助けを求める事の大切さ~他人だからできる、頼れることがある~
溝渕あゆみ
母の異変を感じたのは、父が亡くなって1ヶ月もしない頃でした。
1人では寂しいかと思い、私が実家に泊まり込み、そこから仕事に通っている頃でした。
夜勤の仕事もあったので自室で休んでいる時、母がいきなりドアを開け「何寝てるの!」と怒りながら入ってきたのです。
その10分程前に、少し休む事を伝えた際に「ゆっくり休んでね」と同じ母に言われたばかりだったので、あまりの突然の豹変ぶりにびっくりというか、何が起こったのか状況がわからなかったのを今でも覚えています。
いままで怒られるとか喧嘩をしたことも無かったので、とても衝撃でもありました。
そんな日がだんだん増えてきて、おかしいと思った矢先、今度は急に、母は自分の名前が書けなくなってしまったのです……。
これは只事ではないと思い、すぐに物忘れ外来を受診しました。色々な検査をしたところアルツハイマー型認知症の疑いがあると診断されました。
初期という事で進行を緩やかにすることができると言われ治療が始まりました。
そんな状況を私もなかなか受け入れることができない中で仕事もあり、毎日が本当に辛い日々でした。
行政や地域のサポートでのサービスを頼んでもヘルパー不足により直ぐには受けられないなど、自分が介護現場で働いているのにも関らず、実の家族を介護することが、この初期段階でも大変で難しいことなのだと思い知りました。
それでも周りに相談する事もあまりできずにいた時に、当時の職場の先輩が私の様子を気にかけていつも声を掛けてくださりました。
そして、ご自身が読んだ著書の中から「私はケアする対象を、私自身の延長のように身に感じ取る」という言葉を教えて下さりました。
これは介護職に携わる人への言葉であるとともに、私にとっては、「家族は自分が看なくてはならない」という、責任感や閉塞感を和らげてくれる言葉にもなりました。
いま、重度訪問に携わってみて、自身も助けられた様に、クライアントやご家族の気持ちや想いを少しでも汲み取り、話し易い環境になるように、CAREの意味にもある、関心事、他者を気にかけるということを意識し、今後の支援にも活かしていきたいと思っております。
◆プロフィール
溝渕あゆみ
病院ケアワーカーを勤めてから、異業種で10年働き、再び介護業界に戻り現在に至ります。
突如K-POPにハマり地味に推し活を楽しんでいます♪