介護をビジネスに…良いの?悪いの?
尾上悠太
「介護をビジネスにすること」は、昔から賛成と反対の両方の意見があります。
介護ビジネスは高齢化社会において必要不可欠なサービスであり、社会的貢献度が高く市場規模も大きいため経済的にも魅力的であること。また、施設での入所介護や通所介護、私たちが携わっている重度訪問介護など、一人一人個性を持った多様なニーズに応えるためにイノベーションや介護ロボットなどの技術の導入が可能といったことから多くの賛成意見があると考えます。
逆に、介護ビジネスは人間の尊厳や生命を扱うものであり、利益追求のためサービスの質や倫理が犠牲になってしまう恐れがあるといった点や、公的な介護保険制度に依存していることで、制度改正や財政難によっては介護難民を多く出してしまう恐れがあるといった点から反対意見もあると考えます。また、介護という業界にはきつい・汚い・給料が低い、の3Kというイメージにより、そもそも深刻な人手不足があり働き方改革や待遇改善を行う必要があると考えます。
そのため、一番初めの話に戻りますが、介護をビジネスにすることについては、「一概に良いとも悪いとも言えない…」というのが、私の正直な感想です。
ただ、人口の20%が75歳以上になるという2025年問題を控え、また障害者の総数も1000万人に迫る日本の現状を考えると、どうしてもボランティアだけで…というのはやはり不可能でビジネスとしての介護は必要かと思います。
介護ビジネスを行う上では、介護が必要な方々やその家族が安心して快適な生活を送ることが出来るように適切なサービスを提供するという【社会的ニーズ】と、介護事業者や従事者が事業の継続や発展を図ることが出来るように適切な収益や報酬を得るという【経済的利益】のバランスをとることが重要ではないでしょうか。
しかし、この2つのバランスをとるということが介護ビジネスにおいて一番難しい問題だと思います。
社会的ニーズを満たすためには、クライアントやご家族の声を聞き、個別化・多様化したサービスを提供する必要があります。しかし、そのためには多くのコストや時間、人員などのリソースを消費することになります。
経済的利益を得るためには、コスト削減や効率化などの取り組みを行う必要があります。しかし、これはサービスの質や倫理を低下させてしまうことになります。
このように、これら2つはしばしばトレードオフの関係にあると言えます。ただ、出来る限りこの2つのバランスをとるためには、積極的に補助等を活用する、ICTを導入して「業務効率やサービスの質向上」につなげる、事業者間の連携や協力を促進して「ネットワークや知見を共有する」、働き方改革や待遇改善を行って「従事者のモチベーションや満足度を高める」など、他にも様々あると思いますが、こういったことが必要だと考えます。
色々とズラズラ書きましたが、まずは今いるクライアント・アテンダントに日々真摯に向き合って、誠意をもって対応していくことがコーディネーターとしての私の役割ですし、それがいずれ社会的ニーズと経済的利益のバランスをとることに繋がっていけばいいなと思います。
最後までご高覧いただきありがとうございました。
プロフィール
尾上 悠太 ホームケア土屋 長崎
長崎県出身。釣りが趣味。