
重度訪問介護の報酬の算定方法
厚生労働省は、それぞれのサービスで得られる報酬について詳細に基準を設けています。
今回は令和3年4月に新たに改定された重度訪問介護の報酬についてまとめていきます。
基本的に報酬については「通常業務を行い、時間ごとに得られる基本単位(基本報酬)」と「条件に応じて加算・減算される単位」の二つに分けられます。介入時間を基に計算して導き出した基本単位を基に、実施した介入内容の条件に応じて加算・減算などの計算を行い、最終的に算定された報酬を得ることができます。
重度訪問介護の基本報酬
重度訪問介護は基本的に長時間のサービス提供を行うことを目的としています。
そのため、居宅介護サービスと比較すると、サービス提供時間が1時間など短時間だった場合、重度訪問介護のほうが居宅介護サービスよりも単価が低くなります。
居宅介護では「介護」「家事」などそれぞれのサービスが明確に分かれています。それに対し、重度訪問介護は「介護」「家事」その他諸々のサービスを包括的に行うことを前提としているため、1日あたりの重度訪問介護に掛かる人件費や経費を勘案して設定されています。
基本的な報酬単価
所要時間区分 | 単位 |
1時間未満 | 185単位 |
1時間以上1時間30分未満 | 275単位 |
1時間30分以上2時間未満 | 367単位 |
2時間以上2時間30分未満 | 458単位 |
2時間30分以上3時間未満 | 550単位 |
3時間以上3時間30分未満 | 640単位 |
3時間30分以上4時間未満 | 732単位 |
4時間以上8時間未満 | 817単位+30分毎に85単位を加算 |
8時間以上12時間未満 | 1497単位+30分毎に85単位を加算 |
12時間以上16時間未満 | 2172単位+30分毎に80単位を加算 |
16時間以上20時間未満 | 2818単位+30分毎に86単位を加算 |
20時間以上24時間未満 | 3500単位+30分毎に80単位を加算 |
病院に入院中または介護施設等に入所中の人へ対応した場合
所要時間区分 | 単位 |
1時間未満 | 185単位 |
1時間以上1時間30分未満 | 275単位 |
1時間30分以上2時間未満 | 367単位 |
2時間以上2時間30分未満 | 458単位 |
2時間30分以上3時間未満 | 550単位 |
3時間以上3時間30分未満 | 640単位 |
3時間30分以上4時間未満 | 732単位 |
4時間以上8時間未満 | 817単位+30分毎に85単位を加算 |
8時間以上12時間未満 | 1497単位+30分毎に85単位を加算 |
12時間以上16時間未満 | 2172単位+30分毎に80単位を加算 |
16時間以上20時間未満 | 2818単位+30分毎に86単位を加算 |
20時間以上24時間未満 | 3500単位+30分毎に80単位を加算 |
障害区分が重度の利用者に介入する場合
ヘルパーの要件 | 利用者の要件 | 加算単位 |
重度訪問介護従業者養成研修の修了者等 | 重度障害者等包括支援の対象者である利用者(※) | 所定単位数の15/100(15%) |
重度訪問介護従業者養成研修の修了者等 | 障害支援区分6に該当する利用者 | 所定単位数の8.5/100(8.5 %) |
※重度障害者等包括支援対象者とは重度訪問介護の対象者の中で「両手足すべてに麻痺等がある」尚かつ「人工呼吸器での呼吸管理を必要としている、もしくは最重度の知的障害者」に該当するクライアントを指します。
2人の重度訪問介護従業者が介入した場合
クライアントや家族の同意を得たうえで、職員2人で重度訪問介護のサービスを提供した場合、以下のように加算を算定します。
利用者の要件 | ヘルパーの要件 | 加算単位 |
1.利用者の身体的理由により、1人の訪問介護員等による介護が困難な場合 2.暴力行為、著しい迷惑行為、器物破損行為等が認められる場合 3.その他利用者の状況等から判断して、1または2に準ずると認められる場合 | 通常 | 所定単位×2 |
