ありのままの自分になる
岡本朱一(ホームケア土屋 高崎)
「私も人間なんだから、時には利用者と喧嘩することもあるわよ。お互い対等な立場で自分の言いたいこと言うよ、私は」
以前勤めていた施設(特養での話)でこうズバッと言い放った方がいました。
実際、キツい口調で、時には心配になるほどハッキリ物を言うので、事なかれ主義の自分には絶対言えない言葉だなと、その時は思いました。
前職は、介護老人保健施設で高齢者の介護をしていました。
そこでは、利用者の尊厳について、非常に良く考える機会を与えて頂きました。
普段何気なく行っているケアも、実は外部の人が見ると「えっ!?」と思う事が多々あることに、気付かせてもらいました。
その「えっ!?」という気付いた内容をご利用者の為にいざ見直そうと思っても、既に習慣化して、職員が慣れている手順を見直すとなると、「手順が増えてしまう」、「必要性を感じない」という理由で嫌がられてしまい、なかなか思うようにはいかなかったです。
しかし、少なくともこの仕事を選んでいる方々なので、ホスピタリティはあります。
ご利用者の為になることをキチンと説明して、みんなが実行可能な形での改善であれば、受け入れてもらえ、実際に改善することができました。
そういう経験があって、私はご利用者の尊厳・自己実現という事にしっかりと向き合い、サービスの質、尊厳への理解を深めていって、またそういう質の高い職員が多い施設にいるとの自負がありましたが、ホームケア土屋に入ってすぐに自身の認識の甘さを痛感しました。
以前も訪問介護で居宅に伺う事はあったのですが、デイケアやショートステイで見知った方であるため、在宅での自由の中にも我々に対する気遣いがみられ、施設時と変わらない応対、ケアでも特に問題はありませんでした。
ところが、ホームケア土屋で重度訪問介護の支援に入ったとき、各家庭でこと細かな取り決めがあり、またクライアントから細かい指示があり、介護技術も今まで学んできた手技と違うものが必要とされ、間違うと注意され、これまで積み上げてきた知識・技術が通用せず、自分の見識の浅さに愕然としました。
「このままやっていけるのだろうか?」と自問した事も何度もありました。
そんな中でも、支援を続けることで、徐々にクライアントの気持ちが見えるようになり、クライアントが在宅生活の中でしっかりと自分を出して、自分にとって心地良い生活を求める姿である事を理解できるようになってきました。
ただ、理解とは別に、中にはこれは流石に出来ないと思う内容もあり、事なかれ主義で事を荒立てないようにしたい私なので、(嫌だなぁ、言いたくないなぁ)と想いながら、出来ないことがあることをハッキリお伝えしました。
すると、「そう、私も自分の希望を伝えるし、あなたも自分の意見をキチンと伝えて欲しい。そうやってお互い理解し合いたい」と仰っていただいたときに、冒頭の発言を思い出しました。
我々の仕事は命を預かる重要なお仕事で、その中には、医療的ケアも含まれており、出来ること、出来ないことの判断基準は大変重要になっています。
在宅生活という自由さの中にも、時にはぶつかってでもしっかりとお伝えしていかなければならないというこの仕事は、とても大変です。
間違いなく大変です。が、貴重な体験を今させて頂いていると感じています。
クライアントが「ありのままのじぶん」で生活できるように、クライアント・介助者が互いの立場を尊重して、今後も支援させていただこうと思います。
プロフィール
岡本朱一 ホームケア土屋 高崎
かなりのインドア派で、YouTubeやNetflixなどの動画サイトやライブ配信サイトで何時間でも過ごせるオタク気質の43歳、メタボ系ちょいダサおやじ。
介護経験は、介護老人保健施設で8年。施設では、フロア主任を勤めさせていただいておりました。
私のお師匠に当たる方から、ご縁があって株式会社土屋に入社。
高齢者介護の考えと通ずる所と、異なる所があって日々勉強の毎日です。
保有資格は介護福祉士。