ノーマライゼーションと私~考えを輸入するのではなく、日常に織り込む視点を~
寺田孝介
ホームケア土屋関東の寺田孝介です。
私が介護業界に入ってからよく耳にするのは、
『ノーマライゼーション』『インクルージョン』『ダイバーシティ』
という言葉です。
『インクルージョン&ダイバーシティ』とまとめると、「個々の“違い”を受け入れ、認め合い、生かしていくこと」を意味します。これは他業種でもよく使う言葉です。
では、【ノーマライゼーション】とはどんな意味なのか…?この業界に入るまでは全く知りませんでした。
一般社会でも知らない人が多いのではないでしょうか。
介護業界に携わるうちにこの言葉を勉強するようになり、デンマークで始まったその「ノーマライゼーション」が社会に必要な考え方だと認識され、ベンクト・ニィリエがいたスウェーデンへ広がり、その後世界中で重要性が理解されるようになった。ということがわかりました。
障害を持つ方の親たちからの「障害者でも一般市民と同様の生活や権利が保障されている社会を」という強い願いが込められています。
日本では、『高齢者、障害の有無といった年齢や社会的マイノリティといったことに関係なく、生活や権利などが保障された環境を作っていく考え方』ととらえ、福祉政策の根本理念として定着しています。
スウェーデンでノーマライゼーション活動の中心となっていたベンクト・ニィリエはノーマライゼーションの概念を8つに原理化しました。
①一日のノーマルなリズム
②一週間のノーマルなリズム
③一年間のノーマルなリズム
④ライフサイクルにおけるノーマルな発達経験
⑤ノーマルな個人の尊厳と自己決定権
⑥ノーマルな性的関係
⑦ノーマルな経済水準とそれを得る権利
⑧ノーマルな環境形態と水準
これら「ノーマライゼーションの8原理」が提唱されたのは、約50年も前となりますが、自立支援の方向性を確認する上で、非常に大切な理念なのでこれは皆で共有していきたいです。
日本では・支援費制度・障害者自立支援法・障害者総合支援法・障害者差別解消法と、厚生労働省が、障害者の自立と社会参加を目指してさまざまな取り組みを実践しています。
課題として日本で定着するには、地域に受け入れる制度が整っていない・政治的課題や理念が浸透していないことなど、まだまだ課題は山積しています。
ノーマライゼーションを推進するには、制度作りや財政的な問題をクリアする必要があります。
政治的にも意識が障害者に向かなければ、実現可能な具体的政策提言や十分な予算配分がされません。
そして受け入れる企業や、サポートする上司や社員の理解が浅ければ課題解決にはつながりません。
いま多くの企業が「ダイバーシティ&インクルージョン」の一環として、ノーマライゼーションへの取り組みを推進しています。ダイバーシティ&インクルージョンとは、一人ひとりの多様性を認めて受け止めるという考え方なので、今の時代にもマッチしているといえます。
ダイバーシティ&インクルージョンを推進していくことで、障害者雇用も自然と進めやすくなるはずです。
私は欧米のやり方を参考にするのはいい事だと思いますが、日本に合ったやり方を考えるべきだと思います。
車にしても世界が脱炭素で電気自動車を推奨していますが、大雪が降る日本の冬に電気自動車では氷点下0度以下になるとバッテリーが落ち、立ち往生に巻き込まれるハイリスクがあることが分かりました。生命をつなぐ冬を超えるには灯油が必須ですし、脱炭素に行き過ぎを感じるからです。
日本にあったノーマライゼーションの取り組みを考えて行くのが一番良いと思います。
参考文献『障がい者のノーマルな生活』