みなさま、こんにちは。広報土づくり12月号は増刊号!福岡在住の成清恵規さん(脳性麻痺)、そして長崎市在住の髙垣紀明(多系統萎縮症)さんお二人のクライアントインタビュー内容、クライアントならびにクライアントご家族へのお願い、顧客満足度調査アンケートへご協力のお願い、こもちゃんTV1周年を迎えた想い、土屋パブリッシング開設!などなど!様々な話題をお伝えするよ♪
成清恵規さんインタビュー
クライアント紹介1人目は福岡県柳川市のクライアント、成清恵規さん。生後2か月の時に高熱が続いて、脳性麻痺に。アテンダントの二又里恵さんの通訳で、成清さんの素敵な素顔に迫ります。
【プロフィール】
- お名前:成清恵規(59歳)
- 病名:脳性麻痺(発語障害あり)
- 宝物:江川卓のサイン(名前入り)
- 特定非営利活動法人NPO かりん 理事長
【少年時代】
僕が育ったのは福岡県遠賀郡芦屋町。
海に近く、競艇場と航空自衛隊の基地がある町です。
当時は就学免除といって学校に行かなくてもよかったんですが、それではやることがないので、両親が障害者の家族と一緒に芦屋町に呼び掛けて、「すぎな園」という施設を作ったんです。
初めは利用者も6人ほど。そこに10歳から通って、学習やリハビリをしていました。
【淡い初恋】
すぎな園での一番の思い出は初恋(笑) 相手は先生。
冬休みに入って会えなくなって、でも会いたくて…その時期に流行っていたのが郷ひろみの「よろしく哀愁」。その中に「会えない時間が 愛 育てるのさ」というフレーズがあって、それが胸に響きました。
けれど冬休みが明けてやっと会えたその日に結婚発表。見事に失恋しました…
【恋愛カレンダー】
成清恵規さん作の日めくりカレンダー。なんと、公開ラブレターです。果たして成清さんの4度目の恋のお相手は…離れていた人をもう一度呼び戻した幸運のカレンダーです。
【カレンダーの内容】
「もし仮に 余生が20年あるとして それをかければ君、口説けるか」
「一生涯 結婚せぬと君は言う それをよすがに片恋続ける」
「君住む地 災害速報出るたびに 大丈夫かと胸がざわつく」
「もし僕が 一人で電車に乗れたなら 今すぐ行きたい 君のいる町」
【火事、そして死を思う】
12歳の時、家が火事になって、それから父親が電気屋を始めました。
僕は電気屋の2階に住んでて、母親に背負われて毎日、階段の上り下りをしてたんですが、19歳のある日、母親が階段から落ちて足を骨折してしまったんです。
僕は柳川の祖父母の家に預けられました。その時、「もしこのまま自分が生きていたら、誰かを傷つけたり、死なせたりするかもしれない。それなら、自分が死んだほうがいい」と考え、祖母の裁縫箱から剃刀を取って、足首の血管を切ろうとしました。
けれど、深い傷が入らなくて、当時家で飼ってた九官鳥につつかれたということにしてごまかしました。
【「COSMOS」に救われて】
僕は本が好きで、ある時、カール・セーガンの「COSMOS」に出会いました。
そこに記されていたのは、命というもの。生命は140億年前のビックバンから始まって、悠久の時を経て、ようやく自分にたどり着いた。
その本で命の大切さを知り、死を考え直せました。
【博識の人、成清恵規】
読書家の成清さん。
存分に読めるように、アテンダントが本を朗読してボイスレコーダーに音声を取り込んだものを夜に聞いているそう。
今はベネディクト・アンダーソンの「想像の共同体」、石川康宏の「マルクスのかじり方」、井尻秀憲の「台湾政治外交史」、そして司馬遼太郎の「街道を行く」を読んでいるそう。
お気に入りの本は塩野七海の「ローマ人の物語」、そしてもちろん「COSMOS」。
【故郷、柳川へ】
成清さんはパソコンを左足で操作、巧みにキーボードを打ち込み、共同作業所「宝箱」の会報を作成しています。
以前は毎月、自分のコーナーに文章を書いていました。3日間徹夜して玄関先で眠り込んでしまったこともあるそうです。
現在は体力が落ちたことから4か月に1回、執筆しています。
【困難を乗り越え、一人暮らしへ】
僕が一人暮らしを始めたのは今から20年前の39歳の時。
当時は柳川市のヘルパーの時間数が最高で月15時間。それでは生活ができないので、柳川市と交渉して96時間にしてもらいました。
ただ夜一人だと困るので、「柳川リハビリテーション学園」の学生さんに募集をかけたところ、ボランティアで入ってくれました。最初の半年は共同作業所「宝箱」に居候したり、週末は実家に帰ったり、本格的に一人暮らしを始めてからも厳しい状況でしたが、今こうして生きてるということは、たぶん何とかなってたんでしょう(笑)
