ALSだって心まで閉じ込める事はできない。さあ、あなたも一緒に出かけましょう
~ 出かけることを決めたなら、不安さえも足元を照らす「よい発想」になる ~

外出先では、普段以上にスムーズな介助や抜かりない準備、臨機応変さが求められます。
その際、クライアントに関わるメンバーでの情報共有が大きなカギとなりますが、松目家ではクライアント―ご家族―支援者でスプレッドシートを共有することで、“みんなが旅行を楽しむこと”を実現したそうです。
意思伝達装置miyasukuを駆使し、準備を進めた玲香さん。実現までには主治医、ケアマネージャー、リハビリ(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)、呼吸ケア機器メーカー等、さまざまな人との関わりがありました。
インタビューの後半では、旅行の準備〜実現に向けて生み出された具体的なアイデアをお聞きします。
▸旅行の準備中に行ったこと、感じていたこと、また旅行前日はどんなお気持ちでしたか?

準備中に行ったことは、ディズニー旅行では、アテンダントさんも一緒に楽しんでほしいという想いから「私にできることは何があるのか」と考え、
USJ 旅行時にアテンダントさんが夜遅くまで実務記録をノートに記されている姿を見て、
「大変そうだなー」って思ったことから携帯電話で選ぶだけで簡単に記入出来るようにスプレッドシートに実務記録を作りました。
これが出来てから、楽しみが倍増し、皆さんにすぐに細かく伝えられる事を知ってからは、
旅行のしおり、スケジュール、やってみたいことリストをスプレッドシートに作成しました。
準備を始めてから旅行前日まで感じていたことは、とにかくワクワクと楽しみという思いしかなかったです。



スプレッドシートを作るのは、例えば「明日、近くのショッピングセンターに行こう」って決まってから、
シートに「何時、どこどこへ」とPCで打ち込んで、その中で買い物リストも作っていくような感じで使ってます。
スプレッドシートは、最初のUSJ旅行の夜の支援時に、玲香さんが寝ている真っ暗なベッドの隣で私たちがずっと記録を書いてたのを見て
「スプレッドシートを作った方がいい」って思ってくださったのがきっかけだったんですが、
今は旅行だけでなく、ちょっとした外出でもシートを作って、皆さんと共有してます。



「受け取るだけじゃなくて発信することが大事」と玲香さんも仰っていましたね。
シートを共有する上で、工夫していたことなどはありますか。



僕はほとんどスプレッドシートには関わってなくて。
事前に送ってはくれてたんですが、「玲香さんの作ったものだから」と信頼もしていたので「いよいよ明日」となってからシートを熱心に見ました。
旅行に関しては、「ちょっとここはタイトなスケジュールだな」と感じたところは伝えましたが、直前だったので玲香さんがちょっとご気分を害されたりーなんてこともありましたね(笑)。
シート自体は、皆さんとのやり取りで出来上がったもので僕はノータッチ。
旅行会社の人と時間の連絡をしたり、チケットをもらいに行ったり、そういう役目だけでした。



スプレッドシートに関しては、「こうしたらもっといいよね」っていう改善点を伝えるとすぐ改善してくださるんです。
玲香さんは本当に仕事が早いんですよ。
あとは自分たちは自分たちで注入の時間や旅行の大まかな時間帯、行動日程をシートに書き込むことで、それを見て行動ができるーー“旅のしおり”じゃないですが、
「もうすぐ注入の時間だな」といったことが簡潔にわかるのですごく助かりました。




▸主治医やケアマネージャーの方に最初に旅の相談をした時はどんな反応やアドバイス、応援の言葉がありましたか?



