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夢を諦めさせない~大人が子どもの発信力に依存してよいのか~ / 齊藤恵美

夢を諦めさせない~大人が子どもの発信力に依存してよいのか~
齊藤恵美

「ヤングケアラー」とは、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子どものこと。

責任や負担の重さにより、学業や友人関係などに影響が出てしまうことがある。

福島県の調査(福島県内の小学校5年生~高校3年生までの約10万人が回答)によると、約6000人が「世話をしている家族がいる」と回答し、そのうち10%ほどに当たる約630人が自らヤングケアラーと認識していることが分かったとのことである。割合としては、小学校5・6年生で13人に1人、中学生では16人に1人、高校生では全日制で24人に1人、定時・通信制で9人1人が自らヤングケアラーと認識しているとされる。

約630人がヤングケアラーと認識 福島県が児童生徒に初の実態調査 相談体制拡充へ | 福島民報 (minpo.jp)

この数字を見る限りでは、クラスに1人は家族の世話をしている子どもがいるということになるが同世代の子を持つ親として、普段の子どもたちの生活の中でそれを感じた事は正直、一度もない。

昨年、高校1年生になった息子が「学校でヤングケラーについての勉強をしてきた」と話をしてくれた。内容を聞いてみると「家族の世話をしていて学校に通えない、部活が出来ないという子が増えている。何かあれば相談しましょう」簡単に言えばこのような内容だった。

この授業を受けてきた息子の感想は「相談しましょうって、どうしていいかわかんないから相談できないし、僕はお母さんがそういう仕事してるからどこに相談すればいいかわかるけど、わかってても行けない(どう話していいかわからない)」

息子の話を聞いて、ここに問題があるのだろうと感じた。

大人が「声をあげて」と呼びかけても相談窓口が例えば行政しかないとなれば、子どもが自ら足を運ぶことがあるのか?

「学校の先生に相談して!」と発信しても、先生にこれを相談できる子どもがどの程度いるのか?

ここでいう”世話”というのは、親や祖父母だけだろうか?

他になにか別の問題があるのではないか?

今回、私が見た記事(引用元:同上)の中では、世話をする相手として、弟・妹が約60%と最も多く、次いで母が19%、祖母が約15%、父が約10%と続いている。

学校に行きながらほぼ毎日、2時間以上の家族の世話をしていれば勉強どころか、部活も出来ない子どもたちも多いことだろう。

弟・妹が一番多いという結果を見る限り、このヤングケラーの抱える悩み、環境の根深さを感じた。

「助けを求めることは恥ずかしいことではない。」

という言葉を、介護問題の話になるとよく聞く言葉だが、大人が介護をしていても「家族の問題を外に出すのはみっともない」等の理由で抱え込み、事件になってしまうことも少なくない中で、子どもたちが自らどこかに発信することができるだろうか?

ましてや、そこにもっと大きな問題を抱えているかもしれない状況の中で、自ら声をあげることができる子どもがいるだろうか?

ヤングケアラーを考える中で「家族の世話をしている子どもがいる」という認識だけではなく、ひとり親が抱える問題や貧困、不登校や虐待など取り巻く可能性のある問題を「子どもが発信しやすい方法を大人たちが考えていく必要がある」と強く感じた。

「ここに行けば相談できる」「ここに連絡すれば相談できる」

そういう発信も大切だが、自分の身近に、「何か問題を抱えている子どもがいる」という認識を大人たちが再認識すること、何か変だと感じた時、トラブルを考えて動かない大人も多いと思う。

大きなお世話と言われても、気づいてあげることがヤングケアラーとされる子どもたちの未来を作ることになるのではないかと思う。

「全ての子どもたちが夢を叶えられる世界」を作るため、今、自分に何ができるのかをもう一度考えていきたい。

プロフィール
齊藤恵美 ホームケア土屋 東北

平成23年11月 介護職員基礎研修課程修了後
認知対応型グループホーム勤務。

その後、訪問介護・サービス付き高齢者住宅・デイサービス・就労支援A型で勤務。
自身の育児経験から今後、発達障害児支援をしていきたいと思うようになる。

まず、障がい福祉を知ることから始めようと考え、株式会社土屋に入社。

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