【スーパーポジティブ&スーパーアクティブ】
成清さんは、プライベートでスキューバダイビングやスカイダイビングをするほどアクティブな人。
ある時、スキューバダイビングをしに沖縄に。ホテルに着いてテレビを付けたら柳川の自宅が浸水していたとのこと。筑後豪雨でした。帰宅すると屋根の瓦がはがれるなど、すごい状態になっていて、作業所の仲間からは「沖縄の海で潜ってたなんて、自分ばっかりいいね」と揶揄されたそう。
大の旅行好きですが、今はふところ具合と人手の面でなかなか行ける機会がないと言います。
アテンダントがミスしても責めることなく笑い飛ばしてくれたり、本気で心配してくれたりする成清さんは、スーパーポジティブで、周囲の人を包み込むような温かな雰囲気を作る名人です。
【これからのこと】
いつ亡くなるか分からないですが、65歳になると介護保険に切り替わって、柳川では今使っているサービスの時間が支給されなくなるかもしれません。
そうなれば、柳川に見切りをつけて、他の地域に行くこともあるだろうなと考えています。まあ、次の瞬間、上から飛行機が落ちてきて死ぬかもしれないから、運を天に任せて気楽に考えてます。
髙垣紀明さんインタビュー
~クライアント紹介~
どんなときも、笑っていようね
クライアント紹介2人目は長崎県在住のクライアント、髙垣紀明さん。42歳のときに指定難病17である多系統萎縮症を発症。高垣さんの現場では、ご本人さん、ご家族、土屋スタッフ共に笑顔が絶えません。苦しく辛い闘病生活の中で、髙垣さんが笑顔で前向きに生きる源についてお聞きしました。
【プロフィール】
- お名前:髙垣 紀明(たかがき としあき)
- 出身地:奈良県
- 病名:多系統萎縮症
- 座右の銘:「一期一会」
- 趣味:子どもの野球観戦・スポーツ観戦・映画鑑賞
【家族と共に】
小さい時から車が好きで整備に興味があり、中部日本自動車学校を卒業後、奈良県でトヨタのディーラーへ就職しました。
32歳の時に結婚し、その後、長男が誕生。妻の実家が長崎で、次男の誕生をきっかけに長崎に移りました。
現地で就職活動をしましたが、なかなか思うようにいかず、結局私だけ奈良に残りました。2週間に1回のペースで家族の元に戻り、長女が生まれた後も、長崎と奈良を行ったり来たりする生活が続きました。
【多系統萎縮症を発症して】
42歳頃から低血圧で突然倒れるようになり、そこからは入退院を繰り返して、2016年4月、47歳の時に多系統萎縮症と診断を受けました。
症状などから、ある程度の予測は付いていましたが、どこかで違う病気であって欲しいとの願いもありました。
診断では、現段階で決定的な治療法がなく、対処療法しか手だてがないこと、また発症からの平均寿命が10年程であることを告げられ、ショックでした。
整備から事務職中心に仕事内容を変えてもらい、しばらくは仕事を続けていましたが、2017年に家族のいる長崎に移る決意をしました。
【長崎にて】
2019年に何度目かの入院した時、喉頭分離術を勧められました。
けれど、「自分の声で子ども達に伝えたいことがある」という思いから、なかなか決心が付きませんでした。その一方で、「思いを伝える手段は、声だけではなく文字もある。なによりも生きたい」と思い、2020年4月に気管切開をしました。
嚥下機能が徐々に弱まったことから、その1か月後、胃ろうを造設し、今はベッド上で過ごしています。手足が少し動く状態なので、簡単な返答だとうなずいたり、手でOKサインを出して意思表示をしています。
伝えたいことや手紙などは、入力装置ハーティ・ラダーを使用しています。 土屋の重度訪問介護をほぼ利用していますが、週2日は夜の時間帯を家族団欒のために空けています。
土屋のアテンダントは、いつも明るく丁寧で、一緒にパソコンで野球観戦をしたり、冗談が飛び交う中で人口鼻が外れるくらい大笑いしながら快適に過ごしています。家族の一員のような存在ですね。
その他、訪問看護や医師の往診、訪問リハビリや訪問入浴も利用しています。
【生活に楽しみを】
以前は、小型船舶操縦士の資格を取り、琵琶湖などに行ってジェットスキーをしたり、家族で観光地へ出かけ温泉に入って美味しいものを食べたりして楽しんでいました。
現在の楽しみは、子どもの野球の試合をパソコンのLIVE中継などで観ること。子ども達の成長をみることが何よりの喜びです。