遠方への旅行のUSJの時でしょうか?
主治医に相談したときは、元理学療法士の経験から私の身体的に今を逃したら次はないと考えていたので、私的には行く気マンマンで、何が何でも行きたいと思っていました。
でもちょっとだけ、ダメって言われたらどうしようって思っていました。
主治医には、「交通手段、サポートメンバー、家族は誰が行くか」を聞かれました。
あとは私が思ったのとは意外と違って主治医から『素晴らしい』って言って頂き、私の方がビックリしました。
加えて『しっかりとした準備をしましょう』とも言って頂き、安心し、心強いと考えました。
ケアマネさんもとてもびっくりされていましたが、すぐに『関係各所と準備をしましょう』と言って頂き有り難いと考えました。
言語聴覚士の方には、『同病の方がUSJに家族旅行に行かれます。松目さんも外に出てみませんか?』って話をして頂き、
「偶然にも私も家族旅行に行きたい話をしています」と話すと『是非チャレンジして行ってみてください』と背中を押して頂きました。
土屋さんに出会えて、重度訪問介護事業所によってこれほどの違いがあるのかと感じました。
これには、以前利用した訪問看護、訪問介護、重度訪問介護は年末年始は基本的に休みで、この時期は家族のみでの介護をすることを求められていました。
和己さんが「家族のみで介護をしないといけないなら楽しんでしよう」と家族旅行をしたときもありました。
私は家族に申し訳ない気持ちでいました。
土屋さんは年末年始もサポートしていただけると聞いてまずとても驚きました。
「私の今までの家族に申し訳ない気持ちは何だったのか?」と思いました。
なぜかと言うと、サポートがないから年始に家族旅行をしようとしていたからです。
また、相談した時に『USJに行きましょう』と答えて頂けて嬉しい気持ちの上に『行けますよ』ではなく『行きましょう』と、この言葉に私の気持ちに寄り添っていただけているかと嬉しかったです!
解決すべきは、私の体調を心配して無理をさせたくない和己さん。
三男との約束
(※松目家では長男・次男の小学校卒業祝いにディズニー旅行を実施。三男とも「僕が6年生の時に連れてきてね」という約束をしていたが、その後、玲香さんの病気がわかり、行けないままだった/編集部注)を守りたくてディズニー旅行に行きたい私。
「先延ばしなんて身体的にできないよ」とも思う私。
なかなか遠方への旅行には許可をもらえませんでした。
粘り強くわがままを言い続けた私。
話し合って、和己さんと私の希望の間をとって、USJに決まりました。
USJ旅行とディズニー旅行も私が思っているよりも前向きな言葉をみなさんに頂き、応援してもらえたから頑張れました。
〜「ディズニー旅行を実現には」 その2 ~ 玲香さんが作成されたパワーポイントの資料より
スプレッドシートはPCだけでなく、スマートフォンからも入力ができるので、誰もが気軽にアクセスし、気づいたタイミングで記入や確認ができ、随時更新していける利点があります。
「(アテンダントさんも)なるべく一緒に楽しめるように」という玲香さん発信のアイデアです。
<皆さんと共有していたスプレッドシートやリスト、スケジュール>






▸準備中〜移動中〜旅行中、実際にどのようなサポート/アイデアが役に立ちましたか?また、「こんな支援やアイデアがあったらよかったな」というものがありましたら教えてください。・ ・ ・



準備の支援は、おしゃれをして行きたい私の希望に寄り添い服をコーディネートしたり、ネイルをしてもらったり、どうしても増えがちの旅行の荷物を厳選して準備をして頂きました。
移動中の支援は、揺れないようで揺れる新幹線内の注入とトイレの場所にあった支援です。
服薬用の作業台テーブルや半固形ラコール(経腸栄養剤)を温める袋などの工夫とアイデアでして頂きました。
旅行中の支援は、場所によって違う多目的トイレでもスムーズに対応してもらい、パークが混んでいる中、私の「見てみたい」「行ってみたい」を叶えてくれました。
医療用ベッドやエアーマットが簡単にどこでも旅行先でもレンタルできるようになればいいなと考えました。
旅行の支援は普段とは異なる対応を求められるように考えられる中、場面に応じた質の高い支援を頂きました。