1.利用者の身体的理由により、1人の訪問介護員等による介護が困難な場合 2.暴力行為、著しい迷惑行為、器物破損行為等が認められる場合 3.その他利用者の状況等から判断して、1または2に準ずると認められる場合 4.障害支援区分6の利用者の支援に1年以上従事すると見込まれる場合 5.当該利用者の支援に熟練した指定重度訪問介護事業所等の従業者の同行が必要であると認められる場合 | 新任+熟練従業者 | 所定単位× 1.7 |
夜間や早朝、深夜に介入する場合
18時から22時までの「夜間」、6時から8時までの「早朝」、22時から翌朝6時までの「深夜」の介入は下記のように計算します。
内容 | 単位 |
夜間もしくは早朝 | 基本単位+基本単位×25/100(25%) |
深夜 | 基本単位+基本単位×50/100(50%) |
日数延長した場合の減算
病院などに入院または入所中の障害者に提供した場合、利用開始日から90日以上になると減算対象になります。減算後の単位は『基本単位×80/100』で計算したものが報酬となります。
移動支援加算
利用者の移動支援においてサービスを提供した場合、時間に応じて以下の単位が加算されます。
所要時間区分 | 加算単位 |
1時間未満 | 100単位 |
1時間以上1時間30分未満 | 125単位 |
1時間30分以上2時間未満 | 150単位 |
2時間以上2時間30分未満 | 175単位 |
2時間30分以上3時間未満 | 200単位 |
3時間以上 | 250単位 |
※移動支援において運転(移送)に関しては訪問介護サービスに含まれていないため、加算報酬の対象にならない。ただし、運転手以外に同行したアテンダントが車中で介護ケアを行う場合は、走行中の時間でも介護報酬の算定を認められる。
要件を満たすことで算定される加算について
これまで紹介した報酬以外にも、指定された要件を満たすことで算定できる加算があります。
(*)印の加算については届け出が必要です。
加算 | 単位 | 算定内容 |
緊急時応対加算 ※地域生活支援拠点等の場合 | 100単位/日 月2回を限度 +50 単位 | 重度訪問介護計画に位置づけられていない重度訪問介護を利用者等の要請を受けて緊急に対応した場合を評価 |
喀痰吸引等支援体制加算 | 100単位/日 | 特定事業所加算(20%加算)の算定が困難な事業所に 対して、喀痰の吸引等が必要な者に対する支援体制を評価 ※「病院等に入院又は入所中の障害者に提供した場合」は算定不可 |
特定事業所加算(*) 特定事業所加算(Ⅰ) 特定事業所加算(Ⅱ) 特定事業所加算(Ⅲ) | 20 % 10 % 10 % | ①サービス提供体制の整備、②良質な人材の確保、 ③重度障害者への対応に積極的に取り組む事業所の サービスを評価 |
初回加算 | 200 単位 | |
利用者負担上限額管理加算 | 150単位 | |
行動障害支援連携加算 | 584 単位 | |
移動介護緊急時支援加算 | 240 単位 | |
福祉・介護職員処遇改善加算(*) 福祉・介護職員処遇改善加算(Ⅰ) 福祉・介護職員処遇改善加算(Ⅱ) 福祉・介護職員処遇改善加算(Ⅲ) | 20.0 % 14.6 % 8.1 % (Ⅲ)の90% (Ⅲ)の80% | |
福祉・介護職員等特定処遇改善加算(*) 福祉・介護職員等特定処遇改善加算(Ⅰ) 福祉・介護職員等特定処遇改善加算(Ⅱ) | 7.0 % 5.5 % | |
特別地域加算 | 15 % | |
身体拘束廃止未実施減算【新設】 | -5 単位 ※令和5年4月から適用 |
重度訪問介護の報酬や算定方法を把握して、加算について理解を深めよう
厚生労働省が定める重度訪問介護の報酬について把握しておくことで、より充実したサービスを提供できるのではないでしょうか。加算ごとに算定要件が定められているため、請求する際に書類などに不備がないか、要件を満たせているのかを十分に確認しましょう。