「強度行動障害」にぴったりな支援、それは重度訪問介護です!!
池田憲治(ホームケア土屋 中国)
重度訪問介護に携わって3年半が経ちました。
これまでに難病の方や身体障害者の方、精神障害者の方など、多くの人たちと関わりをもってきました。その経験の中で、体感として最も誤解をもたれやすいのは、強度行動障害の方なのではないかと感じています。
「強度行動障害」とは、”障害”という名称がついていますが、もともとの障害のことではなく、「その人の状態のこと」を指します。
つまり、「強度行動障害という”診断名”は、ない」ということです。
多くの方が重度の知的障害と自閉スペクトラム症の診断を受けています。 自分の気持ちをうまく言語化できず、適切なコミュニケーションの手段が分からない。なので、何か訴えたいことがあると、やむにやまれず行動で自分の気持ちを表現してしまっているのです。
そして、やむにやまれずとった行動が、本人や周囲の人の生活に大きな影響を及ぼしてしまっています。どのような行動がみられるかというと、自傷行為・他害行為・物損・異食・多動などです。
強度行動障害の方は学習できない訳ではありません。
例えば、暑いので何か対策をとって欲しいと思っていても、言語化できないのでパニックになり暴れてしまう。これを絵カードなどで解決していく方法があります。つまり、その前段階でなぜ暴れているのかをキャッチする必要があるのです。強度行動障害の方は自分の想いを言語化できないので、なぜ暴れているのかを周囲の人が気付けること・気付こうとすることが、支援の最大のポイントになります。
また自閉スペクトラム症は、「親の育て方が悪い」といった誤解がまだあるかもしれません。
「自閉症になったんじゃない。自閉症に生まれてきただけ」という正しい認識をもってもらえたらと思います。
さらに自閉症という字面から、「自分の殻に閉じこもっている人」という誤解もあります。
確かに人とのコミュニケーションに課題がある場合が多いですが、適切な手段があれば、良好な人間関係を築くことは可能なのです。
実際、ホームケア土屋鳥取では、ある重度知的障害・自閉スペクトラム症で強度行動障害の方の生活をサポートしています。重度訪問介護を活用し、24時間365日の支援を受けながら一人暮らしをされているのです。
この事例は全国でもかなり珍しいのではないかと思います。
この支援が実現できたのも、国立重度知的障害者総合施設である「のぞみの園」と、行政の協力があってこそ。そしてこのケースは、のぞみの園から初めて在宅復帰されたケースとなりました。
強度行動障害の方は個別性も強いので、施設等でも職員がつきっきりというのはよく聞く話です。そういう意味では、重度訪問介護と相性はいいのかなと感じています。訪問介護は、そもそも1対1で支援が行われますので、クライアントの要望に即座に対応できるのが特徴です。現在も上記の方の支援は継続しており、手厚い支援の中でQOLが向上しているのではないかと感じています。
具体的には、歯磨き・うがいが行えるようになったり、自分の服を畳んだりできるようになっています。その他にもアテンダントが色々な工夫をし、少しずつではありますが成長しているクライアントの表情を見ると、こちらも楽しい気分になってくるのです。重度訪問介護においても、クライアントの成長に関われるのは、アテンダントにおいてもとても喜ばしいことだなと思います。
だからこそ、強度行動障害に対して正しい知識を身につけ、実際に関わっていただきたいな と思います。環境面や支援の構造化、そのクライアントにとってよりよい支援方法を確立できたなら、きっと支援を楽しんでいただけるのではないでしょうか。
鳥取県出身の糸賀一雄さんの言葉である「この子らに世の光を」のように、誰もが共に生きる社会の実現のために、一歩一歩進んでいけたらなと思います。