社会性、経済性そして人間性について
荒井大樹(ホームケア土屋 習志野)
ソーシャルビジネスを掲げる企業にとって、社会性と経済性のバランスは切っても切れない話題である。
とくに介護事業はボランティア的な目で見られることも多く、少しでも利益追求をしようものなら「金儲け主義だ」と批判に晒されることも少なくない。
そもそもソーシャルビジネスとは、社会的問題の解決を目的とした事業であり、ボランティアやNPOと違い、外部からの支援を受けずに事業収益で継続的な運営をおこなうビジネスモデルである。
つまり継続的な収益をあげられないと、企業として継続的に社会問題を解決していくことが不可能ということだ。
介護事業の収益は障害者総合支援法や介護保険法で定められた単位と単価によって、税金や保険料から支払われる報酬が財源となっている。
どの事業所がサービスに入っても報酬は一律であり、利用者負担額も一律である。
一般企業のような価格による市場競争はない。
もちろん制度外の依頼において自費サービスの提供もしており、その料金設定は各社で異なるが、ほとんどの支援が制度内で賄われているのが現状で、自費サービスによる収益というのは微々たるものである。
利用者の在宅生活を支える重度訪問介護において、一番の社会的問題といえば「介護難民問題」に他ならない。
これは障害者だけでなく高齢者介護にも該当するが、需要に対して圧倒的なヘルパー不足が根底にある。
仮に1人の利用者を24時間365日支援する場合、最低でも6人くらいのヘルパーが必要になる。
とにかく介護事業は人が主力であり、人件費にかかる割合が非常に大きい。
さらにヘルパーを集めるための求人広告費も比例して大きく、収益の大半を人材のために使っているといっても過言ではない。
一般企業の人件費率では考えられないほどの経費がかかっている。
それでも土屋がソーシャルビジネスに取り組むのは「探し求める小さな声」に応えるためであり、ヘルパーが増えれば支援を受けられる利用者も増え、結果的に収益も上がるというフローになっていく。
ビジネスである以上は社会性と経済性を完全に切り離して考えることは不可能で、重要なのは「社会的問題の解決に取り組んだ結果、事業収益が上がり、継続的な支援をおこなうことができる」という点である。
そしてそこには土屋で働く人たちの「想い」がある。
介護の仕事は「社会貢献したい、人の役に立ちたい」と思って始められる方が多く、そういった人々で支援が成り立っている。
やはり人間性を抜きにして、この仕事は語れないほど人による力が大きい。
圧倒的な人材不足が大きな問題と書いたが、だからといって誰でも良いわけではなく、土屋のミッション・ビジョン・バリューに共感し、ホスピタリティを持って働いてくれる人が必要なのだ。
良い人材は、良い支援をおこない、それに伴って良い評判が立ち、サービス依頼が増える。
つまり社会性、経済性、人間性はソーシャルビジネスにおいて全てが連動しており、すべてが噛み合ってこそ企業として前進していける条件だと考える。