現在は過去の体験から~あの人いまも元気かな~
三浦耕太
私が介護職に従事し始めたのは、約20年前になります。
保育士を目指し、資格取得まではしましたが、当時は男性保育士の需要は少なく、就職活動に身が入っていないまま過ごしていました。そんな時に「障害者施設で勤めてみないか」と話をくれたのは、専門学科ではなかった講師からでした。
介護職にまるで興味がなかった当時の自分は断るつもりでした。
その時、施設のパンフレットを渡され、考えが180℃変わりました。単純に施設のこと、入所者を知りたいという衝動にかられ、面接を受けることに。
集団面接実施時(5人同時)に、ある質問がありました。「リンゴの皮むきはできますか」という質問に「できません」と答えたのは私ひとりでした。面接終了後、帰宅するまで「面接落ちただろうな」という気持ちだったことを今も忘れません。自宅へ戻り、必死にリンゴの皮むきをしたことも。後日、内定の連絡があり、正直者は…という言葉を思い浮かべましたが結果、良かったです。
そこからは知識もなくスキルもないことから必死でした。しかし日に日に関係構築につながる日々の関わりもでき、楽しい時間もたくさん過ごせました。入社して1年半が経過した頃、施設長に呼び出され、相談室に。
「○○利用者の担当をしてみないか。あなた、保育士資格あるわよね」と、自閉症(自傷行為あり)の方のケース担当の話をいただき、部署異動して担当へ。
いざ彼と接すると、困るくらいに相手にされず、周囲も腫れ物を扱う対応で八方塞がり状態になっていました。
実年齢に反し、精神年齢は5歳くらいであったため、視点を合わせ、試行錯誤しながら関わりを持つことにし、少しずつ「三浦って面白い人」という印象を持ってもらえました。
そういった関わりを繰り返していくうちに関係構築ができ、私の伝えることに耳を傾けてくれるようになって、自傷行為を繰り返す日々が穏やかな日々に変化していきました。
2年間担当として関わりを持ち、自傷行為は一度もなく身体の傷も減り、何よりご本人が穏やかな生活を送れることが嬉しく、今もずっと記憶に残り続けています。
私はその後退職し、遠く離れた地域で生活することとなりましたが、程なくして「自傷行為が行われている」という話を聞き、迷いが出ました。
「彼のそばへ戻るべきか、戻りたいのか…」
私は家族ではなく、一生関わりを持つことができる訳ではない、環境の変化に順応していくことも本人のためと気持ちを抑え、迷った気持ちはただの自己満足だと考えました。
あの時、施設職員が一丸となり、関わりを徹底したことで安心な環境を作れたこと。
本人のために新たな環境構築が必要であり、私が戻ったとて、一時的な回避にしか過ぎないと何度も考え、自分に言い聞かせました。
現在まで福祉業界に従事してきた時間の中で、この時の出会いは大きな意味があり、また私の大きな経験値ともなりました。
これからも過去の経験(出会い)を大切に、どんなことにも意味があると、研鑽しながら人生を進めていきたいと思います。
◆プロフィール
三浦耕太 ホームケア土屋
保有資格:介護福祉士・保育士・幼稚園教諭2種・社会福祉主事任用資格等
20歳より介護業界→現在にいたる。
介護業界一筋による思考を大切に、客観性を失わぬよう日々、従事しております。
車やバイクが好き。趣味はスニーカー収集、ペット(犬)との時間、映画鑑賞