―今回の旅行では、宿泊先には事前に状況を相談したのでしょうか。



そうですね。
部屋の状況を聞いたり、準備してほしいものを皆さんと共有してからホテル側に「こういうものが欲しいんです」――例えば「クッションや枕をちょっと余分に貸していただけますか」とかーーを事前にやり取りする機会もありました。
部屋もユニバーサルルームをできるだけ選択しました。
バリアフリーの部屋で、空間がひとつひとつ広めに作ってあって、トイレも広めだったり。



USJの時はお風呂にチェアがついてましたよね。
段差がないので、車椅子が通りやすい部屋でした。



USJの時はユニバーサルルームに泊まれたんですが、ディズニーの時は空いてなかったんです。
でもそこは、皆さんが現場に応じて工夫して対応いただいたことも大きかったかなと思います。








▸旅行中に困ったこと、今だから話せる失敗談や予定通りいかなかったこと等をお聞かせください。



旅行に向けては、「じゃあ、近くのショッピングモールに行った時に注入してみようか」とか、
映画に行った時に「その想定で注入してみようか」っていうふうに事前にシミュレーションして取り組んでくださっていました。
その都度、「ここはこうした方がいいね」「こういう道具があったらいいかもね」と改善した上で本番を迎えられたので、
細かい準備ひとつひとつがうまくいった秘訣だったのかなと思います。
それから、今になって面白かった出来事はーーパーク内の位置関係を僕がよく把握してなかったり、駅の構内も把握してなかったので、
トイレや出口がわからず、今回のディズニーランドに関して言えば、2回だけ、ちょっとした言い合いをしたのはありましたね(笑)。
でももともと、僕が言い過ぎてしまった時は次の日に引きずらないよう心がけていたのですぐ仲直りをしましたが(笑)。



旅行で気をつけた点に関しては、主治医の先生の指示の下でやることの確認ですね。
例えば、「同行するスタッフの中に看護師資格がある方を必ず1人つける」といった条件を提示していただいたり、
玲香さんが夜間は人工呼吸器を装着してるので、そこに関する指示をいただきました。
それから、普段からの感染予防ですね。
USJの時は「感染症にかからないようにしよう」と、体調管理は玲香さんも私たちもすごく気にしてました。
あとはそんなに困ったことはなく、「思いっきり楽しむぞ」っていう感じでしたね。
大晦日の日の朝の5時半出発だったんですがーーいろんなテンションがまじり過ぎて、私は一睡もできずに玲香さんの家に着いて「寝れなかったです〜」って。
個人的に大変だったのはそこだけです(笑)。
武原さんも協力してくださったし、楽しかったことしか覚えてないですね。



私はUSJもディズニーも一緒に行かせていただいたんですが、USJでは1から準備をして、玲香さんと一緒に「こんなふうにしたらどうかな」といった提案をさせてもらいました。
そこである程度土台ができていたので、ディズニーではスムーズに準備ができたかな、と思います。
あと、USJは川畑さんと行かせてもらったんですが、ディズニーには別のアテンダントの方と行ったので、
初見のトイレを使うことになるので、和己さんと介助する時と彼女と介助する時のシミュレーションを前もって準備しましたね。



初見のトイレは大変なんですよね。
トイレが右に設置してるのか、左に設置してるのか、それだけで介助の仕方がずいぶん変わってくるので。








〜「ディズニー旅行を実現には」その3 ~ 玲香さんが作成されたパワーポイントの資料より
玲香さんが作成した資料には、旅行前に「誰に」「何を」「どういう順序で」準備を進めるとよいか、という実行までのフローが当事者目線で細やかに記録されています。












