冬場の不調とビタミンD
雪下岳彦
冬場になると、なんとなく調子が悪いという方が多いです。
その原因には色々なことが関係していますが、ビタミンD不足も一因と言われています。
元々、「ビタミン」とは生きる上で必要な栄養素で、体内では必要量を十分に作ることができない物質の総称です。
ビタミンは体内で十分に合成できないため、食品から体内に取り入れます。
そのため、食品から取り入れる量が極端に少ないと、病気になることがあります。
16世紀頃の大航海時代に、数ヶ月におよぶ洋上生活をしていた船員に、謎の病気が多発して大きな問題となりました。
実は、この病気、「壊血病」と言いますが、ビタミンCの不足が原因でした。
長期航海中の食事は乾物や塩漬けがメインで、ビタミンCがほとんど含まれていなかったのです。
日本でも「脚気」という病気が流行りましたが、これもビタミンB1不足によるものです。
ビタミンDは、「ビタミン」に分類されていますが、体内で十分量の合成が可能です。
また、他のビタミンは体内で特定の化学反応を進める酵素として働きますが、ビタミンDは血中のカルシウム濃度を高める作用があり、ホルモンのように直接作用するユニークなビタミンです。
ビタミンDの主な働きは、骨の強化です。
ビタミンD不足になると、くる病、骨軟化症、骨粗鬆症といった骨がもろくなる病気になってしまいます。
くる病は食糧事情が悪かった時代に起こった過去の病気と思われがちですが、近年では増加傾向にあります。
実は、ビタミンDは皮膚が日光を受けた際に合成されるビタミンなのです。
しかし、「日焼けや紫外線は皮膚がんの原因になる」という海外の報告が広く伝えられ、日光浴は推奨されなくなりました。
それどころか、日光や日焼けは悪者として避けられてしまうまでになってしまったのです。
そういった風潮で、過剰に日光・紫外線対策をした子供がビタミンD不足となり、飽食の現代にも関わらず、くる病を発症してしまうのです。
日光・紫外線対策は、子供だけではなく、主に成人女性でも積極的になされている方が多く、その方たちのビタミンD不足も起こっています。
さらに、コロナ禍でステイホームの時間が増えたことで日照を受ける時間が減り、日光・紫外線対策は特に行っていない人々にまでビタミンD不足が増えているのです。
ビタミンDは骨の強化以外にも、アレルギーや感染症予防などの免疫機能、神経や筋肉の機能、血圧や循環器機能、精神機能など、さまざまな働きがあると考えられていて、近年は世界中で盛んに研究されています。
ビタミンDが日光浴で合成されるという特徴から考えると、冬場に調子が悪い人はビタミンD不足の可能性がありますね。
ビタミンDを増やすには、日光浴以外だと魚類やキノコ類を食べるのが有効です。
しかし、食事だけで十分な量を取るのは難しいので、サプリメントで補充するのも一手です。
黄色い容器でおなじみネイチャーメイドのスーパービタミンDは1日1錠、90日分で1000円以下と十分な含有量かつお手頃価格なので、オススメです。私も飲んでいます。
ビタミンD不足による不調はサプリメントなどで対策がすぐに取れるので、冬場の不調を感じる方、あるいは在宅時間が長く日光を浴びる時間が少ない方は、ぜひ試してみてください!
プロフィール
雪下 岳彦(ゆきした たけひこ)
1996年、順天堂大学医学部在学時にラグビー試合中の事故で脊髄損傷となり、以後車いすの生活となる。
1998年、医師免許取得。順天堂医院精神科にて研修医修了後、ハワイ大学(心理学)、サンディエゴ州立大学大学院(スポーツ心理学)に留学。
2011年、順天堂大学大学院医学研究科にて自律神経の研究を行い、医学博士号取得。
2012年より、順天堂大学 医学部 非常勤講師。
2016年から18年まで、スポーツ庁 参与。
2019年より、順天堂大学 スポーツ健康科学部 非常勤講師を併任。
2020年より、千葉ロッテマリーンズ チームドクター。
医学、スポーツ心理学、自律神経研究、栄養医学、および自身の怪我によるハンディキャップの経験に基づき、パフォーマンスの改善、QOL(Quality of Life:人生の質)の向上、スポーツ観戦のバリアフリーについてのアドバイスも行っている。