アクション映画も好きで、よく見ています。それと、節目節目に子ども達へ手紙で思いを伝えたり、お世話になったリハビリの先生や訪問看護師さんへもお便りを出しています。
今は目を閉じてしまうと自分の力で開けられなくなっているため入力に時間が掛かってしまいますが。
【忘れえぬ思い出】
子ども達の学校の行事にはできる限り参加するようにしていましたが、発症後は、子ども達の野球の試合も見に行けずにいました。
そんな中、長男の高校生活最後の夏、コロナ禍で甲子園大会が中止となって、長崎独自の代替大会が開催されました。 退院後間もない時期で、血圧低下や熱中症の心配などもあり、球場での観戦は無理だと思っていましたが、どうしても長男の高校最後の試合だけは観たいと願い、沢山の方々の力を借りてそれを実現できました。
準々決勝から決勝までの3日間、球場スタンド下の部屋を用意してもらい、自分の目で長男の雄姿を見れたことは、本当に嬉しかったです。結果は優勝。試合後、長男が私の首に優勝メダルを掛けてくれました。「自慢の息子や」と手紙で伝え、最高の喜びを味わえました。
【これから】
今年は、したかったことの一つとして挙げていた長女の卒業式への参加も果たせました。学校の先生方や支援の方々に協力してもらい、スーツを着て式に出ました。成長した姿を見る事ができて嬉しかったです。
今後は、山口県の角島に行ってきれいな景色を見たり、夫婦で沖縄に旅行したいですね。子ども達の野球観戦にもまた行きたい。
そして、少しでも長生きして、子ども達の成人式を祝いたいです。
<妻の想い>
主人はいつも子ども達の成長を気にかけ、子ども達の活躍を生きる力にしながら、どんなに苦しい状況でも自分のしたいことをしっかり掲げています。
周りの方々が、主人の生きる目標を上手く聞き出し、目標達成に向けて声掛けやリハビリを行ってくれるので、主人の頑張りにもつながっていると思います。
私が主人の立場だったら、こんなふうに目標を見つけたり、明るく笑顔で過ごすこともできなかったと思うので、本当にすごいと思います。
【どんなときも笑っていようね】
私たちの結婚式の日、お互いすごく緊張していたんですが、新郎新婦入場のときに、主人が「どんなときも、笑っていようね」と言ってくれたんです。
その言葉で緊張は吹き飛び、ふたりとも最高の笑顔で式を迎えることができました。
その言葉は、今も心に残っていて、どんなに苦しくて辛いことがあっても、どんなときでも笑いを大切に生活しています。
土屋からの各お知らせ
クライアントならびにクライアントご家族へのお願い
皆様には、日頃当社の介護サービスをご利用いただき誠にありがとうございます。株式会社土屋最高文化責任者の古本聡です。
さて今回は、皆様に介護サービスをめぐる重大な問題についてお伝えするとともに、その問題解決に向けてご協力いただきたく、本記事を書かせていただきました。
介護現場で介護職員から利用者に対する虐待やハラスメントについてはしばしばマスコミなどで大きく取り扱われています。当社ではそのようなことが起こらないように出来る限りの社員教育、研修、学習会を催し防止策に力を入れています。
その一方で、介護業界全般でそれとは逆向きのハラスメント事案への訴えが多く見受けられるようになりました。
つまりは、利用者から介護職員へのハラスメントです。特に利用者の自宅へ訪問して介護サービスを提供する居宅・訪問介護は、基本的には訪問介護員と利用者の1対1で介助が行われ、利用者一人ひとりと密接に関わることが多いため、きちんと利用者やそのご家族と信頼関係を築く必要があります。そうしないと利用者からのハラスメントに遭遇し易く、利用者との人間関係に悩みを持つ職員がいるのも事実です。
居宅・訪問介護は、入浴から排泄、食事など介助を行い、料理、洗濯、買い物に加え、重度訪問介護の場合は医療的ケア、見守りなどが主な仕事となります。
このように利用者の生活の一部に深入りせざるを得ないことがあります。その分利用者のことを理解した上で介護サービスができるのですが、お互いに距離感を間違えてしまい、依存を助長してしまったり、利用者やその家族から不満が出やすい状況となって、それがエスカレートしていくとハラスメントに発展してしまうようです。
一般的に、こうしたハラスメントの内容としては、身体的暴力、精神的暴力、セクハラが挙げられます。居宅介護で最も多くみられるのが悪口、暴言、人格否定、無視といった精神的ハラスメントです。どこの介護事業所も慢性的な人手不足に悩まされている上に、こうしたハラスメントをきっかけとして職員がやめてしまうのは、本当に大問題なのです。
