5月病
雪下岳彦
5月病は、春から夏にかけての時期に一部の人々が経験する心身の不調を指す言葉です。具体的には、新年度や新しい環境への適応、季節の変化、学校や職場でのストレスなどが原因で、体調不良ややる気の低下、倦怠感、イライラなどの症状が現れることがあります。
5月病の主な要因としては以下のようなものがあります:
1. 環境の変化: 4月は新年度や新しい環境への移行の時期です。新しい学校や職場での適応や人間関係の構築にストレスを感じることがあります。
2. 季節の変化: 春から夏への季節の変わり目は、気温や湿度の変化があります。これにより、体調が不安定になることがあります。
3. ゴールデンウィークの疲労: ゴールデンウィークは連休であり、旅行やイベントなどで充実した時間を過ごす人もいますが、その反面、疲れがたまり、リラックスした状態から現実に戻ることでストレスが生じる場合もあります。
仕事や学校などでも、リモートから対面に戻るところも多いでしょう。そうなると、人と接する機会も増えて、社交のストレスがかかります。
コロナ禍のリモートライフに慣れてしまったため、これまでの環境とは変化が大きくなり、ストレスとなりそうです。
また、今年のゴールデンウィークは過去3年と異なり、イベントや会食に制限がなく、好天も続いたので、どこもかなりの人で賑わっていましたね。ここのところ経験しなかった活動で、疲れがいつも以上にある人も多いと思います。
5月病の症状は個人によって異なる場合がありますが、一般的な症状には以下のようなものがあります:
1. 疲労感や倦怠感: 日常の活動に対して疲れやすく、エネルギーが低下している感じがあります。
2. 食欲の変化: 食欲が低下したり、食事がおいしく感じられなかったりします。
3. 睡眠の変化: 眠りが浅くなり、朝早く目が覚めたり、寝付きが悪くなったりすることがあります。
4. 集中力の低下: 仕事や学業に集中できない状態が続きます。思考力や判断力が鈍くなることもあります。
5. 不安感やイライラ: 小さなことでもイライラしやすくなり、不安感や焦りを感じることがあります。
6. 気分の変化: やる気やモチベーションが低下し、憂うつな気分や落ち込みを感じることがあります。
7. 身体の不調: 頭痛、肩こり、めまい、胃腸の不調、吐き気などの身体的な症状が現れることがあります。
8. 社会的な孤立感: 周囲とのつながりや人間関係に対する不安や孤独感が増すことがあります。
これらの症状が5月に特に顕著に現れ、日常生活に影響を与える場合、5月病の可能性があります。以上のような状態が2週間ほど続いた場合は、医療機関を受診することをお勧めします。
また、周囲の方で以下のようなサインが出ていたら、5月病かもしれません。(引用1)。
・怒りっぽくなった
・口数が少なくなった
・身だしなみに気を使わなくなった
・遅刻が多い
・失敗が多い
・忘れ物が増えた
・食事の量が減った
・顔に表情がない
・デスク回りが散らかっている
・遅刻が多い・時間に遅れる
上記のようなサインに気付いたら、まず声がけをして話を聞いてみるのが大事です。
もし、いつもと違うように感じたら、医療機関への受診を勧めてあげてください。
最後に、5月病を予防するための具体的な対策は、以下の通りです:
1. ストレス管理: ストレスを適切に管理することが重要です。日常のストレスを軽減するために、リラクゼーション法やストレス発散の方法を取り入れましょう。例えば、ウォーキングやヨガなどの運動、趣味や興味のある活動に時間を割くことなどが有効です。
2. 健康的な生活習慣: 食事、睡眠、運動などの健康的な生活習慣を心掛けましょう。バランスの取れた食事を摂り、十分な睡眠時間を確保し、適度な運動を行うことで、体調を整えることができます。
3. ゆっくりとしたペース: 焦らずに自分のペースで取り組むことが大切です。過度な負荷や無理なスケジュールを避け、十分な休息をとる時間を確保しましょう。
4. コミュニケーション: 周囲の人とのコミュニケーションを大切にしましょう。気持ちを共有したり、相談したりすることで、ストレスを軽減することができます。
5. 自己ケア: 自分自身を大切にすることも重要です。リラックスできる時間を作ったり、好きなことに時間を費やしたりすることで、心身のバランスを保つことができます。
6. 早めの対策: 初期の症状が現れた場合は、早めに対策を取ることが重要です。自己管理が難しい場合や症状が長引く場合は、専門家の助言を仰ぐことも考慮してください。
これらの対策を継続的に取り入れることで、5月病の予防に努めましょう。また、自身や周囲の人が重度の症状を経験している場合は、医療専門家の助言や治療を受けることも検討してください。
何はともあれ、ゴールデンウィーク明けは、要注意です。
参照記事
1. コロナ禍2年目の「5月病」リスクに注意 GW明けに知っておきたい予防対策(海原純子)
プロフィール
雪下 岳彦(ゆきした たけひこ)
1996年、順天堂大学医学部在学時にラグビー試合中の事故で脊髄損傷となり、以後車いすの生活となる。
1998年、医師免許取得。順天堂医院精神科にて研修医修了後、ハワイ大学(心理学)、サンディエゴ州立大学大学院(スポーツ心理学)に留学。
2011年、順天堂大学大学院医学研究科にて自律神経の研究を行い、医学博士号取得。
2012年より、順天堂大学 医学部 非常勤講師。
2016年から18年まで、スポーツ庁 参与。