それぞれのストーリー2~「いつか」ではなく、今満ち足りるために何ができるか~
小山田康浩
あなたは今、自由に生活を送ることができていますか?
介護の仕事をするうえで、私たちはクライアントの人生において「登場人物」になることを知っていましたか?
一人ひとりにそれぞれの人生があり、出会いがあり、別れがあります。介護というお仕事はそれの繰り返しになります。それぞれの人生ですので、悔いのないように全うしてほしいと思います。
施設で生活すると、自分のしたいことができない。集団生活になりますので仕方ないと思っている、感じている方は多くいらっしゃると思います。よく伺うご要望は「墓参りに行きたい」「買い物に行きたい」「家に帰りたい」というご希望が聞かれます。スタッフが少なくて叶えてあげられることは難しいことは御本人も十分わかっている。でも、ご利用者様は今、確かにこの気持ちになっている。認知症だろうが障害があろうが、今この気持ちになっていることを大事にしたい。
私はその頃、相談員を兼務していましたので、よく落ち着かないご利用者様と、やりたいことを叶えるための話をしました。
「家に帰りたい」とのことだったのでご家族に連絡をして、30分ほど家に帰りました。案の定、家についても「家に帰りたい」と仰っていました。施設に戻ると「楽しかったね」と笑顔が見られました。その方は1週間後、ご逝去されました。その際、「一時でも家に帰ることができて良かった」と思いました。私の中に悔いが残らずお見送りすることができました。何が正解で間違いなのかはわかりませんが、後悔、先に立たず…後々、後悔するよりも今できること、今感じていること、今思っていることを少しでも実現して、楽しく過ごしてもらえることが大事だなと感じました。
このことは、重度訪問介護でも同じかなと思います。ただ、1対1での介護なので難しいことが多くあると思います。施設と違いしっかりと向き合うことができる仕事。クライアントのニーズを全て叶えることは難しいですが、可能な限り叶える力になりたい。自宅から出ることさえ、あきらめている方も多くおられると思います。どのようにしてできるのかも知ってもらえることで、もっと楽しく生活を送ることができるのではないかなと思います。エゴな部分もあるかもしれませんが、「お一人おひとりが楽しく生活を送っていただくこと」が福祉の仕事の醍醐味だと思います。
◆プロフィール
小山田 康浩 ホームケア土屋 福岡
介護を始めた時期:平成21年~現在
特技:バスケ歴27年
資格:介護福祉士