▸これまでの旅行(や冒険)で最も印象に残っているのはどんな場面ですか?また旅行後、印象に残った声や言葉がありましたら聞かせてください。



最も印象に残っている場面は、やはり初めて小さな冒険に行ったパン屋さんです。
あの時の和己さん息子達の「ワーッ!ありがとう」って言ってくれた言葉です。
驚き?喜び?ホント?だったかもしれませんが、心にしみてまた、聞きたいと思ったからです。
この経験は、USJ旅行中のニンテンドーワールドエリアでありました。
土管を通り抜けたらそこはマリオゲームの世界で、「ワーッ!スゴッ!」を和己さん息子達、アテンダントさんからも聞けて心が揺れました。
家族だけではなくアテンダントさんも一緒に感動して共感出来たことが嬉しく思いました。
この感動は、加えてディズニー旅行時、ファンタジースプリングエリアに入った時にありました。
アテンダントさんも一緒に高揚感を共感出来て嬉しかったです。



先ほどもお伝えしたように、普通に歩いても大変な距離を外出したって聞いた時に「えー?」と思ったのが本当のところです。
ひと駅分の距離があったので、その距離を自分だけ歩くのでも大変だと思うんですが、
車椅子の玲香さんを押して、荷物も持ってしてくださったことが感じたことのない感動というかーー感謝の気持ちがまずあったのが一番でしたね。
「その距離を一緒に行ってくださったんだ」とありがたい気持ちでいっぱいでした。なので、どの場面というよりは、1回1回、楽しい出来事ばかりで。
あとはここにも本人が書いてくれたように、玲香さんも含めてみんなで同じ場面を共有できるーー子どもたちも、支援してくださる皆さんも一緒に感動できるのは、他にはないと思います。
この質問用紙は、玲香さんが送ってはくれてたんですが、僕はあまり見てなかったんです。
「こんなふうに書いてるんだ」って思いながら聞いていて、でも今日一番感じたのは、今のこの部分ですね。
皆さんと思いを共有できたことが、今の玲香さんの力になってるんだなっていうことを改めて感じたのと、
だからこそ次から次へといろんな旅行先や、イベントの外出を玲香さんが思いついて、提案して、計画が生まれてくるんだなっていうことを改めて感じることができました。
あとはーー以前は「うまくいかなかったら…」「何かが起こったら…」っていう気持ちが先にあったんですが、土屋の皆さんが「まずやってみよう」、
「そこからまた次を変えていけばいいんじゃないか」っていう考えでいてくださるのが僕らにとってはすごくありがたいことです。
玲香さんはもっと強く感じてると思うんですが。
もちろん失敗もあると思うんですよね。
でも、失敗を恐れずにまず行動してくださるところがいちばん嬉しい部分です。



たくさんいろんなところに一緒に行かせていただいてて、どの場面もすごく記憶には残ってるんですが、最初、パン屋さんに行った時のことは忘れないですね。
それから、ショッピングモールに行った時、玲香さんが服を試着された時があって、その時、「ずっとこういう関わり方ができればいいな」ってーー。
障害があっても、私たちとなんら変わりなく過ごせたらいいな、そして松目さんだけではなく、重度訪問介護を通して他のクライアントともこういう関わりができたらいいな、と感じました。



和己さんも仰ってくださったんですが、外出は細かい失敗とか、物品忘れたりとか、本当にあげたらきりがないんです。
でもそういうことも松目家の皆さんは笑って許してくださったり、失敗から学んで次に繋げていけました。
今、振り返るとそれも楽しい話題になったりもするんですよね。
それから外出を通して、お子さんたちとも「今日はどこに行くの」「どこに行ってきたの」っていう会話ができて、私たちもご家族とのコミュニケーションが増えたことも大きかったと思います。
一緒にいろんなところに外出をして、玲香さんの目を見ながら一緒に買い物をしていると、ご家族がどういうものを好んで、というところが少しずつわかってくるんです。
玲香さんが選んだものが「これは誰に買うものだね」ってこちらがわかった時の、「そう、それそれ!」っていう笑顔。
その時に、より近づけたというか、わかり合えたな、と。
それは外出の数を重ねていったからできたことだと思ってます。




▸普段関わるおふたりに伺います。玲香さんとのコミュニケーションで工夫されていること、大事にされているのはどんなことですか?



