『ホームケア土屋スーパーバイザー星敬太郎×ホームケア土屋北海道・東北ブロックマネージャー・寺内勝』対談シリーズ 第3回 ~第2部~

目次

福祉とビジネスの狭間で ~マネージャーの判断と未来戦略~

対談参加者

星 敬太郎……土屋ケアサービスカンパニー副代表
寺内 勝……ホームケア土屋北海道・東北ブロックマネージャー(BM)
司会……宮本 武尊/取締役 兼 CCO最高文化責任者

第2部:福祉とビジネスの狭間で ~マネージャーの判断と未来戦略~

司会

第一部ではマネジメントの原点を紐解きましたが、第二部では、その実践と未来に迫ります。

「福祉の心」と「ビジネスの心」のバランスという現場のリアルな課題から、AIやテクノロジーの進化による業界の変化、そしてこれからのマネージャーに求められる視点について掘り下げていただきました。

「福祉の心」と「ビジネスの心」、最適なバランスとは

マネージャーは“あえてビジネス寄り”で考える

寺内

星さんから見て、マネージャーに求められる「福祉の心」と「ビジネスの心」のバランスは、どのくらいが理想だと思いますか?

そうですね。

「ビジネスの心」は、分かりやすく言えば「数字を求める意識」ですが、あえて言うなら、マネージャーは“半分以上”ビジネスの心を持つ意識が必要だと思っています。

というのも、上位のマネージャーはもともと福祉の思いが強い方が多いので、意識的にそこを抑えることで、結果的にバランスが取れると感じています。

寺内

なるほど。

そのために私自身は、あえてクライアントやご家族と直接関わりすぎないようにしています。

これは皆さんに勧めているわけではなく、あくまで自分のコントロール方法ですが、担当者会議などで直接「自宅に帰りたいです、サービスが必要なんです」といったお話を聞くと、「何としても応えたい」という思いが強くなりすぎてしまうんですね。

一方で、現場は限られた人員でシフトを回しています。

その中で、自分の感情だけで「なんとかしてほしい」とは言えない。
だからこそ、距離を取ることで冷静さを保つようにしています。

寺内

なるほど。それで、“半分以上”ビジネスの心を持つ意識が必要ということですね。それでバランスをとると。

逆に数字に偏りすぎると、現場に負担がかかり、結果的に質の低下や事故につながる可能性もありますよね。

例えば過剰なシフトを組んだり、無理な受け入れを続けて現場が疲弊したり、単価だけを意識して、夜勤の受け入れしかしない事業所が出てくることも起こり得ます。

やはりどちらかに振り切らないことが大事だと感じます。

そうですね。

マネージャーは数字をしっかり意識し、管理する必要がありますが、数字だけを追い求めてしまうと、「数字も大事だけれど、最優先ではない」という土屋の理念から外れてしまう。

その上で大切なのは、それをそのまま現場に伝えるのではなく、「数字につながる伝え方」をすることだと思います。

例えば離職率であれば、「数字を下げる」ではなく、「離職を防ぐために日々のコミュニケーションを丁寧に行う」といった働きかけをする。

数字を前面に出さず、結果として数字につなげるマネジメントが大切だと思います。

寺内

そうですね。そのバランスは常に意識していきたいと思います。

Point:
・マネージャーは「ビジネスの心」を意識的に持つ
・どちらにも振り切らないことが重要
・数字は“行動”に翻訳して伝える

福祉業界の未来 ―テクノロジーと人の共存―

AI・ロボットは“代替”ではなく“補完”

寺内

この業界は、これからどのように進化していくと思いますか?

大きなテーマですね。

前提として、介護業界は今後さらに人材不足が深刻化することは間違いありません。

その中で重要になるのが、AIや介護ロボットを「どう活用するか」だと思います。

寺内

そうですね。設備や機器は進化していて、ベッドが自動で動いて起き上りの補助をするなどありますが、排泄介助のような細やかな対応は、やはり人にしかできないと思います。

機械は身体的負担を軽減する補助であって、最終的には人の力が不可欠だと感じます。

同感です。
AIが仕事を奪うという話もありますが、介護に関してはその心配は少ないですね。

人手不足を補う手段として活用する視点が重要だと思います。

例えば、介護記録やデータ管理を自動化できれば、事務作業の負担も減りますよね。

寺内

確かに、介護業界の膨大な管理業務が効率化されれば、現場は利用者に向き合う時間を増やせて、より本来の支援に時間を使えるようになりますね。

「需要を減らす」という新しい視点

さらに言えば、「需要を減らす」、つまり介護が必要な人を減らすという視点も重要だと思います。

先ほどの、起き上がりを助けるベッドのように、福祉用具やテクノロジーの進化によって、自立できる範囲が広がれば、結果として介護の必要量そのものを減らすことができます。

