あなたの教えは、今も健在です。
杉田宣惠
雨降る夜に、あなたは突然遠くに旅立ってしまいました。
寂しい家庭環境のせいか言葉が激しく、アテンダントが長続きしなかったあなた。
そんなあなたの支援に初めて入ったのは、ちょうど2年前でした。
先輩アテンダントの手技を必死に学んでいる私に、何故だか「あんた馬鹿ね?」の一声。
一瞬ムッとしましたが、私は聞こえてないふりをするのが精一杯でした。
あなたへの支援に慣れて打ち解けてきた頃、「あの時私に馬鹿って言いましたよね?」と聞いた時の、誤魔化しの笑顔が今でも忘れられません。
あなたの排泄介助をするとき、「トイレに移乗しての介助の経験は多いけど、ベッド上での介助は経験不足で下手なんです。ごめんなさい。」と伝えたら「訪問介護はね、経験の長さじゃないよ。どれだけその利用者に合った介助ができるかなのよ。ベテランほど自分のやり方を押しつけてくるから嫌なのよ。だから、私の支援に来たら私に合った支援をしてくれればそれで良いし、私が全部教えるから私のことは私に聞いて。」と言われましたよね。
いま担当しているクライアントが、関わるアテンダント全員に向けて『私のことは私に聞いてほしい』と発信されたとき、あなたのことを思い出して目頭が熱くなりました。
身長が低く力のない私に、研修では教えてもらえないようなコツを教えてくれましたよね。
あれは、体格の良いクライアントにも有効でしたよ!!
苦手だったベッド上の排泄介助、「杉田さんが一番丁寧よ。」って言ってもらえたときは、経験値があがった気分でした。あなたが介助のとき「何度も右向いたり左向いたりさせられるのは体が辛い!」と言っていたのを思い出し、自分の体も守りつつ、もっと負担を少なく介助できるやり方がないか?と常に考えて支援しています。
クライアントの声を聞き、寄り添う支援を心がけると、たくさん笑顔をいただけます。
私が今も訪問介護という仕事を楽しんでやれているのは、きっとあなたのおかげです。
今ならもう少し上手にできるかな。