5月病(再掲)
雪下岳彦
「5月病」とは環境変化の多い4月という1ヵ月を過ぎ、ゴールデンウィークを過ぎたあたりから、なんとなく感じる体調不良や、やる気の出ない状態のことを指します。
心機一転となる4月は新しいチャレンジという側面もあり、「よし、はりきっていこう!」と少しオーバーペースになりがちですが、1ヶ月くらいはなんとか頑張れてしまうことが多いです。
しかし、やはり環境の大きな変化とそれに適応しようと頑張りすぎることは、心身の大きなストレスとなります。
そういった精神的・肉体的疲労がたまった状態でゴールデンウィークを迎え、いったん緊張の糸が途切れると、ゴールデンウィーク明けに学校や仕事に行きたくなくなってしまうというケースが多いです。
場合によっては、5月をなんとか乗り越えたものの、6月に調子を崩してしまう方々も少なくなく、最近では「6月病」と呼ばれることもあります。
5月や6月は、気温や気候の変化が大きいことも、心身の不調を引き起こしやすくなる一因です。
さらに、今は「コロナ禍」という新たな環境ストレスが加わっています。
日々の感染対策、自粛生活、感染にまつわるニュース、社会的な混乱など、毎日かなり気を張り詰めた生活が2年以上続いており、かなり大きなストレスになっています。
そのため、今年は例年以上に5月病・6月病のリスクが高まっており、注意が必要です。
5月病のサインとしては、以下の症状があります(引用1)。
- 睡眠の変化:朝早く目が覚める・夢ばかり見て熟睡感がない・夜中に何度も目が覚める・寝つきが悪い・朝おきられないなど
- 食欲の変化:食べてもおいしくない・食欲低下・過食
- 体調の変化:倦怠(けんたい)感・頭痛・肩こり・吐き気・胃腸障害・下痢が続く・めまいなど
- 気分の変化:やる気が出ない・おっくう・憂うつ・怒りっぽい・いらいらする
- 行動の変化:仕事がのろくなる・物事が決められない・掃除や片付けができない
以上のような状態が2週間ほど続いた場合は、医療機関を受診することをお勧めします。
また、周囲の方が気づくサインとして、以下が挙げられます(引用1)。
- 怒りっぽくなった
- 口数が少なくなった
- 身だしなみに気を使わなくなった
- 遅刻が多い
- 失敗が多い
- 忘れ物が増えた
- 食事の量が減った
- 顔に表情がない
- デスク回りが散らかっている
- 遅刻が多い・時間に遅れる
上記のようなサインに気付いたら、まず声がけをして話を聞いてみるのが大事です。
もし、いつもと違うように感じたら、医療機関への受診を勧めてあげてください。
参照記事:1.コロナ禍2年目の「5月病」リスクに注意 GW明けに知っておきたい予防対策(海原純子) https://news.yahoo.co.jp/byline/umiharajunko/20210506-00236301/
プロフィール
雪下 岳彦(ゆきした たけひこ)
1996年、順天堂大学医学部在学時にラグビー試合中の事故で脊髄損傷となり、以後車いすの生活となる。
1998年、医師免許取得。順天堂医院精神科にて研修医修了後、ハワイ大学(心理学)、サンディエゴ州立大学大学院(スポーツ心理学)に留学。
2011年、順天堂大学大学院医学研究科にて自律神経の研究を行い、医学博士号取得。
2012年より、順天堂大学 医学部 非常勤講師。
2016年から18年まで、スポーツ庁 参与。