『ホームケア土屋スーパーバイザー星敬太郎×ホームケア土屋ゼネラルマネージャー奥永孔太郎』対談シリーズ 第2回 ~第2部~

目次

課題解決と人と向き合う姿勢 ―星敬太郎が語る、マネジメントの本質―

対談参加者

星 敬太郎……土屋ケアサービスカンパニー副代表
奥永 孔太郎……ホームケア土屋ゼネラルマネージャー
司会……宮本 武尊/取締役 兼 CCO最高文化責任者

第2部:課題解決と人と向き合う姿勢 ―星敬太郎が語る、マネジメントの本質―

司会

第二部は、奥永さんから星さんへのご質問という形で進めてまいります。

それでは奥永さん、よろしくお願いいたします。

課題はどう捉え、どう解決するのか

奥永

星さんからいただいた大きなテーマとは少し異なり、かなり実務的な質問で恐縮ですが、日々さまざまな課題が起こる中で、

それらをどのように把握し、どのようなプロセスで解決していくのかについてお伺いしたいと思います。

星さんが普段、どのような考え方や具体的なやり方で課題に向き合っているのか、ぜひ教えてください。

ホームケアでは、課題は大小さまざまですが、週単位で何かしら起きているという印象があります。

その把握や解決は非常に難しく、正直なところ、私自身も「課題解決をマスターしている」とはまったく思っていません。

もし成功プロセスを完全に会得していたのであれば、GM時代にもっと組織を成長させられたはずだと感じるほどです。

ただ、課題解決能力はマネジメントにおいて欠かせない要素でもありますので、昔から自分なりに考え続けてきました。

その中で、あくまで自己流ではありますが、特に意識しているポイントが二つあります。

それが、「誠実に向き合うこと」と「事象を細分化すること」です。

星流・課題解決のポイント①

「誠実に向き合うこと」

課題の対象が「人」である場合、私はまず、誠実に向き合い、話を深く聞くことを何より大切にしています。

例:ホールケーキの分け方
「ホールのケーキを、2人が納得できるように分けるには、どうすればいいか?」

課題解決の場面でよく知られている問いですが、多くの方が答えるのは、「均等に分けること」だと思います。

この答えは間違いではありませんが、100点ではありません。

もう一歩踏み込んだ答えとしては、「1人目が『どちらでもいい』という前提でケーキを切り分け、2人目がその中から好きな方を選ぶ」という方法があります。

このやり方であれば、一定の公平性は保たれます。

しかし、私が最も大切だと確信しているのは、さらにその先にある「誠実に向き合うこと」です。
もしかすると、あまりお腹が空いておらず、半分も食べられない人がいるかもしれません。

あるいは、「イチゴを3つもらえれば、ケーキの部分は少なくてもいい」と考える人がいるかもしれません。

この問いの本質的なポイントは「均等であること」ではなく、「2人がともに“納得できる”こと」にあります。

「人は誰でもケーキが好きだろう」「均等に分けることが平等だ」という固定観念は、ときに判断を誤らせます。

だからこそ、課題解決においては、整理された答えを先に出すのではなく、相手が何に納得するのかを誠実に向き合って探すこと、話を深く聞くことが重要だと考えています。

この考え方は、特にクレーム対応を思い浮かべると分かりやすいと思います。

表に出ている不満だけを見るのではなく、その怒りの本当のポイントがどこにあるのかを探らなければ、解決には至りません。

星流・課題解決のポイント②

「事象を細分化すること」

もう一つ、私が大切にしているのが、「事象を細かく分けて考える」ことです。

GM時代、私はBMの皆さんに「物事を分けて考えてほしい」と繰り返し伝えていて、これを「分解脳」と表現していました。

例:クレーム対応の場合

クレーム対応においては、まず「怒りのポイントがどこにあるのか」を見極める必要があります。

そのためにも、相手の話を深く聞きながら、起きている事象を一つひとつ細分化していきます。

たとえば、「この部分は明日からこう改善しよう」「この点については上司から改めて謝罪しよう」というように、聞き得た情報を分けて整理し、それぞれに個別に対応していくことで、初めて全体の解決につながると考えています。

先ほどのケーキの例でも、この考え方は同じです。
「半分がいいですか?三分の一がいいですか?」といった大雑把な聞き方では、オーダーメイドの納得には届きません。

そうではなく、「イチゴは好きですか」「生クリームはどうですか」といったように要素を分け、一つずつ確認しながら対応していくことが、結果的に最も納得度の高い解決につながります。

