3歳児から学んだ アンガーマネジメント
川邉会美(ホームケア土屋 関西 常勤アテンダント)
「ongya~ angya~ ongya~ angya~(>_<)」
この「怒り」= anger の原因は何なのでしょう?
まただー、こうなるともう泣き止まない…
私に突進してきて、パンチにキック、抱き上げて宥めようとするが、私の顔を何度もビンタする。
男の子のpowerはすごい‼時々ドラマのワンシーンのような、監督から「ハイ!OK!!」と声がかかりそうな、綺麗な平手打ちが決まる。
そのシーンを目の前で目撃した先生は大笑い☆「コラー母ちゃん叩いたらあかんやろ~」と保育園のお迎え時間、朝早くから1日の終わりでお疲れのところ、声をかけて下さる。
私も、痛みを通り越し「ジーン」と伝わる感覚に腹が立つどころか、笑けてしまった。
「怒り」のコントロールといえば、あの当時、本当に子どもたちに鍛えられたものだ。たくさん勉強もした。
娘が5歳・息子が3歳の頃、私自身一番「怒り」やイライラのコントロールができず、困り果てた時期がありました。
朝から、2人分の保育園の支度をし、送り出し、仕事へ行き、お迎えへ行き、夕食の後片付け、掃除、洗濯、入浴、寝かしつけ、疲れがMAXな時に、子どもたちの喧嘩や、癇癪が起こりだすと、どうしても子どもたちに、きつく当たってしまうこともあり、そのあと台所で自分の感情がコントロールできず、「怒りたくないのに怒ってしまう…」自己嫌悪や罪悪感に苛まれ泣き崩れることもよくありました。。
「怒り」と聞いて、私が連想する感情イメージは、我慢・限界・忍耐・辛抱・忍耐力などがあり、また、「怒り」に対して連想される行動イメージは、叩く・蹴る・物を壊す・破る・噛みつく・引っ掻く・泣く・わめく・怒鳴る・叫ぶといったようなイメージがあります。
アンガーマネジメントとは、自己理解・他者理解・相互理解を深めることを目指す、認知行動療法の1つであり、日本においては、教育分野での子どもたちの問題行動の予防教育や児童や生徒理解や対応。
また、医療福祉分野においては、カウンセリングとして、一般企業においては、従事者に対してのパワーハラスメントの予防や人間関係向上において用いられます。
「怒り」について、というテーマの見出しに何故、「3歳児から学んだ アンガーマネジメント」とお題を設けたかというと、人間の発達段階に合わせた「怒り」の感情に対する問題解決方法を子どもの頃から身に付けることが、人間関係の構築にとって、とても大事なことで必要だと感じたからです。
「怒り」やイライラの行動をあらわし、母親にめいいっぱい当たり散らすことも、3歳という人間の発達段階で、正当な問題解決方法だったのだと再認識しました。
発達段階が上がるにしたがって、深呼吸をして怒りを鎮めたり、怒りの対象から気をそらせたり、自分の理想や価値観やこだわりを相手に求めるだけでなく、相手のことも知り、理解し、多様性を認め合うことで上手く関係を構築してゆくものだと思います。
大人になってから、上手く人間関係の構築ができるように、子どもが生活する園や施設や学校で、子どもと(養)教育者との関係構築や社会的自立を目的とした援助技術に「コモンセンスペアレンティング」という、アメリカのネブラスカ州の児童施設が開発した子供への援助技術があります。
アメリカ・ネブラスカ州の児童施設は、森と湖がある広大な敷地に80軒近いコテージがあり、1000人近い子供たちが支援員(米ではペアレントワーカー)と生活しているそうです。
子どもが保育園に通っていた時期に「コモンセンスペアレンティング」の、母親向け-半日の子育て支援講座があったので参加したことがあるのです。
この援助技術の大きな特徴の一つは、子どもの問題行動を予防すること(予防的教育法)になります。
大人が子どもに行ってほしいことを具体的に話して練習し、その行動が見られたら、具体的に誉めるといった行為を繰り返すことで、子ども自身が適切な社会スキルを身に付けるという技法です。
このコモンセンスペアレンティングの教育技術の中にもアンガーマネジメントが応用されています。
●しつけ(援助・指導)=親が子供に行う説明、教育トレーニングとして、具体的なコミュニケーション(具体的・描写的に示し、(養)教育者が言語化する)を繰り返すことにより、子どもが何が良くて、何が悪いかどう行動すれば良いかを理解する。
●良い行動を伸ばし、不適応行動を減らす方法(行動と教育の強化)
●予防的教育法(前もった言い聞かせ)をする。未来に起こりうる状況のために、前もって対処法を練習させることで、より効果的に対処できるようにする方法。
●問題行動を正す教育法(行動変容)
●自分をコントロールする教育法(アンガーマネジメント)
子どもや(養)教育者ともに、イライラや緊張が高まった場面で、(養)教育者・子どもと共に、代替行動として落ち着きを取り戻すことのできた行動を対処法とし、その行動を訓練し、イライラや怒りといった思考や衝動へと移行してしまう前に、その対処法を実行し、自己(セルフ)コントロールできるようになる。
このように、「怒り」やイライラといった感情から問題行動へとつながる、きっかけや、パターン、周期を発見できるよう自己分析し、対処方法を見つけて身に付けることの重要性を教育として、幼少期や学童期の援助技術として取り入れることが望ましいということ、子どもが日々暮らしていく生活環境やその地域で暮らす人々の地域活動の重要性というのも、まさに私が“3歳児から学んだアンガーマネジメント”として11年経った今も、メンタルを崩すことなくお仕事を続けられている訓練の成果だと実感できています。
幼少期・学童期の子育ては本当に大変でしたが、子どもたちには、とても感謝しております。
そして、現在様々な教育や援助技術、心理教育、認知行動療法や、リハビリなどが幅広く利用されている中、医療や介護も含め、一環として地域ケアシステムとし機能させていくことが、日本だけでなく社会保障制度を構築してきた国が社会課題として求められます。
今後、大きな社会問題となる超超高齢化社会に向けて、障害者総合支援法、様々なウィルスや病原菌による感染症対策、震災や水害による大規模な防災対策、それに伴い増加してゆく生活困窮者・ひとり親などの社会的弱者と呼ばれる方々の支援などがあります。
医療・介護・障害福祉サービスは、今後私たちが生きていくうえで必要不可欠なものであることに気づいて頂き、ソーシャルビジネスとして一緒に支援活動に参加し、たくさんの方々が支え合って暮らしていけることを心より願います。