ぷくぷく姫のさえずりNo.9 メイクについて~『視覚障害者のメイクについて』~
水島恵
視覚障害がある私の経験から感じていることをつぶやいてみます。
メイクはいつからするものなのでしょうか?
いや、いつからしたくなるものでしょうか?
50年前と現在では違いもあるでしょう。高校を卒業したら進学でも就職でも本格的にメイクする方が多数ではないでしょうか。
メイクは個人の感性や好奇心、環境によって、各々が始める時期やスタイルなど自由に選択できるものではありますが、どことなく中高生は早すぎる、大学生なら見逃す感、成人していたらメイクは当たり前的な世間の風潮を感じます。
私の場合、高校生時代はメイクまではしないものの、洗顔クリームや化粧水・乳液はこだわって使用していました。
シャンプーや歯磨き粉にこだわる感覚と同様でした。
母は積極的に洗顔クリームや化粧水・乳液の情報をくれたり買い与えてくれましたので、高校生が使用することに問題があるとは思っていなかったようです。
でも成人したり社会人になってもファンデーションやチーク・口紅は情報も買い与えてくれることもありませんでした。
「メイクまでは必要ない」とか「見えないからできない」と思っていたのかもしれません。
私も視覚障害者の友人たちも「お化粧しないの?」とか「お化粧はどうしてるの?」なんて言われたことはありません。
「お料理はどうしてるの?」と言われたことがあっても。
視覚障害者の生活にあれこれ問いが沸いた時、「服はどうしてるの?」と購入方法や毎日の服選びについて問われたことは度々あるけれど、「メイクはどうしてるの?」と訊かれたことはありません。
私は高校時代から結婚する24歳まではメイクに関心がありました。
ただ病院勤務でマッサージ治療をするのに、汗もかきやすいことから化粧くずれに不安を感じてしませんでした。
いや、その前にメイクすることに不安がありました。
濃さやムラを確認できないことで恐れがあって「メイクしたいけどできない」となっていました。
乳幼児期の子育て中も顔を触られたらと思ったらできませんでした。
そんな間に、「まぁしなくてもいいか!」とメイクに対して意欲がなくなっていったように感じます。
とはいえ、長男の小学校の参観日などには、しているかしていないのか判らないくらいのメイクをして行くこともありました。
チャレンジです。
参観の後、次男の保育園に迎えに行った時、担任の若い保育士さんからじーっと見られながら「お母さん、もしかしてお化粧してます?」と言われ、「はい!」と応えたら、「身嗜みですもんね」と言われました。
その瞬間、「日頃NOメイクで身嗜みできてないと思われていたのか!」と思いました。
ちょっと恥ずかしくなりました。
それと同時に、「この先生は見えない私にはメイクするのが無理と思ってないんだ」、「それともメイクが可能・不可能という意識すらないのか?」と思いました。
私の中では、メイクは顔色やシミ・ソバカスをカバーするもの、またはおしゃれの範囲という概念でした。
したがって、化粧品を買う収入も無く時間ももったいない、シミなどをカバーする必要もないので、私にはメイクは要らないと思っていました。
子育てが一段落したころに、仕事や学び・社会貢献を始めて、不特定多数の方と顔合わせすることが増えたことから服装に気を配るようになりました。
さらにZOOM参加やテレビ画面に映るとなるとメイクのことが気になるようになりました。
幸いシミやしわも無さそうなのですが、年齢を重ねているのは間違いなく、予防を含めてスキンケアが必要になると思いました。でもメイクをする不安は変わりません。
四半世紀前と違うのは、視覚障害者を対象にメイク講習を化粧品メーカーさんやメイクのプロが開催してくれるので、自分の使いやすさやムラになりにくい化粧品のチェックができることや、
メイク方法を教わり失敗しにくい方法をチェックしてもらうことで自信に繋がる場があるということです。
視覚障害者それぞれ環境や不安度によってメイクが自力でできるようになるまでの経過は違うでしょう。
私の場合、家族に見える者がいないのでメイクをしたタイミングでチェックをしてもらうことは不可能です。黙々と手慣らしをしてみるだけです。
ヘルパーさんに入ってもらう午後にチェックはしてもらえますが、メイクした時点でムラになっているのか、時間の経過で化粧崩れしたのかがチェックできないのが残念。
近年はフェイスエステを経営している友人の所に月1ペースで通ってスキンケアをしてもらった後、メイクの練習に付き合ってもらっています。
メイク一つで見た目が変わりますが、気持ちも変わることの大きさに喜びを感じている私です。
健常者が気軽にできるメイクも視覚障害者にはハードルが高く努力が要るのです。
でもみんなが普通にしていることは普通にしたいと思っていますし、できるはずです。
視覚障害者がどんな方法でメイクをするのかはまたの機会にお伝えしたいと思います。
みなさんも真っ暗な所でメイク体験してみたらメイクの不安が具体的にわかってもらえるでしょう。
では、次回まで。
◆プロフィール
水島 恵 CSR推進室
水島 恵(59歳)
岡山市在住
視覚障害(先天性緑内障)
岡山県UD推進アンバサダー
指圧・あん摩・マッサージ師
着付け1級(認定)
趣味は編み物、料理(特にスイーツ)、カラオケ、旅行、和装、講演・講座巡り