大きく変化したように感じます。
一つは重症児や医療的ケア児に対応できるサービスや事業所が、少しずつではありますが増えてきたこと、またそれに伴ってメディアなどで取り上げられることも多くなり、医療的ケア児が在宅・地域で暮らしていることがどんどん認知されてきたように感じています。
それでも個々をみるとサービスや支援の手が足りていない現状はまだまだあり、社会全体で解決しなければならない課題が多くあると感じます。
その原因の一つとして、当事者の方々が「どんなサービスを利用できるか知らない、わからない」という根本的な問題があると思います。医療的ケア児のご家族と関わる中で「誰も教えてくれない」という言葉がよく出ていたのを覚えています。
ご家族は、ご本人にほぼつきっきりで生活されており、自然とコミュニティが狭くなってしまい、情報がなかなか入ってこないこと、また関わっている行政の方や相談員の方でも利用できるサービスや事業所を把握できていないことも一つの問題点だと思います。
医療的ケアをはじめとするサービスの担い手が増えていくことはもちろんですが、専門的な知識をもった方が「当事者の方々へ積極的にアプローチしていけるような環境づくり」も必要だと考えます。
特に医療的ケア児の中でも「超重症児」と呼ばれる方々とも関わりを持ってきましたが、まだ幼い時期から、学校を卒業した後の生活に関して、とても悩まれているのを間近で見てきました。
当時は通所や訪問介護・看護を組み合わせて在宅で過ごせるように、ご家族と一緒に色々な方法を模索していましたが、重度訪問介護に初めて出会った時に、まさに私やご家族の方々が求めていたサービスであると強く感じました。
外に買い物に行ったり、夜ゆっくり眠ることすらできていないご家族の方々が、一つの選択肢としてこのサービスを知ることで、ご本人が在宅で暮らすという願いを叶える手段になり得るのではないかと思います。
まずは、一人でも多くの方に重度訪問介護というサービスを知ってもらうことで、当事者の方やご家族の方々の不安が少しでも解消されればという想いで日々周知活動を行っています。
私たちが日々、当たり前に行っている生活の中のあらゆることを日常的に行うことが困難な方々が「あたりまえの生活」を送れるよう、もっともっと社会が進化していくことを期待するとともに、自分自身も福祉に携わる一人として目の前の課題解決に尽力していきたいと思います。
■プロフィール
奥永孔太郎 介護事業部 九州ブロック
介護事業部 九州ブロック
ホームケア土屋北九州 オフィスマネージャー
介護福祉士、サービス管理責任者、児童発達支援管理責任者、保育士
21歳の時から8年間認知症対応型グループホームに勤務。
その後、重症心身障害児(者)を対象とした通所施設にて管理職を経験したのち
2020年株式会社土屋に入社。
趣味は将棋、ソフトバレーボール