コミュニケーションはずっと対等でいることを意識してます。
変な意味で特別視しないというか、しっかりと向き合ってコミュニケーションを取っていく。
あとは、玲香さんだけじゃなく、ご家族が好きなものにも目を向けて、興味を持つようにしてます。
それから、他のスタッフも気を付けてくださっていると思いますが、玲香さんの支援ではあるんですが、
玲香さんを中心に、和己さんや息子さんたちも含めたまわりの皆さんとの関わりが大事かなと思ってるので、そういったところを気にかけてる感じですね。
ニコニコ、笑顔になるように心がけたりはしてますが、あんまり取り繕った感じではいないようにはしてます。



コミュニケーションとしては、まず第一に、「玲香さんがどう思うか」ということですね。
miyasukuでよくおしゃべりをしてくださるので、1週間ほど空いて久しぶりに支援に入る時はいろいろ話を聞くことをしてますし、自分も玲香さんに自分の話をしてます。
玲香さんも話をしてくださるので。
玲香さんが「こうしたい」っていうことがあったら、それを一番に考えてするようにはしてます。




~ これから ~
旅行の資料の最初に、「本日伝えたいことは受け身では、人は動かないと感じた話です」と書かれていた玲香さんは、自ら伝え動くことでまわりを巻き込み、地道な準備をかさね、思いを形にしてきました。
今も次々と生まれる野望――インタビューの最後は、玲香さんと和己さんにこれからへの想いを伺いました。
▸これから行ってみたいところ、挑戦してみたいことはどんなことですか?



行ってみたいところは、たくさんありすぎて書ききれるか!?
ランキングで書きますと。
1)長男次男の職場•アパート
2)B’z ライブ
3)飛行機に乗る
4)リベンジディズニー
5)ドリカム ワンダーランド
6)東京ドームジャイアンツ戦 とびきりいい席で
7)ディズニークルーズ旅行日本
8)福山雅治年末ライブ
挑戦してみたいことは、USJ 旅行の介護事例に協力させて頂いてから、「こんな私でも何かしらのやれることがあるかも」と考え始めました。
大勢の人の前で話をできるくらいになり、日本全国を回れるぐらいの人になりたいです。
まずは、日本ALS協会主催の『自分をプレゼン!』(※ALS当事者がそれぞれの思いや生き方についてプレゼンテーションを行ない、当事者だけでなく支援者を含めたたくさんの人とつながる場/編集部注)に応募することから始めたいと考えています。



この一番目は短期間で計画も立てられるし、それこそ玲香さんの思いつきでできそうな、松目家にとっては比較的、簡単な課題ですね。
「天気もいいし、時間もあるし、皆さんの支援の日だし、行ってみようか」っていう感じで行ける。
2番は僕らも「行ってみたいな」と思ってるので、これもぜひ行けたらなと思ってます。
3番の飛行機に乗るのは大きな課題――実際それができるかどうかですね。
ディズニーに関しても、車椅子で飛行機の椅子に着座することは今の状況では難しかったのと、今回は「新幹線で東京まで行くこと」がひとつのテーマとしてもあったので、新幹線で行く方が安全性を確保できるのかなと思ったりしてます。
4番目のディズニーは常に思ってるらしくて、なぜかたまに「ここが今空いてるよ」とかホテルの案内を僕にしてくれるんですが、僕は聞かないふりをしてます(笑)。
あと、5番目のドリカムは、1月にディズニーに行って、同じ月になぜかドリカムのライブまで行かされてーーいや、行かされてじゃなかった、喜んで行きました(笑)。
これもいつの間にかファンクラブの会員になってらっしゃったりするので(笑)。
ドリカムも僕と出会う前から玲香さんが好きなアーティストだったので「また行けるといいな」とは思ってます。
6番目はジャイアンツが好きなので、鹿児島でオープン戦があった時も行ったんです。
ジャイアンツ戦と、東京ドームホテルの宿泊は新婚旅行で行ったのでそれもあって。
推しの選手もいたりするので、それもいずれ、行けると“いいですね”(玲香さんに)(笑)。
ちなみに、ディズニーも新婚旅行で行ったんです。
玲香さんは僕より多く行っていて、玲香さんにとっての聖地なので。
また何年後ですかね。5年後、10年後ぐらいかもですねぇ。
まぁ、あまりこの辺は触れずに次に行きましょう(笑)。
ここにあるような他の人に向けた情報発信――自分でプレゼンに応募してみたいということも書いてるので、ここはすごく旅行より後押ししたいですね。