需要をいかに減らして、供給不足、人材不足をいかに補うかは大事ですよね。

寺内

まさにそうですね。自分でできることが増えることは、本人の喜びにもつながりますよね。

本来、福祉は食事や排泄などの“生命維持”だけでなく、外出や旅行といった“人生を楽しむ”ところまで関われる仕事です。

そのためにも、テクノロジーの力でヘルパーさんの負担を減らし、余力を生み出すことには期待しています。

寺内

確かに、この仕事は支援時間の制約がある中でやりくりする必要がありますが、介助を必要としない時間が生まれれば新しいサービスも広がりそうですね。

加えて、医療の進化も大きな要素ですよね。

難病に対する治療法が確立されれば、需要を減らす方向にも向かえるでしょうし、支援のニーズそのものが変わる可能性もあります。

寺内

そうですね。

私の叔母も筋ジストロフィーでしたが、当時と比べると治療法も発展してきているとはいえ、まだまだ「進行を止めることすら難しい」ケースも多い。

医療の進歩には非常に期待しています。

選ばれる業界へ― 介護のブランディング戦略

「大変な仕事」から「選ばれる仕事」へ

一方で、マネジメントの領域は、まだ人にしかできない部分が大きいとも言われていますね。

寺内

そうですね。
やはり人力が必要な業界ですね。

だからこそ、この業界にはこれからも人が必要ですし、若い世代に選ばれる業界になることが重要だと思います。

そのためにはブランディングが不可欠ですね。

現状では、資格を取っても別業界に進む人も多いので、介護は決して「大変な仕事」ではなく、「意義のある仕事」だということを伝えていく必要があります。

同感です。

介護は人生に深く関われる仕事であり、その魅力を業界全体としてもっと発信していくことが、人材確保にもつながると思います。

寺内

メディアの力も大きいと思います。

ドラマやドキュメンタリーなどを通じて、「利用者が生き生きとしている姿」「支援者が楽しく笑顔で働いている姿」がもっと発信されるといいですよね。

若い人たちが「こんな仕事なんだ」とイメージできる機会が増えるといいなと思います。

介護業界に、象徴となるような“ヒーロー”が現れたらいいですよね。

例えば、大谷翔平選手のように、「この人みたいになりたい」と思われる存在が出てくると、「この仕事をやってみたい」と感じる人も増えるのではないかと思いますね。

未来のマネージャーへ ―売上の本質を見誤るな―

最後に、ホームケア土屋の後世のマネージャーに、これだけは伝えておきたいということはありますか?

寺内

大それたことは言えませんが、私自身これまで、常に売上を意識する仕事をしてきました。

多くの仕事と同じように、この仕事も売上とは切り離せません。

ただ、「もうこれ以上はできない」「みんな頑張っている」と感じたときこそ、一度その感情を置いて、「本当にそうなのか」と自分に問いかけてみてほしいです。

私たちの売上は、アテンダントの皆さんがクライアントのために使っている“時間”です。

だからこそ難しく考えすぎず、アテンダントの方が所定の労働時間を無理なく、楽しく、継続的に働ける環境をつくること。

それがマネージャーの役割だと思っています。

また、売上=支援時間なので、理念にある「小さな声」を “ポイント”のように捉えるのもいいと思います。

「小さな声ポイント」を毎月貯めていく感覚であれば、売上への意識も少し和らぐのではないかと思います。

世の中の多くのことは、自分の力と周囲の力を組み合わせれば乗り越えられます。

だからこそ、喜怒哀楽という感情のバランスも大切にしながら、仕事に向き合っていただきたいと思います。

ありがとうございます。ちなみに寺内さん、おいくつになられました?

寺内

82歳です。
「ポツンと一軒家」に出てくるような元気なおじいちゃんを目指しています。

……59歳ですね(笑)。

「おいくつですか?」と尋ねただけで、何パターンも答えられるという、そのユーモアが、日々の職場の雰囲気づくりにもつながっていると感じます。

そうした空気感の中で働けること自体が、とても価値のあることだと思います。

本日はありがとうございました。これからもご活躍ください。

寺内

ありがとうございます。残りの人生、天竺を目指します(笑)。

司会

本日は、お二人のこれまでの経験から、マネジメントの本質や、福祉とビジネスのバランス、そして業界の未来に至るまで、幅広くお話を伺いました。

寺内さんのユーモアと人柄で、周りの空気も柔らかくなり、心理的安全性が高まることで、会議などでもより良い対話が生まれると思うので、今後、そうした“ムードメーカー”となる存在が、組織においてますます重要になっていくと感じました。

本日は貴重なお話をありがとうございました。

第3回 星敬太郎×寺内勝 対談シリーズ <第1部>

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