視覚障害者が住まいを決めるには?④(最終版)
水島恵
前回からの続き・・・
申し込みから契約まではトントン拍子に話が進み、6月1日からの入居契約でしたが、実際は大安の2日から入居しました。
そこから現在に至るまでさまざまな出来事があり、色々と学びました。
「視覚障害者だから」ということばかりではありませんでしたが、「見えていたらスムーズだったかな」と感じることもありました。
入居希望の申し込み日には、間取りや網戸、照明器具の有無、クローゼットや収納スペースのチェックをしました。
手で触れる所は確認できますが、照明器具が付いているかなど、手の届かない所は、義姉に確認してもらいました。
入居までに、不動産屋にお願いして、冷蔵庫や洗濯機、キッチンワゴンを置くスペースを確認しました。
6月2日の入居に間に合うように、お財布事情を考えながら冷蔵庫・洗濯機・掃除機を購入しました。
照明器具や炊飯器は、義姉や知人から譲っていただきました。
それぞれの家電に音声ガイドや、リモコンボタンに凹凸があれば良いのですが、なんとかボタンの配列やお知らせの「ピー」という音の数を覚えることで使いこなせると判断し、音声ガイド付きは無しで妥協しました。
でも、食事・来客応対や仕事で一日のほとんどを過ごすLDKと和室を快適な室温にするためのエアコンだけは、高額な音声ガイド付きのものを選びました。
「見えていたらこんな出費しなくてよいのに」と少し悔しい気持ちになりました。
さて、購入した音声ガイド付きエアコンは、24日に取り付けてもらう予約ができ、楽しみに待ちました。
それまでの間は小型冷風機を購入して、暑さをしのぐことにしました。24日の午前に電気屋さんが取り付けに来て作業を始めましたが「本体が重たいのでこの壁では壁が割れてエアコンが落ちる」と言われたので、慌てて不動産屋に壁の補修を依頼しました。
不動産屋には「連絡します」と言われ、翌日には連絡が来るだろうと思いましたが、待てど暮らせど音沙汰はなく1週間が経ってしまいました。
私は我慢強い方なのと、他にもあれこれ依頼していたので、まさか忘れられているとかほったらかしにされているとは思わず、「今日は連絡あるだろう」とひたすら待ったのです。
思いのほか梅雨明けも早く、真夏の暑さが続き、いよいよ限界が近づいていました。
そんな中、知人の男性が「そちらで段取りできないなら、こちらで大工を手配して、請求書だけまわす」と言ってくれたら、不動産屋は慌てて大工を手配し、驚くほどスカスカの壁の補修をしてくれました。
やれやれ!
壁の補修ができ、さらに5日後にエアコンが取り付けられて、今は快適な室温で仕事ができています。
ちなみに、不動産屋に依頼していた事は他にもあります。
たとえば、風呂場とトイレの一体化された換気扇が動かない。
ベランダ側の網戸が動かない。
クローゼットのハンガー吊り下げバーを固定するネジが外れている。
部屋のドアが開いた所で止まらず勝手に閉まる。
バスタブの蛇口の湯側は動くが水側は動かない。
といった具合に「これでよく貸し出せたな!」と呆れるほどです。
ここから学んだのは、今もなお、障害者独りだけとか女性だけだと、軽く見られていて対応がおろそかにされるのかもしれないと感じました。
単にこの不動産屋さんがお粗末なだけなのかもしれませんが・・・。
入居希望で物件を見た時や、カギを受け取った日に、もっと念入りにチェックをすべきだったと反省しています。
しかし、高い家賃なのにこんな状態で貸し出せたものとは想像もできなかったのも事実です。
この経験を教訓に「まさか」まで思い巡らせ、思い込みはしないようにして、自分だけではなく、誰かの目も借りて一緒にチェックすることの大切さを実感しました。
書類も多く、信頼できる晴眼者が必要だと、しみじみ感じています。
今回のテーマはこれで幕をおろします。
◆プロフィール
水島恵
水島 恵(59歳)
岡山市在住
視覚障害(先天性緑内障)
岡山県UD推進アンバサダー
指圧・あん摩・マッサージ師
着付け1級(認定)
趣味は編み物、料理(特にスイーツ)、カラオケ、旅行、和装、講演・講座巡り