私ってなんですか? / 牧之瀬雄亮

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私ってなんですか?
牧之瀬雄亮

私はよく、自分の思うとおりに生きていかなければならないと、抽象的な気焔を吐いておりますが、「自分で好きなように動くといろいろと齟齬が出てくるでしょ」、「不快に思う人がいることもあるでしょ」というお言葉をいただくこともあります。

普段の生活でも、「こうだ!」と言ったものの、あれこれの条件によって、掲げたことがなかなか達成できなかったり、自分が最初に描いていた結果と「違うな~」と感じられるものに行きついたりもします。

最初思ったものと違う結果・ものに行きついた。

しかしながらそれは、行動を起こした結果です。20点だったか、70点だったか。

もうちょっとこうやればよかったなと振り返ることも、どうにか成功にこじつけた安堵感も、行動を起こした者にしか味わうことはできません。

私たちの行動は、今まで生きてきて体験したことの集大成です。

些細なことだってそうです。

街を歩いていてごみが落ちていることに気付いて、それを拾うのか拾わないのか。

朝起きて、一番最初に手に取るものは何か。

今までの人生の全ての瞬間が同時に作用し、今この瞬間を作ります。

重度訪問に従事する方は、初めて喀痰吸引をするときの不安と緊張を覚えていると思います。

気管切開をする決断をした目の前のクライアントのカニューレの中に、他でもない自分が、カニューレを気管に入れていない自分が、「習ったとおりにやれば大丈夫だ」と自分に言い聞かせながら、あなたはクライアントの喀痰を取り除いたのです。

無論手慣れた看護師がやった方が十分取れたかもしれない。

けれどあなたがやった吸引だって、クライアントにとっては効果はゼロではなかったはずです。

失敗して怒られたりしたかもしれません。

だけどそれがあったから、どうですか?今最初のあの時よりも、喀痰吸引上手になったんじゃないですか?吸引をする順番も落ち着いてできるようになったんじゃないですか?

あなたは恐れの霧の中に一歩踏み出したのです。

逃げたくなることもあったし、実際逃げたこともあったと思います。

クライアントに断られたこともあった。

だけどいまこうやって誰かを支えているでしょう?そのエネルギーはどこから来るのですか?

あなたが行動したからあなたが見ている世界が変わったんです。

より大きな問題を見ることができるようになったのです。

10年前の自分に会ったとして、「お前、こうなってるよ」と言ったら、10年前のあなたは信じてくれますか?

あなたの気づき、失敗、反省、成長、そしてそれを見守る全てのもの、反発なり傍観なり信頼なりをしてくれる周囲の人々や、さらにそれを取り巻く社会。

あなたが歩き出すと、最初は目に見えない変化かもしれませんが、全て変わっていきます。

もちろん、いい方向に変えたいですよね。私はそうです。

私はどういう人間かと、誰かの分析を使えば、個人主義者、利己主義者、アナーキスト、ごくつぶし、そういう「私を評価する誰かの言葉」があると思います。

だからどうしたというのでしょう。

私は自分が機嫌がよい状態が好きです。

それを個人的に追い求めた時期は確かにありましたが、20代のある時、周りの人間を心の底から、それこそ魂からきらきらと笑わせたときに、私の個人的喜びを感じられると気付きました。

表題に戻りましょう「私って何ですか?」さてあなたは、何なのでしょうか

プロフィール
牧之瀬 雄亮(まきのせ ゆうすけ)

1981年、鹿児島生まれ

宇都宮大学八年満期中退 20+?歳まで生きた猫又と、風を呼ぶと言って不思議な声を上げていた祖母に薫陶を受け育つ 綺麗寂、幽玄、自然農、主客合一、活元という感覚に惹かれる。

思考漫歩家 福祉は人間の本来的行為であり、「しない」ことは矛盾であると考えている。

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