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『人材育成』育てる者が育てられる / わたしの

『人材育成』育てる者が育てられる
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土橋:引き続き、知的障害者支援の先輩であります笹山さんにお話を伺っています。よろしくお願いします。

笹山:よろしくお願いします。

土橋:主任の立場ですと、人材育成なんていうのも求められますか?

笹山:そうですね。一応は意識しています。

この話題になると少し愚痴っぽくなるかもしれません。悩み相談になっちゃうかもしれませんが、聞いてくれますか?

土橋:焼き鳥でもつまみながら話しますか(笑)。

笹山:最近は職場の仲間と居酒屋に行けませんからね。疑似居酒屋ということで(笑)。

昔は…自分が若い頃は…よかった。こんな入り方すると本当に自分が歳を取ったと感じますよ。

昔は…新人職員は大きくズレていたけど心があったような気がします。

支援の仕方は分かっていなくて、自己流にやってる乱暴者なんかもいましたけれど、対話ができました。

心で動いていました。非常に雑味がありましたし、人間臭かった。

しかし、最近の職員はズレてはいないけれど、心があるのかどうか分からないくらい人が見えない。

支援の仕方ばかり気にして、間違っていないかを必死で探ろうとしている。

そんな感じがするんです。雑味がない。正解を出さなきゃって思っているし、外れることを極度に恐れている。

すぐに答えを知りたがる。はっきりさせたがるんです。

土橋:それはどういうことなんでしょうか?そのような職員が増えてきたということですか。

笹山:福祉現場だけに起こっている現象ではないとは思います。

私は時々学生を対象に研修する機会もあるのですが、全体的にそのような性質に傾いている気がしてなりません。

土橋:全体的にそのような傾向なのか、不勉強ゆえ私も情報が少なくてよく分かりませんが、笹山さんは実感として感じているんですよね。

笹山:そうですね。単純に自分が歳を取り、ギャップがあるというだけのことでしょうか?

先日、法人の創立記念パーティーがあって今年入った新人はその場で自己紹介をしたんです。

その自己紹介を聞いて思ったのは、みんな文言がきれい。雑味がない。あたりさわりがない。

その場に合った、適した、最良の文言を見つけて言いましたって感じだったんです。

AさんとBさんのセリフを入れ替えても差支えがないようでした。

土橋:気をてらえばいいってわけじゃないですしね。

笹山:そうなんです。

無理矢理個性的である必要はないと思うんですけど、あまりにもみんなが正解っぽいことを言おうと張りつめていたので苦しくなっちゃいました。

一人だけ面白い子がいました。

その子は朴訥に、自分が飼っている猫の話をしはじめて、洋服を着せようとすることは本当に猫のためになっているのか分からないけれど、試しに一着だけ買ってみたがまだ着させる勇気がないと会場に伝えました。

くだらないですが、そこで笑いが起きて、強烈なインパクトを与えました。

しかし、あとで聞いた話によるとその子は配属先では仕事ができないと有名だったそうです。

かなり上司からもきつい扱いを受けているようでした。

でも、利用者からは人気がありました。優しくて、心があるけれど、仕事はできない。分かりますか?

土橋:仕事ができないっていう表現はどういうことなんでしょうね。

そのニュアンスだとそこには、対利用者支援というのか、利用者と向き合っているときのことは含まれていないような感じがします。

つまり仕事というのは金の計算みたいな事務仕事だったり、電話対応だったり、締め切りが守れないとか、そういうことですかね?

笹山:もちろん、そのような仕事も利用者の支援に含まれる大事な要素なんだとは思いますよ。

でも一要素です。事務仕事などの方が見えやすいというか分かりやすいというか結果が目に見えて出ますよね。

一方で利用者支援は結果が分かりにくい。関係の外側にいる人たちにとっては最後まで分からないこともあると思います。

土橋:見えないですね。確かに。

笹山:そういう子が同僚や上司に厳しく注意されて、いじめられて辞めてっちゃうんです。

それで正解っぽいことを言おうとしている雑味のない子たちは上司に気に入られて、残ります。

残りますが、数年して目標を見失うと辞めちゃいます。

自分で考える、深めるということができませんから、悩んで悩んでブレイクスルーする前にドロップアウトします。

だから結局、人材不足ですね。

土橋:ということはやっぱり、それぞれにあった何かしらの方法を「こちらが」見つける必要があるということでしょうか?こっちのあり方が問われる、と。

笹山:結果的にはそうなります。過去と他者は変えられない。未来と自分は変えられる。それなんですよね。

育成する我々の問題なんだということですね。

あまりにも自分を棚に上げすぎていることは重々承知です。

土橋:分かります。自分もすぐに棚上げしますよ。

育てる側の責任だ、と追い詰める必要はありませんけど、こっちが変わる必要があると考えていた方が楽しいでしょうね。

伝え方とか育て方をどう工夫するか楽しみだぐらいに考えておいた方が。

笹山:人材不足を嘆いているだけでも駄目ですしね…。

土橋:笹山さんとのお話、まだまだ続きます。

ー次回へつづくー

プロフィール
わたしの╱watashino

1979年、山梨県生まれ。

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