楽こそ正義。スパイスはかっこよく。
鶴﨑彩乃
「ねぇ。どっちの服が似合うと思う?」
「うーん。どっちでもいいよ。てか、もう出たい。外のイスんとこでゲームしとくわ。」
この会話は、カップルのものではない。小さい頃の私と母のアパレルショップでのやりとりである。
私は、今も服やアクセサリーにさほど興味はない。趣味に使うお金といえば、漫画やゲーム・歴史関係に消えてしまう。しかし、今は以前に比べると「身だしなみ」という常識も身についてはいるので、ある程度意識するようになったが、小学生の私にそんな概念はない。
ちなみに、母が選んでいる服の中には私のものももちろん含まれているわけだが、こちらの気持ちとしては、「服、選ぶのに何時間かかっとんや。」と深いため息をつくのが本音である。母は母で、娘と服選びとかでキャッキャッしたかったらしいので、理想を打ち砕かれたわけだ。なんか、すんません。
私自身に服の好みが表れる年齢になると、メンズブランドやスタッツやドクロを好むようになった。あの頃の私は、厨二病だったんだな。あーあ。顔を覆いたい。 今でも、メンズブランドの方が好きだし、ズボンしか履かない。だって、スカートはスースーして寒い。
しかし、年齢を重ねて違ってきたことも多い。例えば、ハイネックを着なくなった。昔はハイネック、割と好きな方だったと思うのだが、いつからだろう。「なんか、すげぇ下、向きにくいんですがぁ!」と思って、その年の衣替えのときに全部捨てた。
合皮のジャケットもそうだ。例の厨二病期間のときにめっちゃ気に入って着ていたものだったけれど、ある日、「なんか腕と脇が痛い。」と感じた瞬間に今までの愛着はどこへやら、ゴミ袋へぶち込まれたのだった。
そして、1人で過ごすことや遠くに行くことが頻繫になったために、紙オムツやパットの使用頻度が増えたことも服装の変化を大きくもたらすことになった。
紙オムツとパットを併せて使用すると、服が濡れる割合が明らかに減少する。それは真冬である今の時期、とてつもなくありがたいことではあるが、その代わり、お尻がそれはそれはもっこもっこになるので、ズボンのサイズ表記とにらめっこするという事態に見舞われる。
私が、伝えたいことは「障害があると服も自由に選べない。」ということではない。私が、服の好みが変わったというわけではなく、服というものを通して自分自身の身体への捉え方が変わってきただけの話だと思っている。身体は一生付き合っていくものだし。
今の、服選びのポリシーは「楽にかっこよく。」である。身体が楽に保てて、人前に立つこともあるため、多少小奇麗に。最後の形容詞が「かっこいい」なのは、私の好みとキャラの問題だが。まぁ、似ている芸能人も男性を挙げられることが多い私のルックスとも合っているのかもしれない。
毎回、イケメンの名前を挙げてもらえるのが申し訳ない。三代目 J SOUL BROTHERSの岩田剛典さんやフィギュアスケートの宇野昌磨選手といった、このコラムを読んでくださっている人の中にファンがいたら、もう土下座もののごめんなさい案件である。
しかし、このお2人の名前はアテンダントさんに言っていただいた。そう考えると、なんとなくおもしろくてニヤリとしてしまうけれど。
服の価格に関してはうちの家計はいつも財政難のため、セール品やファストファッションだが、最近我が家で革命が起きた。それは、ダウンはやっぱりそこそこの値段をかけると暖かさが違う。暖かさを感じにくい私が、思うのだ。すごい気がする。防寒着にはケチらないでおこうと思った8万円のダウンをゲットした冬。
プロフィール
鶴﨑 彩乃(つるさき あやの)
1991年7月28日生まれ
脳性麻痺のため、幼少期から電動車いすで生活しており、神戸学院大学総合リハビリテーション学部社会リハビリテーション学科を卒業しています。社会福祉士・精神保健福祉士の資格を持っています。
大学を卒業してから現在まで、ひとり暮らしを継続中です。
趣味は、日本史(戦国~明治初期)・漫画・アニメ。結構なガチオタです。