貴族のご飯で心を大人に。 / 鶴﨑彩乃

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貴族のご飯で心を大人に。
鶴﨑彩乃

私は、意外と偏食である。でも、まぁまあバレない。理由は、1人暮らしということと、嫌いなものが特殊なのだ。アボカド・プリン・あんこ・抹茶・香草などなど。私の嫌いなモノはいわゆる高級店のコース料理には登場される。認めたくはないが、私の舌は「子ども舌」なのだろう。あー。なんか自覚すんの辛い。

梅雨が本格的になり始めた頃、同行やアテンダントさんの独り立ちが続き、ストレス過多になった私は、友人に1本のLINEを送った。「私を肉の美味しいコース料理に連れていけ。」と。ほぼ脅しである。が、その人はサクッとお店を見つけ、予約をし、「完了した。」とLINEを寄越した。ありがとう。できた友である。

なぜ、同行や独り立ちでストレスが溜まるのかと聞かれたら、「当たり前でしょ。」と答える。この当たり前というコトバはクライアントとアテンダント、どちらにも味方のコトバだと思っている。

アテンダントさん側なら、初対面が相手の家から始まるのだ。こんなハードルの高い「はじめまして。」なかなかない。しかも、相手の生活スタイル、身体の特性など、ありとあらゆることを覚えないといけないのだ。本当に頭が下がる。

これは、私の感覚に過ぎないが、自分の仕事に介護を選択してくれる人は優しくてマメな人が多い。そして、責任感が強い。責任感がある人のマイナス要素として、自分のしんどさを周囲に相談しないということがあると私はよく感じる。

いや、アテンダントとクライアント間も人間同士。だからこそ、しんどいことがあったら、あんまり溜めずに相談する。ということは頭に叩き込んどいてほしい。貯めていいのは、お金だけ。そして、しんどくなったら筋だけ通して、やめたらいい。と私は思う。

「嫌い」になってしまったら「元気になったら、介護やってみよう。」という思考回路も断絶させてしまう。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、ホンマこれよね。(笑)介護というものに一生お世話になることが確定している身としては、定期的に耳にして自分をピリッとさせようと誓っている。私は、介護は気楽にふわっと始めてみたほうが長続きしそうと、ちょっと確定案件で思ってる。

クライアント側としては、事前にもらえるアテンダント情報が少ない。そのため、不安に駆られます。メチャクチャに。私は、初同行の日。時間帯によっては、ご飯を食べない。なぜって?緊張が原因でトイレで洗面器と愛し合わないといけないから。「誰が来ても」ってとこがめんどくせぇ。私の性分なのだ。悲しいことに治らない系の。

まぁ、そんな立場の2人がそれぞれの気持ちを抱えて出会うのだ。初対面で2人が速攻で意気投合できたら、「運命の出会い」レベルですごいわけだが、人生はそうポンポンとはいかないのである。だからこそ、お互いに「試用期間」と思っている方が気楽だし、お互いに相手のことを探り合っているのは間違いないと私は思っている。それに意外とそのほうが仲良くなれる要素はコロコロと転がっている可能性が高いと思う。無論、互いに対する礼節と敬意は最重要事項である。

そんな中で、私にできる下準備など1つしかない。ストレスを発散し、できるだけ心に余裕を保つこと。イライラすると相手に当たってしまうかもしれないから。その点で、高級ステーキが盛り込まれたコース料理は大変適役だった。前菜からデザートまで本当に美味しかった。高貴な味がして、私のQOLは爆上がりで幸せすぎて眠くなった。幸福バロメーターってMAXになるとショートするんやと実感したわ。

ちなみに、コース内のステーキ以外の推しはデザートだった。手作りのアイスっぽくて、貴族の味がした。しかし、テーブルに料理が運ばれてくるたびにテンション高く出迎えていたら、イケメンのお兄さんに「申し訳ございませんが、もう少しお声を落としていただけますか?」とキラッキラの笑顔でお願いされて、適切な声のボリュームが分からなくなって、口パクでコミニケーションという方法に切り替えた庶民達だった。私達が雰囲気に合ってないのは分かったけど、定期的にモチベーションあげてもらいたくなる貴族のお店でございました。

帰り道、友人に「お料理持ってきてくれた人、かっこよかったなぁ。」ってしみじみと言ったら、心底ギョッとした顔で、あんたにタイプとかあんの!?」と驚かれた。人のことなんやと思てんねん。おるわ。ディーン・フジオカとか、赤楚衛二とかさ。件のウエーターさんもお綺麗な感じのイケメンだったな。

私達がお店を失礼する際に、隣のテーブルがお一人様用にセッティングされていたのだが、私達があの境地にいける「真の大人」になるのはいつだろうか。悲しいが私には、今世で到達できる気がしないので、来世に託す。頼んだ。

プロフィール
鶴﨑 彩乃(つるさき あやの)

1991年7月28日生まれ

脳性麻痺のため、幼少期から電動車いすで生活しており、神戸学院大学総合リハビリテーション学部社会リハビリテーション学科を卒業しています。社会福祉士・精神保健福祉士の資格を持っています。

大学を卒業してから現在まで、ひとり暮らしを継続中です。

趣味は、日本史(戦国~明治初期)・漫画・アニメ。結構なガチオタです。

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