この「事象を細分化して考える」という姿勢こそが、課題解決において非常に大切なポイントだと私は思っています

課題を表面的な解決にしないために

これまでの話を踏まえて、介護における課題解決を考えると、例えば「人員配置基準を満たさなくなった事業所」があるとします。

ホームケア土屋はスケールメリットがあるので、結果として人員を補充し、基準を満たすという形で「解決」できているケースも多いと思います。

しかし、そこに至るまでの要因は決して一つではありません。

その事業所内の従業員間の関係性が要因の一つかもしれません。

近隣に魅力的な同業他社があり、ヘルパーさんはそちらで勤めたいと思っているかもしれません。

その複数の要因を一つずつ丁寧に分け、それぞれに個別に対応していかなければ、「人員配置が満たされた」という表面的な解決で終わってしまいます。

誠実に向き合い、話を深く聞くことを怠ると、事象を細分化することもできず、結果として応急処置にとどまり、再発率が高くなってしまいます。

奥永

星さんがよくおっしゃる「分けて考える」という言葉ですね。

実は私自身、もともとそれが苦手で、課題の表面だけをすくって「解決したつもり」になってしまう性格だと感じています。

それゆえ本質的な原因や、再発防止のために何が一番重要なのか――、そうした点がこれまで見えていなかったと思いますし、

やはり「分けて考える」ということをもっと深く理解し、自身の考え方を変えていく必要があると改めて気づかされました。

また「誠実に向き合う」という点も、まさに星さんが日頃から実践されていることだと思います。

私自身は「誰も傷つかないように」と考えるあまり、本質がぶれてしまい、結果として課題解決に至らないことが自身の課題だと感じています。

星さんは「ダメなことはダメ」「明らかにすることは明らかにする」と、真正面から向き合っている。

その姿勢こそが、相手に最も向き合っている証なのだと感じます。

本当に勉強になりました。ありがとうございました。

私に優しさが欠けているのかもしれません。

奥永

いえ、そんなことはないと思います。
むしろ一番優しいと思います。

人と関わるときに大切にしていること

奥永

もう一つお聞きしたいのですが、人と関わるとき、星さんはどのようなことを意識されていますか。

皆さんに対して共通して意識しているのは、とてもシンプルですが、「相手の思いを想像すること」です。

例えば給与の支払いミスが起きた場合、共に働く土屋の従業員とはいえ、

顔も名前も初めて知る方であることも多く、相手の思いを想像しなければ、どうじてもドライな対応になりがちです。

しかし給与は、相手の生活に直結する重要な問題です。

だからこそ、私は場合によっては、その方の家族構成なども確認しながら、その人の立場や状況を想像するようにしています。

そうすることで、「誠実かつ迅速に対応しなければならない」という自分自身へのプレッシャーに自然とつながりますし、その感覚は忘れてはいけないと思っています。

立場上、マネージャーや管理者を選任することも多いので、人事異動、特に引っ越しを伴う異動の際も同じく、相手への想像を深めています。

家族構成や生活水準を把握・理解し、場合によっては打診そのものを取り下げることもあります。

仕事に直接関係しないプライベートの部分まで含めて相手を思い、想像することを常に意識しながら、人と関わるようにしています。

記憶に残るエピソード

奥永

今のお話を聞いて、私が九州から関西ブロックへ異動する際、星さんと二人で行ったミーティングを思い出しました。

星さんに「関西ブロックに入ってくれないか」と打診していただいた時に、星さんが初めて涙を見せられて、あの時の星さんの表情や言葉で、「この会社でずっと勤めていこう」と思ったんです。

あの時は奥永さんも、まさにお子さんが生まれた直後だった。

同時に「関西ブロックマネージャーは奥永さんしかいない」という状況があり、その中ですごく躊躇して、小黒副社長とも相談して、丁寧に進めたことではありました。

年間のほぼ半分を家から離れて仕事をしてもらうことになる。

その時の奥永さんの状況を想像すると、頼みづらくもあり、それでも打診を引き下げることができない状況もあり、

苦渋の決断でしたが、結果、奥永さんが打診を受けてくださり、おかげさまで今のホームケア土屋があると思っています。

司会

ありがとうございます。
星さんが当時のことを思い出されて、涙されるのを見て、私も感極まりました。

苦しい決断だったと思います。

星さんは厳しいことで有名ですが、改めて星さんのお人柄を知ることができましたし、本気で優しいからこそ厳しいのだと感じます。

それでは最後に今後の展望についてお聞かせください。

今後の展望 ~ホームケア土屋を通じて、何を成し遂げていくのか~

ホームケア土屋は、重度訪問介護事業として日本で最も多くのシェアを持つ事業体となりました。

そのトップリーダーとして、奥永GMは、ホームケアを通じて日本で何を成し遂げていきたいと考えていますか。

奥永

まず、私自身の大義、根底にある大きな目標は、性別や国籍、障害や病気の有無に関わらず、誰もが平等に「望む暮らし」ができる社会をつくることです。

この思いは、土屋に入社する以前から、漠然と抱いていました。

当時関わっていた強度行動障害のある方や医療的ケア児のご家族は、「障害があるから」「医療的ケアが必要だから」という理由で、

夜中に眠れなかったり、思うように働けなかったり、自治体の支給決定が出ないために隣町へ引っ越さざるを得なかったりと、厳しい選択を迫られていました。

そうした状況を間近で見てきた中で、皆さんが本来持っている「望む場所で暮らしたい」「仕事をしたい」「学校に通いたい」という思いは、決して諦めるべきものではないと強く感じてきました。

