『祭を模倣する、神楽を再現する』 / わたしの

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『祭を模倣する、神楽を再現する』
わたしの

先人たちの偉大な発明である祭を模倣したいんだ。

現代を生きる我々が立ち上げた、この新しい祭において神楽を再現する。

ここにカオスを作る。

いいか、野郎ども。

今を生きる。

いのちを燃やそう。

それぞれが一度きりの人生を生きている。

自分とはちがうほかの宇宙だ。

その、ほかの宇宙がその日その時間だけは同じ場にいる。

そこにはなにか意味があるのではないか。

言葉はいらない。

できれば概念は薄く溶かしたい。

振りゃいいんだ。音にまかせて。

20分間音を鳴らす。

自然と交感する。奉納する。

あの世とこの世のコール&レスポンス。

日常的な憂鬱や悲しみがどうでもよくなっちゃうくらい。

そんなものを噴き飛ばすくらいの何か。

世界を激しく揺さぶる何か。

その時間だけは爆発的な何か。

壊してやろう。

魑魅魍魎呼ぶぞ。

百鬼夜行じゃ。

『名前のない幽霊たちのブルース』

やつらは戻らない(so you know ?)

帰ってくる気もないだろう

名前のない幽霊たちのブルース

やつらはお腹すかない(知ってんの?)

だけどおやつは別腹さ

名前のない幽霊たちのブルース HO-NO!

2018年の記憶。

私たちは『名前のない幽霊たちのブルース』という曲を作りました。それはある事件がきっかけでした。レクイエムであり、私なりの声明でありました。私の世界への対峙の仕方であり、私のあり方の表明でもあったのです。

ブルース(Bluse)

「アメリカ深南部でアフリカ系アメリカ人から発生した音楽。19世紀後半に黒人霊歌、フィールドハラー(農作業時の掛け声)、ワークソング(労働歌)などから発展。身近な出来事、感情、悲しみや憂鬱、ちょっとした幸せを12小節にのせて歌うジャンルである」

ブルースというのは自由な表現でありますが、日本の俳句と同様ルールが決められている部分も多く、基本的には形式が決まっており4小節×3で表現されます。枠があるからこそ自由でもあるのです。

形式的なコード進行で成り立っているので単純なコードを押さえることができれば誰でも演奏が可能です。言ってしまえば飛び入り参加も可能です。

この曲にはどんなものも受け入れ可能な寛容性が必要でした。大きな器がほしくて、そのために誰でも参加できるブルースを選びました。

少し音楽を知っている人なら演奏ができるし、まったく知らない人もマラカスやタンバリンを振るというリズム隊として参加できます。

とにかく振りゃいいんだ。音にまかせて。音にゆだねりゃいいんだ。

「言葉はいらない」なんてよく耳にするフレーズですが、『名前のない幽霊たちのブルース』の時間は本当に言葉はいらない。「音」があればいい。老若男女問いません。誰だっていい。お金もいらないし。資格の有無も、「できる―できない」も関係ありません。

ブルースの一つのパターンとなっているのが間奏でそれぞれの楽器がソロを取るというやつです。間奏ではマリンバ→ピアニカ→パーカッション→エレキギターといった具合に順々にソロを取っていくことに決めました。さらにこの曲は神楽を再現することを標榜しているのでどのようにその要素を入れるか話し合いました。

まずこの曲では小さな楽器をたくさん用意して参加者も一緒に演奏し、シンクロすることでその場を特別な空間に演出しようと計画しました。

そしてその空間で曲の途中に観客とやりとりするような場面を作ることにしました。

通称「あの世とこの世のコール&レスポンス」。

子どもたちが「お菓子がほしい」と歌います。我々は「お菓子はあげない」と答えます。

「お菓子がほしい」

「お菓子はあげない」

「お菓子がほしい」

「お菓子はあげない」

「お菓子がほしい!」

「お菓子はあげない!」

そのコール&レスポンスを繰り返し、そのやりとりがひとつの高まりへと到達したとき「お菓子をあげる!」と答え、お菓子が登場するというシナリオです。

どのようにお菓子が登場するかというと、神楽でよくあるのですが神楽殿の上から餅やお菓子を撒くあれをやってみたいと思いました。棟上げ式でもやりますよね。撒くやつ。子どもの頃熱中したのを覚えています。あれを再現してみたい!その時観客と演者が混ざり合い、そこに神楽が持っている独特なカオスの世界が現出するのではないかと画策しました。

2018年11月18日(日)、深まった秋のよく晴れた日でした。町の商店街が企画した年に一度の秋祭り。会場は公園の原っぱでした。ステージはなくバンドが陣取った前になんとなくお客さんが座ったり、遠巻きに眺めていたりしました。焼きそばや綿菓子の屋台が出て、だるま作りのワークショップが催され、小さい子どもを連れたお母さんたちの層を中心に多くの人で賑わっていました。

初LIVE から比べると「わたしの」の知名度も少しは上がっているようで、演奏を楽しみにしてくれる方もいて、ありがたいことにバンドの前に座って開演時間を待ってくれてもいたのです。

このあといよいよ『名前のない幽霊たちのブルース』を実際に演奏するのですが、今日はここでお時間がきてしまいました。つづきはまた今度にさせていただきます。

ーつづくー

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