100人の内95人が、介護と言えば高齢者介護をイメージする中で、障害者介護業界における人材不足はさらに深刻なのです。表現を変えれば、障害者介護を目指してやって来る人材は稀有な存在とも言えるのです。そして、ハラスメントをきっかけとしてそんな稀有な人材が辞める時は、業界内での転職ではなく、介護業界を永久に離れてしまうという点でも問題は非常に大きいのです。さらに、うつ病など心を病んでしまう人も少なくありません。
介護職員でつくる労働組合「日本介護クラフトユニオン」では、2018年4~5月に同組合員約7万8千人を対象にして調査を行いましたが、2411人が回答した中で、1780人(74%)が「ハラスメントを受けたことがある」と答え、そのうち94%が利用者に暴言などパワハラ、40%がセクハラに当たる行為を受けていたことが分かりました(数値は居宅・訪問介護全体のもの)。
厚労省も、このような状況を重く捉え、2019年に大規模な実態調査を行い、このような事案を「介護現場におけるハラスメント」と公式に定義しました。介護事業者毎の対策に加えて今後は国として、全国一律のハラスメント対策が取られることになっていくでしょう。また、介護現場ハラスメント防止・対策介護マニュアルのひな形が策定されていて、各介護事業所はそれらを備えることが求められるようになるでしょう。
訪問する利用者の家庭ごとに環境は異なるので、利用者それぞれの生活のこだわりを理に異論をはさむ余地はありません。しかし、利用者のことを完全に、100%理解することは難しく、訪問介護員としてどれだけ研修・訓練を積んでも、経験が多くあっても、また要望通りに対応しているつもりでも、利用者からしてみれば納得していないことも多く、結果として過剰な要求やクレームに発展することもあるようです。中には訪問介護員に対する心無い言葉や仕打ちを楽しんでいる利用者もいるようです。また、利用者の中には「他人が家に入り込んでくる」という意識が強い方も少なくないようで、相性が合わなかったり、コミュニケーションがうまく取れない場合などは、気に入らない訪問介護者に対して暴言を吐いたりきつくあたったり、嫌がらせたりで、人間関係がどんどんと悪化してしまう可能性もあるそうです。居宅・訪問介護は第三者の目が届きにくく、事業所側が訪問介護員の仕事の様子をリアルタイムで確認できません。
だからこそ、利用者と訪問介護員との信頼関係、ある程度の寛容さ、お互いを肯定する心、そして一定の品位が非常に重要となります。こういう介護業界の、一部ながらも決して好ましくない現状を見て、障害者自立支援に始まり、その後は、当事全くのボランティアだった介助者に生活保障を実現しようという障害当事者運動の歴史があったことが思い出され、深い哀しみを覚えます。また、国の力で問題の解決を図ろうという動きが有ることに非常なる危機感を抱かざるを得ません。
株式会社土屋土屋・ホームケア土屋では今後もアテンダントの研修、教育に最大限の力を惜しみなく注いで行く所存でいます。それは、クライアントとそのご家族との関係をさらに良く、深くしていく為です。クライアントの皆様には、上に述べた状況が実際にあることを深くご理解いただき、私達が言うところの「品位と寛容さのある」支援現場の構築にご協力いただきたくお願い申し上げます。
ここに書いたことは、とても哀しい話ではありますが、現実は現実です、介護の現場をアテンダントにとっては働きやすい場所とするために、またクライアントにとってはさらに安心して暮らせる場所としていくためにお互いに知恵を出し合いましょう。
顧客満足度調査(アンケート)にご協力のお願い
全国約40都道府県で24時間体制のサポート事業を行う株式会社土屋では、各地のクライアントの声をお聴きして更なる質的向上を目指すことが必要だという想いからアンケート調査を実施することになりました。
ご記入のご協力をお願いいたします。
こもちゃんTVが1周年を迎えました。
2021年11月19日、放送50回の記念日でもあるこの日、こもちゃんTVが1周年を迎えました。
こもちゃんこと、古本聡の紹介から始まり障害分野に限らず様々なゲストを招いて話題を提供してきました。
土屋のクライアントにも参加して貰いながら興味深いトーク番組にしていきたいとスタッフ一同決意を新たにしています。