サービス業には「3つのマーケティング」がある~人材の確保と定着について思うこと~
田中雅啓
私は、採用活動の一環として、月に一回程度、初任者研修や実務者研修の講座を開いている資格の学校に訪問しています。
主な目的は、求職者支援制度を活用して、これから介護の業界で働こうとする受講生に対して、「土屋の企業説明会を行うこと」です。
求職者に直接、しかもタダで土屋をPRできることが当方側のメリットである一方、介護業界のことをまだよく知らない受講生に対して、仕事の内容や企業の生の声を聴かせることができるという、学校側にもメリットがあります。毎回10名ほど、延べ170名ほどの方々に説明してきた計算になります。
ただ残念ながら、受講生の反応は総じて薄いものです。
高齢者向けの施設で働くことを希望される方が圧倒的に多く、訪問介護にはあまり関心がない様子です。そんな中、先日、12名に対して説明会を行った後、2名の方が「土屋に興味があるので詳しく話を聴きたい」と、事業所を訪ねてくださいました。
重度訪問介護というと、介護未経験者には、「難しそう」とか「怖い」とかいうイメージを抱かれる方々が多いですが、このお2人は「障害のある方のお世話がしたい」、「じっくり向き合いながらの介護が自分には合っていると思う」とお話しされていました。
結果的に、正式な応募には至りませんでしたが、ここまで関心を持って頂けたのは初めてのことだったので、とても嬉しく思いました。
たとえ少数であっても、介護未経験でも重度訪問介護に挑戦したいという方は「いる」ということを認識できましたし、また、そのような方が入職された際には、その期待にしっかり応えられるよう、大切に育成していくことが大事だと感じました。
一般的にサービス業のマーケティングは、
①エクスターナルマーケティング(企業から顧客に対して行うマーケティング)
②インターナルマーケティング(企業から接客スタッフに対して行うマーケティング)
③インタラクティブマーケティング(顧客と接客スタッフの良好な相互作用)
の三角関係から成るとされています。
この3つの関係バランスが大切で、一見すると①を重視してしまいがちですが、従業員に長く勤めてもらうためには、②が非常に重要になってきます。提供するサービスの品質管理が十分でなければ、高い顧客満足を得ることができず、①も意味がなくなってしまいますし、③の良好な相互作用も生まれません。
接客スタッフ(当社で言えばアテンダント)が自信とやりがいをもって、顧客(クライアント)と接していけるように、またそうしたスタッフが長く働いていけるような、働きやすい職場環境作りを考えていきたいと思います。
プロフィール
田中雅啓 ホームケア土屋札幌(顧客創造部)
田中雅啓(たなかまさひろ)
1969年、埼玉県生まれ
大学卒業後、就職をきっかけに北海道札幌市に渡る。主に銀行マンとして、転勤先の釧路や川崎、中国・上海を除くと、札幌での暮らしが生まれ育った川越より長くなりつつある。