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デリバリーってバリアフリー。 / 鶴﨑彩乃

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約4分

デリバリーってバリアフリー。
鶴﨑彩乃

家のチャイムが鳴った。少し大きな声で「はい。」と返事をした。

それだけで、ドアが開いた。

その行動だけで、「いつもの人」だな。と分かる。

コロナ禍になって、会いたいときに会いたい人と会うことに少し勇気がいるようになった。

リモートで、距離を超えてすぐ会えるようになったりもしたけれど、しかし「リアル」が好きな私は、少し寂しいというかなんともつまらない日々である。

その一方で、コロナがあったからできたのだろうな…という縁もある。

私の場合は、出前である。

もちろん、コロナの前から「出前」のシステムはあったのだけれど、なんと書けばいいのだろうか。

セレブなイメージが私にはあって、友達が遊びにきたときのプチイベント的な感覚があった。

しかし、コロナになって「デリバリー」という言葉が一般的になり、注文方法も電話ではなくネットでできるようになった。

たまに、声がでないことや自分の名前で「かむ」ことが多い私には、とても助かる。

私が、電話口で「つるさきあやのです」と名乗ると、「つのさきあやね様ですね。」と自信満々に言われることが8割ぐらい。

誰よそれ。後の2割は「しばさきあやの」。うーん…。もういいかな?それで。やっぱりあかんよな。おもしろいけど。

というコントも繰り広げなくていいのだ。

お店の人も時間の節約になったはずである。

そして、最近のデリバリーはチェーン店でも実施されているので、非常にありがたい。

ハンバーガー店とかおしゃれなカフェって、座席と机が高いのよ。

車いす・私の座高と合わないのだ。

特殊な実を食べて手が伸びたらいいなと思ったことが、数え切れないほどある。

しかし、店舗の構造以外にも私の1人外食を妨げるものがたくさんある。

コップに入ったお茶が重いから持てないとか、1人じゃ上着が脱げないとか、細々とした理由があると思うのだが、それは私の中でなんとなく言い訳っぽい気がする。

私が1人で外食をしない根本の理由は、「1人だとキレイに食べれるものが少ないから、食べているところを見られるのが恥ずかしい。」というものだと思う。あくまで個人の感想です。

だって、ハンバーガーやピザはものによって「吸血鬼ですか?あなたは?」というルックスになるのだ。

私は、口元の感覚が人より鈍いらしく、大惨事になって顎から垂れてこない限り、自分の状態に気づくのは難しい。

その点、家で食べるのは気が楽である。誰の目も気にしなくていいのだから。

それと、自分で買って来なくてもよいというところも、私にとってはポイントが高い。

出かけられるようにするためには、必ず人の手を借りなければいけないという私のウイークポイントをうまくカバーしてくれるのだ。

デリバリーというサービスは。いやはや。ありがてぇ。

しかもっ!デリバリーは配達員さんが商品をこぼしにくいように工夫されているため、私の手が緊張で勝手に動いてもこぼれにくいので、水分摂取もしやすいのである。

これらの点から考えて、デリバリーってバリアフリーなんじゃね?と私は思うのである。

配達員さんの指定はできないのだが、なぜかマクドを頼むと同じおじさんがやってくる率が、高い。

そして、仲良くなった。

「荷物、重くないんですか?」とか、「車いすでも1人暮らしできるんだね。」などと会話を重ねている。

コロナ禍になって、ご近所さんと交流もしにくくなった今、デリバリーを通して障害啓発や地域防災にも役立ったりするのではないかとぼんやり考えてみたりするのだ。

そういえば、マクドおじさんにチョコ好きってバレてたんだよね…なんでだろうか。

ありがたいけど、だいぶ恥ずかしかった。

プロフィール
鶴﨑彩乃 (つるさき あやの)

1991年7月28日生まれ

脳性麻痺のため、幼少期から電動車いすで生活しており、神戸学院大学総合リハビリテーション学部社会リハビリテーション学科を卒業しています。

社会福祉士・精神保健福祉士の資格を持っています。

大学を卒業してから現在まで、ひとり暮らしを継続中です。

趣味は、日本史(戦国~明治初期)・漫画・アニメ。結構なガチオタです。

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