社会性・経済性・人間性について
秦 明雄(ホームケア土屋 かながわ)
今回のテーマはとても奥深くて、なかなか考察するのが難しいと思いながらも、ソーシャルビジネスを目指して展開していく上では、重要かつ必要不可欠なテーマだと思います。
まず考え始める前に、それぞれの意味を広辞苑で確認してみたところ、
社会性とは「集団をつくって生活しようとする性質」「社会的な問題への関心があること」「社会的な問題を提起する力がある」、次に経済性とは「経済的な効率」「ある費用によって達成される効果の度合」、
そして人間性とは「人間としての本性」「人間らしさ」と載っていました。
それではテーマについて、今回は「企業としての視点」で考えてみたいと思います。
まず社会性において、介護業界が現在抱えている問題や課題は多岐にわたって山積です。
介護サービスは施設型サービスと在宅(訪問)型サービスに大別されますが、それぞれのサービスにおいて多くの問題と課題を解決していくためには、やはりどうしても規模の経済性を働かせる必要があります。
なぜなら介護業界は典型的な労働集約型産業の業界であって、利用者を増やすためには人員を増やす必要があり、人員が不足していては介護を必要としている利用者に必要なサービスを提供することができません。
今尚、慢性的な人材不足に陥っている状況から考えても、在宅(訪問)型サービスではなかなか規模を一気に拡大することが難しく、施設型サービスのほうがある程度、規模の経済性が働くと考えられます。
そして同業他社はもちろんのこと、多くのステークホルダーや業種・業態の垣根を超えた協業や業務提携、またアウトソーシングやM&Aなど、企業的にも組織的にも有機的な繋がりをもって、これまでのビジネスモデルに依存せず、お互いのリソースを最大限に活かしていくアイデアとその取り組みが、今後はとても重要になると思います。
その中で企業を取り巻く環境では、VUCA時代が加速度を増しています。
世界経済やビジネス、個人のキャリアや人生設計に至るまで、ありとあらゆるものが複雑さを増して先行きが不透明になり、将来の予測が困難となっているのです。
これまでの成功体験やノウハウ、また当たり前だと思われてきたことが、ここにきてどんどんと通用しなくなっています。
さらには地球温暖化に伴う気候変動や異常気象、また新型コロナウイルスなどの感染症パンデミックなど、今後も私たちの生活を取り巻く環境でも想定外のことが次々と起こることでしょう。
つまり社会性と経済性においては、長期的視点と短期的視点のバランスを保ちながら、多角的視点をもった情報収集と分析をもとに素早く意思決定し、想定外の出来事に対する外部環境にも柔軟に即応できる組織づくりが、より一層求められると思います。
では、そのような組織づくりを目指すために一番重要なことは何か。
それは企業、組織、チーム、現場を形成する人材のあり方と育成に尽きると思います。
人間の誰もがもっている本能的欲求である
「もっと人生を楽しく幸せに生きたい」「もっと誰かの役に立ちたい」「もっと成長したい」
という欲求を体験できる、または期待できる職場環境を企業は如何なる状況であっても追求することが求められ、それと同時に働く側も与えられた環境を自らの欲求を満たせるよう、自律的かつ最大限に有効活用していく必要が求められると思います。
つまり社会性・経済性・人間性のすべてにおいて、もっとも根幹となるのは企業と労働者との健全な関係性であり、その関係性があってはじめて企業が抱えるそれぞれの山積された問題や課題が解決されていくのではないでしょうか。
そしてその結果として、より質の高いサービスを持続的かつ発展的に利用者へご提供することができると私は思っております。
最後までお読みいただき深謝いたします。