▸ご自身のこれから、ご家族のこれから、未来に願うことがありましたら聞かせてください。



ALS に罹患して 8 年目で、「まだ」と感じたり、「もう」とも感じたりします。
和己さんには、思い描いた未来とは大きく変わってしまいましたが、ここまで来るまでに良く支えてもらいました。
和己さんの人柄と決断力のおかげです。
和己さんが自分の為に使える時間を持てるようになればいいと思います。
息子達には、母親が重度障害者で可能性を奪ってしまったと何度も考えましたがあなたたちがいてくれたから頑張れます。
夢に向かって突き進んでほしいと思います。
これからも仕方ないなぁと言いながらも私のわがままに付き合って下さい。
私は和己さんとアテンダントさんも一緒に息子達の成長が見たいと思います。ALSの薬が開発され治る病気になることを切に願います。
51 歳になる私の伸びしろを信じて一日一日を過ごし積み重ねた先に想像を超える自分になれればいいと思います。



病気がわかる前後の頃は、すごく泣いた時期があって、「もうそういうことはないだろうな」と思ったんですがーー今の部分を見て、改めて玲香さんの思いを受け止めること、知ることができました。
「2人で一緒にいろんなところに行って、いろんな楽しみをして、たまには喧嘩もしながらおじいちゃん、おばあちゃんになっていくんだろうな」と思ってたので。
そこはちょっと変わった形にはなったんですが、皆さんとのご縁もたくさんいただけてますし、こういう経験をしたからこそ、これからの歩みも違ってくるのかなと思います。
玲香さんも言っていたように、おしゃれなものや身の回りのものを一旦捨てたんですよ。
「もうディズニーも行けないだろうな」と思って、2人で「これどうする?」「じゃあ、捨てようか」なんて言いながら。
そんなこともあったんですが、まさかこんなふうにまたディズニーのものが増えてくるなんて想像もしてませんでした。
もっともっと玲香さんにおしゃれもしてもらいたいし、もっともっといろんなことを一緒に楽しめればと思います。
繰り返しになりますがーー病気がわかる前後、僕らは下しか向けなかった頃がありました。
A L Sという病気は今もあるわけで、僕たちより後に病気に罹患された方もいらっしゃると思います。
そういう方々にも情報発信をしていければ、また違う形での生きがいというかーー前向きな思いを感じてくださる方が1人でも2人でもいらっしゃるといいなと思います。
子どもたちも含めて、「こういうふうに賑やかに過ごせることもあるんですよ」「こんな生き方もあるんですよ」ということを周りの人にも発信していけたらいいなと思うので、
もっともっと玲香さんの発信の技術が上がってくれることを願ってます。
松目家の挑戦はこれからも続いていきます。
最後の質問では、ふと涙を見せた玲香さん。
その後、和己さんが語った言葉にはこれまで家族5人でともに過ごし、感じてきた数々の想いが込められていたように感じます。
「重度障害者でも社会に必要とされたい、家族に必要とされたいです。居場所が欲しいです。それが『生きていい』と言われているように感じ、活力になります」と話していた玲香さん。
その居場所は玲香さんの声の発信、そして思いを共有する人とのやり取りを通じて少しずつ広がっています。
松目家の挑戦はゆるやかに、そして形を変えながらこれからも続いていきます。

