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ポップコーンのカケラを撲滅せよ。 / 鶴﨑彩乃

ポップコーンのカケラを撲滅せよ。
鶴﨑彩乃

みなさんは、好きなお菓子はありますか?

私はたくさんある。

煎餅・ポテチ・チョコなどなど。どれも捨てがたい。

中でもポップコーンは定期的に食べたくなるのだが、頻度はさほど高くはない。

理由は、裏面のカロリー数字に慄くのもあるが、毎回「ばらまいてしまう」のだ。

どうも私の左手は、「つまむ」という動作が苦手らしい。いつも、私の足をコロコロ転がっていく。

毎度、「あ。」と思ったり、「なんや滑り台みたいや。」と眺めてみたりする。

もう転がり始めてしまうと、私の身体のポテンシャルではそのポップコーンを助けることはできない。

助けようとしたこともあるが、本丸の袋を落としてしまったため、もう2度としない。

しかし、食べ終わって下を見ると、「ばらまいた」という言葉がしっくりくる光景の出来上がりである。

アテンダントさんがきて、私を抱えるとポップコーンがパラパラと落ちるので、ニヤッとしながら手が空いたときに証拠隠滅してくれる。

ありがとうございます。お手数をおかけします。これが、つい先日の話である。

掃除機に吸い込まれていくポップコーンを見送りながらふと思ったことがある。

それは、「この家に来てキレイに暮らせてる気がする。」ということだ。

それを前の家のことも知っているアテンダントさんにポロッっと言ってみた。

すると、彼女は今気づいたのかと呆れた顔をし、「だって前の家はカビとか凄かったやん。」と言った。

話しながらもテキパキと手が動いているのが彼女らしい。

言われてみればそうだ。前の家は賃貸マンションだったため、今の家よりも機密性が高かったし、換気できる窓も少ない。

それが、カビの原因だったと今になって思う。

しかし、そういった部屋の間取りの差だけが清潔が保たれる全ての要因ではないと考えた。あくまでも一因であるというだけのことだ。

では他の要因を考えてみようと思う。

まず、思いついたのは、今の市営住宅に引っ越してから私自身の目で全ての部屋が見えるようになったこと。

前のマンションはバリアフリーではなかったので、自分自身で確認できる範囲がごく一部だった。

そうすると、そもそも汚れに気づかない。

そして、その汚れに慣れてしまえば、もっとひどくなってからしか対応しない。

すると、いつものサービス時間内では汚れが取りきれない。

汚れが少し残る、忘れるというこのループを繰り返していたのだと思う。

今の家になって、家の汚れがよく見えるようになった。

そのため、よくアテンダントさんとも相談できるようになった。

例えば、「今日は時間があるから、掃除機しちゃおう!」とか、「全部は取りきれないから次のアテンダントさんにコレをお願いしといて。」という風に。

それと、私はいいのか悪いのか汚れに触れることができないことが多い。

触れられないから汚れと認識できない場合もある。

そういった場合には、アテンダントさんに「教えてください。」と伝えるようにしている。

アテンダントさんにとっては、私の家は言ってしまえば「他人の家」。

汚れに対する価値観や尺度も人によって異なると思う。だからこそ、そういったところもコミュニケーションをとって「掃除」を発動するタイミングを決めておくと上手くいくと思う。

そして、その発動範囲を極めて限定的にする。

「和室の掃除機だけ」や「トイレの便器周りをキレイにしよう。」とかね。

人が住んでいれば、部屋はどうせ汚れる。どこまで行ったってイタチごっこなのだ。

だからこそ、ちょこちょこと掃除をすることの大切さに気づかされた。

自分自身やアテンダントさん達のためにもね。

私のひとり暮らしの優先順位においては、身体介護でのアテンダントさんとの波長合わせ・関係性構築・洗濯・食事・掃除の順番になってしまうことがあるので、気をつけていこうと思う。

あ、やべ。コーヒーこぼした。

アテンダントさんに掃除、お願いしよう。

プロフィール
鶴﨑 彩乃(つるさき あやの)

1991年7月28日生まれ

脳性麻痺のため、幼少期から電動車いすで生活しており、神戸学院大学総合リハビリテーション学部社会リハビリテーション学科を卒業しています。

社会福祉士・精神保健福祉士の資格を持っています。

大学を卒業してから現在まで、ひとり暮らしを継続中です。

趣味は、日本史(戦国~明治初期)・漫画・アニメ。結構なガチオタです。

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