『それぞれちがう働く喜び2』
わたしの
土橋:例えばミスを報告したら怒られるという経験があったら、もう報告するのが怖くなっちゃうよね?
剛:そう、だから「教えてくれてありがとう。これから気を付けようね」って言います。
土橋:そうすることで失敗しても伝えればいいんだっていう風に意識が変わっていくということですね。
さらに仕事上のことだけではなく、プライベートの悩みも打ち明けてみようかな…って思ったりするわけですね。
剛:そうそう!話しやすい環境ってやっぱり大事ですね。
土橋:ますます「仕事をサポートする」というのが一面的な理解でしかなかったなと反省してしまいます。
剛:もちろんお仕事のサポートも重要な役割ではありますけれどね。できるお仕事が増えるとか、自信が持てるということは「やりがい」や「達成感」につながるので、そこを支援するのが職員の仕事です。
土橋:仕事や仲間を通じて成長していくことを支えるということですね。
成長って見えにくいものでもあると思うんですけど、職員として感じることはありますか?
剛:繰り返しになってしまうんですけど、自分の思いを伝えるっていうことも一つの成長ですよね。一人で抱えて悩んでいる状態の人が、職員とのやりとりの中で自分で解決できるようになる。これも成長ですね。
あとは学生時代とは違う環境で、社会人としてのマナーやルールを身に付けるということも成長ですね。
いろんな成長があると思います。
土橋:話は変わりますが、コロナ禍でのみなさんの様子はいかがだったんですか?
剛:コロナ禍では自粛もあって在宅で過ごされる方もいました。なかなか登所のリズムが整わない方も中にはいました。感染予防で日常的な緊張感もある中で、仕事のペースが作れないということはたいへんな苦労だったと思います。
土橋:自分は仕事がなかったらきっと生活が乱れちゃうなって思うんです。過去にはそんな経験もありました。
剛:そうですね。作業所に通う中で居場所がみつかったり、仲間ができたりしていることが生活の安定にもつながっているのだと思っています。
土橋:さきほど見させてもらいましたがシールを約1,000枚貼っていく仕事や箱折り600個などの仕事は、すごい量や数ですが、ご利用者はどう感じているのでしょうか?負担もありますか?
剛:そこは職員も配慮していて、それぞれの力に応じたお仕事の配分になっています。自分の力よりちょっとハードルが上がっている方がやりがいを感じている人もいます。
すごいなって思うのは、同じ作業を一日続けたり、何日も続けられるのは強みだなってことです。みなさんの力はすごいです。
土橋:自分だったら飽きちゃったり、どんどん自己流になっていくかもしれないな。
剛:もちろんそういう人もいますよ。でもそれなりのルールを守って、心配なら職員が声をかけていきます。一日シールを貼ってるのは細かい作業なんだけど、それがやりがいだって言ってくれる人もいるんです。
土橋:そこでお仕事をして、時間がくれば淡々と帰っていくんですね。
剛:「お疲れ様ー!」って(笑)。
終礼というものがあって、そこで今日一日の仕事の成果をみんなで確認してほめたたえ合うということもしています。そこで喜びを感じ合う場もあります。
土橋:それはチームごとに行なっているんですか?
剛:チームごとです。
「今日は箱折り600個できました!すごいです!」
「明日も同じ作業です(笑)」ということもありますし、「まだまだ続きますよ!頑張りましょうね!」というと「おー!!」とみんな明るく返事してくれるんです。それがすごいなーと思います。
土橋:みんな一生懸命働いているんですね。働くことの美しさを感じますか?
剛:なんて言えばいいのかな…人それぞれですよね。自分にはお仕事があるんだ、やることがあるんだということが喜びなんじゃないかな。何もなければつまらないし、忙しいとそれは逆に挑戦にもなって、みんなさらに協力的です。
通常であれば200個を作るところを300個やらなければならないってときに「がんばろうね」って声をかけると「がんばる!」ってやる気を出してくれるんです。それがいいんだと思う。
土橋:お願いされるのもいいのかな。
剛:お願いされる?
土橋:要するに「今日、300作らないと困っちゃうからみんな頼む!協力して!お願い!」に対してがんばるぞっていう人もいるのかな。
剛:それはね、嬉しい人もいると思う。頼りにされているということは嬉しいですよ。
土橋:こういうのはどうだろう?朝出勤してボタン押すとその日の作業が出てきて、それを一人黙々とこなして無人の窓口に収めて帰っていく、それの繰り返し。そんな職場だったらどうだろうか?
剛:それはそれでいい人もいるんだと思います。ただつまらない人の方が多いかもしれません。やはり職員とのかかわりが大事な人もいるから、それがやりがいの人もいるよね。
土橋:人に褒められる喜び、人に頼まれる喜びがありますよね。
剛:それは大切です。また人によって喜びのポイントがちがうんです。そこも人それぞれです。だから職員もその人に合わせて声掛けしたり、お願いしたりしています。
土橋:自分の中で決めた数を達成することが喜びの人もいるし、職員にお願いされたことをやることが喜びの人もいるし、仲間と一緒にやることを喜びにしている人もいるし、中には工賃をもらうことが喜びの人もいるし、その工賃で何を買うかを楽しみにしている人もいる、と。
剛:本当にたくさんの喜びがあります。
土橋:職員は利用者がどこに喜びを感じているのかということも丁寧にキャッチしながら、仕事を提供しているということですか?
剛:そうです。やわらかい部分をいうとそうですね。
土橋:人それぞれ違う働くことの喜びポイントのお話を聞いてきました。次回は他の側面からのお話も聞いていきたいと思います。
―つづく
プロフィール
わたしの
1979年、山梨県生まれ。
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