土屋に入社し、難病の方々とも関わるようになったことで、その思いはさらに強まり、「重度の障害があっても望む暮らしができるように」という思いから、

「障害があってもなくても、誰もが望む暮らしを送れるべき」という考えへと、私自身の中で広がっていきました。

今はそれを私自身の大きな志と捉えていますが、本来、「全員が望む暮らしを送れる社会」というのは、非常にスケールが大きく、簡単に叶えられるものではありません。

ただ、土屋で働き、広域で多くの方々と関わる中で、「この土屋であれば、その理想に少しでも近づけるのではないか」という実感を今、持っています。

この大義とホームケアのミッションを重ねたとき、やはり「1人でも多くのクライアントに支援を届けたい」という思いに行き着きます。

それこそが、ホームケアで成し遂げたいことであり、土屋のミッションそのものだと考えています。

~日本のどこにいても、支援が届く体制を~

1人でも多くのクライアントを支えるために、具体的にはどのような目標を掲げていますか。

奥永

日本のどこに住んでいても、「ホームケア土屋であれば支援に入れる」という体制をつくることです。

僻地や離島であっても、すべての市町村でクライアントに支援を提供できる――それが、今の私の思いであり、目指している姿です。

今のお話は、まさに土屋の理念を体現するものだと感じました。ぜひ実現していただきたいと思います。

また、奥永さんにも任期がある中で、その思いやパッションを、次の世代へしっかりとバトンとして渡し、つないでいってほしいと思います。

人口の少ない地域に事業所を展開することは、経営的には簡単ではありません。

しかし、これだけの規模がある土屋だからこそ、リソースを活用して実現できる可能性もあります。

医療的ケアが必要な方や強度行動障害のある方への支援も、他社では難しくても、これだけ多くの人材がいる土屋だからこそ、

その中から前を向いて実行する人が現れ、深掘りし、体制を整え、全国へ広げていくことができる。

ぜひ、土屋という組織を良い意味で活用しながら、GMとして奥永さんの思いを形にしてほしいと願っています。

奥永

ありがとうございます。

星さんとは、ほぼ毎日のようにコミュニケーションを取らせていただき、時には時間をかけて星さんの考えを聞き、私の思いを伝える機会も多くいただきました。

今回、改めてこうした場を設けていただいたことで、いつもとは違う視点や、より深く考えるきっかけを多くいただいたと感じています。

この学びをしっかりとかみしめて、業務に生かしていきたいと思います。

やはり星さんの視点は、業務を遂行する上だけでなく、「人としてどう生きるか」、「どう人と向き合うか」という根本の部分において、とても大切なものだと感じています。

その視点を私自身も理解し、身につけていけるよう努めていきたいです。

最後に

司会

ホームケア土屋は、高浜代表から小黒さんへ、そして星さん、奥永さんへとつながってきました。

その中で、「本当にその人を思う」という姿勢が、脈々と受け継がれていると感じます。

土屋のロゴにある「優しさを誇らしさに」という言葉が、まさに今日のお二人の姿そのものであり、「土屋らしさ」でもあると思いました。

本日の対談は、土屋のマネジメントが凝縮された、これからの指標になるお話だったと感じています。

ありがとうございました。

では最後に、星さんより締めの言葉をお願いいたします。

本日は貴重な機会をいただき、本当にありがとうございました。

奥永さんから質問をいただいたことで、私自身の考えや経験をお伝えする場面もありましたが、

これらは決して出し惜しみするものではなく、奥永さんに限らず、皆さんにお伝えしたいと思っています。

参考になる部分がありましたら、参考にしていただければありがたいです。

そしてまずは真似てみて、そこから自分なりにアレンジし、自分流をプラスしていただければと思います。

それこそが世代が変わっていく強さでもあると思うので、「星がいるから星の真似をして終わり」ではなく、

盗めるものは盗み、任期の中で“奥永流のホームケア”をつくっていくことが望ましい形だと感じています。

次回は、ホームケア土屋のBMとの対談を予定しています。

今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
本日は本当にありがとうございました。

第2回 星敬太郎×奥永孔太郎 対談シリーズ <第1部>

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次